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新型コロナウイルス感染症の収束と景気回復に向けて「リベンジ消費」という言葉を耳にする機会が増えてきました。コロナ禍で打撃を受けた各業界が大きな期待を寄せ、消費浮揚を狙った商品やサービスが登場していますが、現状では急激な盛り上がりは見られません。
その原因は何なのか、リベンジ消費の波はいつやってくるのか、その波に備えてやるべきことは何なのかなど、今後の飲食店運営を軸に解説します。各業界が期待を寄せる「リベンジ消費」
リベンジ消費とは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で低迷していた消費がV字回復することを指します。
元々は感染状況が落ち着いた中国で高級ブランド店に大行列ができ、ブランド品が大量購入されたことから生まれた言葉です。ロックダウン中の行動制限によるストレスから解き放たれた反動で、リベンジ=仕返しをするかのごとく爆買いされる様子を表しています。
日本においても、コロナ禍で打撃を受けた飲食業界、旅行業界、エンターテイメント・レジャー業界など、各業界がリベンジ消費に注目。メディアでもリベンジ消費の話題が取り上げられる機会が増えています。
内閣府が毎月発表している「景気ウォッチャー調査」によると、現状判断DI(季節調整値)※ は2021年9月:42.1、10月:55.5、11月:56.3、12月:56.4と、景気回復に向かっていることが伺えます。
※現状判断DI(季節調整値)
DIは「diffusion index」の略で、景気の現状に関する街角の実感を反映した指標のこと。3か月前と比較して、景気の良し悪しを評価します。
2021年秋に新型コロナウイルス感染症の第5波が収束し、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の解除によって各都市の人流が回復。ようやく日本経済に明るい兆しが見え始めた一方で、現状では期待されていたほど大きなリベンジ消費の波は見られない状況です。期待外れの理由は?
生活様式・価値観の変化
まず1つに、コロナ禍をきっかけに消費者の生活様式や価値観が変化し、コロナ前と同じ消費行動が見込めなくなったことが挙げられます。例えば、大勢での飲み会が開かれなくなった、テレワークの普及によって仕事終わりにお酒を飲みに行く習慣がなくなったなど。
長引くコロナ禍によって変化してしまったライフスタイルや価値観は、コロナが収束したとしても完全に元に戻すのは厳しいかもしれません。
収入の減少と相次ぐ値上げ
コロナ禍による失業や減収、相次ぐ日用品・食品の値上げによる家計負担増が重なり、そもそもリベンジ消費にかける予算がないという人も少なくありません。
収入が減っているのに、支出は増えていくという危機的状況では、毎日生活していくだけで精一杯という方も。収入が減っていない場合でも、先行きが見えない不安から、今は消費よりも貯蓄を選ぶ人が増えていることも理由として考えられます。
リベンジ消費の波はいつ訪れるのか?
個人消費の回復の兆しはあるものの、新たな変異株の感染拡大によって、日本国内の感染者数は2022年1月初旬から再び増加傾向に。収束の目処がなかなか立たない状況ですが、リベンジ消費の大きな波はいつ訪れるのでしょうか。
ここからは、2008年に起こった「リーマンショック」の事例も交えながら、リベンジ消費が訪れる時期を考えていきます。
リーマンショックとは、アメリカ投資銀行「リーマンブラザーズ」が経営破綻し、それをきっかけに世界的な株価下落・金融危機が発生したことを指します。
世界中で連鎖的に金融機関の破綻が起こり、特にアメリカでは過剰債務を抱えた個人の消費意欲が一気に減退。その結果として社会全体が不景気に陥り、企業の業績低迷や失業者の急増を招きました。経済の低迷期間は約2年ほど。雇用や賃金、消費の完全回復までには約4〜5年を要したとされています。
今回のいわゆる「コロナショック」においては、健全な経済状態でパンデミック(感染症の大流行)が発生。感染拡大を防ぐために消費者の行動を制限したことで、消費の低迷が起こりました。
リーマンショックでは経済の底を打った後V字回復を遂げましたが、コロナショックの底は未だ予測できない状況です。
前述した期待外れの理由2点も考慮すると、Go Toキャンペーンの再開など政府主導による実効的な経済対策がなければ、リベンジ消費の大きな波は見込めないと予想されます。高級店の需要が急増⁉
しかし、個人の消費意欲や所得環境が一様に悪化しているわけではありません。コロナ禍で打撃を受けた業界や個人が多くある一方で、コロナ禍の影響を受けていない、もしくは所得が増えた層も当然存在します。
そうした層はコロナ禍で行動が制限される中でも消費行動を緩めていません。特別な日にはお金を惜しまず楽しみたいという「こだわり消費」需要の高まりも関係し、高級レストランや高級ホテル・旅館の需要が増加しています。
コロナ禍によって結婚記念日や入学・卒業のお祝いなど「ハレの日」を祝うことすら難しい事態を経験したことで、これまで以上に特別な日を大切に過ごそうという思いが顕著に。ハレの日にかける予算も増えているとされ、そうした傾向を汲み取って、ハレの日プランを強化する飲食店も増えてきています。
リベンジ消費の波に備えてやるべきことは?
人材の確保
飲食業界では元々慢性的な人材不足が叫ばれていますが、コロナ禍によってその状況は更に悪化しています。リベンジ消費の大波がやってくる時期に備えて、今のうちから求人をかけて体制を整えておく必要があります。
業態転換を考えるなら今のタイミングで
コロナ禍による消費者の生活様式・価値観の変化に合わせて、幅広いメニューを提供する居酒屋から専門店へシフトする飲食店が増加しています。
居酒屋チェーン店の「塚田農場」などを運営するエー・ピーホールディングス(APHD)では、客単価4,000円以上を想定した新業態の飲食店開発に注力。焼き鳥店、寿司店といった専門店の出店を進めています。
狙いは少人数客のニーズを取り込むこと。企業の歓送迎会や忘年会など大人数での宴会離れが進んでいることから、変化する消費者ニーズに応えるための業態転換は有効であるといえます。
また、焼肉が食べたいから焼肉専門店に、餃子が食べたいから餃子専門店に行くといった「目的来店」の傾向が強まっていることも関係しています。
居酒屋大手のワタミも専門店にシフトする動きを加速させており、今後も業態転換に出る飲食店は増えていきそうです。この業態転換は、コロナ収束後のインバウンド需要も見据えた施策にもつながります。
収入軸を増やしておく
コロナ禍で消費者のライフスタイル・価値観が変化してしまったことを考えると、今後飲食店経営(外食需要)だけで経営状態を安定させるのは厳しいかもしれません。テイクアウトやデリバリー、通販ビジネスを拡充するなど、収入軸を増やしておくことも検討しましょう。
新型コロナウイルス感染症がいつ収束するのか予測困難な状況が続きますが、従来のビシネスモデルのままリベンジ消費を期待して待つことは非常に危険です。
リベンジ消費を越えた先のニューノーマルな社会を見据え、新たな需要を取り込んでいく意識を持ち、常にアクションを起こしていく必要があります。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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