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東京での飲食店開業は、幅広い顧客層と高い集客力を持つ一方、競争が激しく、費用面でも高いハードルがあります。本記事では、開業のメリットやデメリット、必要な手続き、成功のためのポイントについて詳しく解説します。
目次
東京の飲食店の特徴や傾向
東京は世界有数のグルメ都市として知られ、国内外から多くの飲食店が集まる一大市場です。東京には、和食はもちろんのことフレンチやイタリアン、アジア各国の料理など、世界中のグルメが集まります。
厚生労働省の調査によると、東京の飲食店営業施設数は18.9万件にのぼります。これは、全国でトップの施設数です。そして、飲食店の倒産数も東京がトップです。人口が多いため、うまく顧客を呼び込めれば繁盛しますが、競合が多すぎて埋もれてしまう可能性があるのも東京ならではといえるでしょう。
また、東京は住宅地やビジネス街、観光地、それぞれのエリアごとに顧客層が大きく異なります。飲食店を出店する際は、どのエリアが自分のターゲットとする顧客層に合っているのかを見極めることが重要です。
例えば、勤務終わりのビジネスパーソンをターゲットとするならビジネス街やターミナル駅周辺、落ち着いた雰囲気のカフェを開きたいなら喧騒から離れた閑静な場所、流行りのスイーツやドリンクを売るなら繁華街や観光地など、出店場所が成功の鍵を握るでしょう。
さらに、東京はトレンドの変化も非常に速い傾向があります。新しい食文化やメニューがすぐに注目を集め、流行に敏感な消費者が集まるため、飲食店はその変化に迅速に対応する必要があります。
このように、東京での飲食店経営は多様性とスピード感が求められる一方で、うまく適応すれば成功のチャンスも大きい環境といえるでしょう。
参考 厚生労働省「飲食店営業施設数の推移」東京で飲食店を開業する5つのメリット
東京で飲食店を開業することには、地方での開業に比べ多くのメリットがあります。そのなかでも主要なメリットは以下の5つです。
✔集客力が高い
✔人材を確保しやすい
✔顧客層の幅が広い
✔物件を探しやすい
✔最新のトレンドに触れる機会が多い
それぞれ詳しく解説していきます。集客力が高い
東京は人口が非常に多く、世界的な観光地でもあるため、日本国内でも有数の集客力を持つ都市です。通勤や観光、ショッピングなどで人で賑わうエリアが数多く存在し、安定した集客が見込めます。
また、東京は過密が進んでいるため、私鉄や地下鉄の沿線にも多くの住民がいます。昼夜を問わず多くの人が行き交うため、集客に有利な環境が整っています。人材を確保しやすい
東京は全国から多くの人々が集まっているため、地方に比べて飲食店で働く人材が集まりやすい都市です。アルバイトを求める学生や、飲食業経験者が多く存在するため、比較的スムーズにスタッフを確保できる環境にあります。
飲食業経験者の中には、調理やサービスのプロフェッショナルも多く存在していることから、専門性の高い人材を確保しやすい点も魅力です。顧客層の幅が広い
東京は多様な文化や背景を持つ人々が集まる都市であり、顧客層の幅が広いことが特徴として挙げられます。地元住民だけでなく、外国人観光客、ビジネスパーソン、ファミリー、学生など、さまざまな層が飲食店を利用します。
そのため、ターゲットを限定したニッチな専門店でも、大きく成功する可能性があるでしょう。物件を探しやすい
東京には大きな建造物が多く、飲食店向けのテナント物件も豊富です。商業ビルやショッピングモール、駅ビル、オフィスビルの一角など、飲食店として利用できるスペースは多岐にわたります。
予算や立地に応じて、さまざまな選択肢から自分の戦略に合った物件を見つけることができます。最新のトレンドに触れる機会が多い
東京は日本の文化や食の中心地であり、常に最新のトレンドが生まれる場所です。流行に敏感な消費者が多く、新しいメニューやコンセプトが受け入れられやすい傾向にあります。
また、最新の流行を取り入れて“バズる”ことができると、またたく間に売上が向上するでしょう。
東京で飲食店を開業する4つのデメリット
東京で飲食店を開業するメリットが多くある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
✔競合店が多い
✔開業費が高い
✔人件費を含めた固定費が高い
✔流行に左右されやすい
一つずつ、順に解説していきます。競合店が多い
東京は飲食店が集中している都市であり、飲食店同士の競争が激しい環境です。繁華街や人気エリアには、すでに数多くの飲食店が軒を連ねています。
ジャンルごとの競合も多く、独自のコンセプトや高い品質、サービス力がなければ、埋もれてしまう可能性があります。競合店との差別化が、成功を左右する大きな要因となるでしょう。開業費が高い
東京での開業は、地方での開業に比べ初期費用が高額になる点が大きなデメリットとして挙げられます。特に地価の高い東京では物件の取得が一番のネックで、敷金や保証金、礼金が高く設定されている場合が多く、特に23区内では大きな負担となるでしょう。
また、店舗の内装工事や設備投資も人件費や資材等の関係で高くなる傾向にあります。したがって、東京で飲食店を開業する際は十分な開業資金が必要です。人件費を含め固定費が高い
東京では、人件費を含む固定費が高くなりがちです。アルバイトや正社員を雇用する際の給与水準が全国平均よりも高いため、他の地域よりも人件費が増加します。
物件の賃料も高額であることから、売上が安定しないと短期間で経営が厳しくなる可能性があります。このように、固定費の負担が経営を圧迫することが多いため、綿密な資金計画が必須となるでしょう。
流行に左右されやすい
東京の消費者はトレンドに敏感で、常に新しいものを求める傾向にあります。流行に乗れなかったり、トレンドが急速に変わった場合、客足が遠のくリスクが高まります。
トレンドに乗って新規開業したり、メニューをリニューアルしたりしても、新しい食文化が根付く前に飽きられてしまうと経営が立ち行かなくなる可能性もあります。安定した経営を続けるには、流行をうまく利用するか、流行に左右されない方針をとるか、戦略の選択も求められるでしょう。
東京でおすすめの飲食店の開業方法は?
東京で飲食店を開業するにはさまざまな方法がありますが、ここでは特におすすめの5つの開業方法を紹介します。それぞれのメリットや特徴を把握して、自分に合ったスタイルを選びましょう。
小規模な専門店
東京で小規模な専門店を開業するメリットは、ニッチ市場をターゲットにできる点です。東京にはあらゆるジャンルのグルメが集まるため、特定のジャンルやニッチの料理の特化は歓迎されやすく、他店との差別化が容易になります。
ターゲットを明確にすることで訴求すべきターゲット層が固まり、固定客も獲得しやすくなるでしょう。また、小規模であれば初期投資を抑えやすく、ランニングコストも低いため、初めて開業する場合に適しています。
フランチャイズ店
フランチャイズ店は、すでに確立されたブランドやビジネスモデルを利用できるため、開業後の成功率が比較的高いのが特徴です。飲食業が未経験の場合でも、経営ノウハウやサポートを受けられるため、廃業のリスクを抑えられます。
また、フランチャイズの認知度が高ければ、集客の心配も少なくなります。しかし、初期投資やロイヤリティがかかる点は注意が必要です。
キッチンカー(移動販売)
キッチンカーは比較的低コストで始められる上、場所を自由に移動できるため、集客のチャンスを広げられるのが魅力です。決まった場所での出店をはじめ、イベントやライブ会場など人が多く集まる場所で営業できるため、柔軟なビジネス展開が可能です。
固定店舗に比べてリスクが低いことから、若い起業家や新しいビジネスを試したい人にとって魅力的な開業方法といえるでしょう。
ゴーストキッチン(デリバリー専門店)
ゴーストキッチンはデリバリー専用の飲食店で、店内での食事を提供しない形式です。東京のようにデリバリー需要が高いエリアでは、効率的な開業方法といえます。
店舗の外観やインテリアにコストをかける必要がなく、厨房設備も最小限でよいため、初期費用や賃料を抑えることが可能です。また、デリバリーに特化しているため、コロナ禍のような事態になっても経営難になりにくいといったメリットがあります。
間借り営業
間借り営業は、既存の飲食店のアイドルタイム(休憩時間)や定休日に、その店舗を一時的に借りて営業する形式です。施設が揃った場所で営業するため初期投資を大幅に抑えることができ、まとまった額の開業資金が用意できない場合でも開業できます。店舗を持つ前のテストとして、間借り営業をする方もいます。
ただし、間借りのルールは店舗に応じてことなるため、オーナーとの契約や時間の調整が必要です。
東京で飲食店を開業する際に必要な申請や手続きは?
東京で飲食店を開業するには、複数の申請や手続きが必要です。これらの手続きを事前にしっかりと理解し、スムーズに進めることが、開業成功への第一歩となるでしょう。
関連記事 【2024年】飲食店開業時に使える助成金・補助金は?
関連記事 飲食店を始めるために必要な資格は2つ!必要な届出についても解説食品衛生責任者資格の取得
食品衛生責任者は、飲食店を運営する際に必須の資格です。各店舗には必ず食品衛生責任者を設置する必要があり、資格を持っていない場合は講習を受けると1日で取得できます。
東京都で資格を取得するには、会場で受講する「会場集合養成講習会」とオンラインで資格が取得できる「eラーニング型養成講習会」から選択でき、費用はどちらも12,000円(税込)です。
この資格の取得は食品を扱う全ての飲食店に義務付けられており、衛生管理や食品安全の観点からも重要とされています。
飲食店営業許可証の申請
飲食店営業を始めるには、保健所からの営業許可証を取得する必要があります。飲食店の営業許可は、店舗ごとに取得しなければならず、物件が決定し、内装工事が完了した時点で保健所に申請します。
申請には、図面や衛生管理に関する書類が必要となり、保健所の現地審査をクリアすることが条件です。申請から許可証の発行までに1週間以上かかるケースが多いため、計画的に進めていきましょう。防火対象物使用開始届書の申請
飲食店の営業を開始する7日前までに、防火対象物使用開始届書を消防署に提出する必要があります。これは、消防法に基づき、飲食店が使用する物件が適切な防火設備を備えているかどうかを確認するための手続きです。
申請書には店舗の構造や防火設備の詳細を記載し、消防署の審査を受けます。防火設備が不十分な場合、営業開始が遅れる可能性があるため、早めの確認と申請が求められます。
防火管理者の選任
飲食店では従業員や顧客の安全を確保するために、収容人数が30人以上の店舗(事業主や従業員を含む)に、防火管理者の選任が義務付けられています。
防火管理者は、店舗の防火計画の作成や避難訓練の実施、消火器の点検など、火災予防に関する責任を負う役割を担います。防火管理者の資格は「甲種」と「乙種」に分かれており、店舗の延床面積によって該当する資格が決まりますが、大規模な店舗でない限り「乙種」に該当するでしょう。
深夜酒類提供飲食店営業開始届書の申請
深夜0時から午前6時までの時間帯に酒類を提供する飲食店は、深夜酒類提供飲食店として営業開始届書を提出する必要があります。この申請は警察署へ届け出るもので、深夜営業を行う際に適切な条件を満たしているかの確認を受けます。
申請には、店舗の配置図や音量対策などの詳細を含めた資料が必要となり、審査に合格しなければ営業は許可されません。
東京で飲食店開業を成功させるための5つのポイントとは?
東京で飲食店を開業し成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、特に大切な5つのポイントを紹介します。これらを実践することで、競争の激しい東京でも長期的な経営が実現可能になるでしょう。
関連記事 飲食店の開業資金はいくら必要?相場や調達方法について解説300万円以上の自己資金を用意しておく
飲食店に留まらず、開業を考えている方なら、資金調達や資金計画についてしっかりとシミュレーションして、どれだけの費用が必要になるのか考えることが大切です。
特に、総じて賃料が高い東京で飲食店を開業するとなると、自己資金として300万円以上必要になると言われています。その内訳は、不動産契約金。保証金や仲介手数料、礼金や前家賃といったもので、これら全てを自己資金によって賄わないといけません。
よく、「飲食店開業を少額から行える」といった甘い誘い文句がありますが、実際にはローンなどで分割して不動産の契約金を支払っていくことが多いようです。それでは、開業後の経営がローンに逼迫されてしまい、あまり利益が出なくなってしまうでしょう。
しかし、300万円を一人で賄えないという方は、親族や友人から資金援助してもらっても構いません。逆に親族や友人から援助してもらえるということは、融資の際には有利に働くことが多いので安心してください。店舗投資も含めると全体で1,000万円以上かかる
ただ、自己資金によって不動産契約金を賄うというのは、最低限の話です。不動産契約金以外にも、店舗投資などにお金を割く必要がありますから、全体ではおよそ1,000万円以上かかるといわれています。
自己資金は多いに越したことはないのですから、開業をお考えの方は、今からでもコツコツと積み立てていくことが大切です。開業地は賃料・土地の属性に注目して選ぶ
次に解説したいのが、開業地の選び方。どんなに状況が悪くなっても、一度お店を作ってしまうと簡単に移転には踏み切れないため、開業地は慎重に選んで決めなければなりません。開業地を決めるポイントは家賃とその土地の属性です。
まず、家賃は売上が上下しようが、固定費として支払っていく必要があります。意外とそれが難しく、自分の計画する売上から、何割ぐらい減るのか常に念頭においておく必要があるでしょう。具体的に、一年間の売上をしっかりと計画して、家賃を長く払い続けることが経営上の負担とならないかどうかを意識して、開業地を吟味しましょう。
次に、人通りなどその土地について観察する必要があります。例えば、回転率を上げたいラーメン屋は、人通りの多い場所を選ぶことが多いです。しかし、ただ人通りが多いだけでなく、その人々が、お店のターゲットと同じ属性でなければ、お店に入ってはくれないでしょう。
そういう意味でも、土地勘がないところに出店するには多少の準備が必要です。その土地はオフィス街なのか、商業施設が立ち並ぶ地域なのかなど、周辺施設によってターゲットが定まってきます。
例えば、新橋や丸の内といったオフィス街なら、お昼休みにサラリーマンがやってくるので回転率を意識した店作りがいいでしょう。一方で、カフェをオフィス街に開業し、商談の打ち合わせ場所に利用してもらうという考え方もできます。
また、カフェはカフェでも郊外で開業すれば、お客さんはゆっくりしたい人が多いかもしれませんから、客単価を上げるように戦略を立てられます。つまり、どんなお客さんをターゲットにするかによって、土地の選び方もその後の戦略も違ってくるのです。
東京都内であれば、様々な土地の特性がみられるでしょう。23区内であれば、学生から、サラリーマンまで客層も様々です。また、競合他店も多いと考えられます。その土地に根付いている競合を参考に土地の属性を見極めるということも一つの手です。
関連記事 [物件]立地調査・物件選び-店舗のコンセプトに合った立地を選ぶには、まず調査から競合他店や人気店のあり方を参考にする
競合他店や人気店を参考にするのは、非常に有効な手段。東京には参考にすべき人気店・名店が数多くあります。
お客さんがたくさん入るお店には、必ずその理由があります。店内の雰囲気や従業員、またお客さんがそのお店でどのような過ごし方をしているのかを観察してみるとよいでしょう。また、メニューや肝心の料理の味を確認することも忘れないようにしましょう。
例えば、人気店には以下のような共通するポイントがあるようです。
✔料理を出すのに時間がかからない
✔看板メニューがある
料理を出すまでの時間は、気にする方も多いため意外と重要です。一般的には、着席するタイプの飲食店で20分、居酒屋のようなお酒を出すようなお店で30分が限界であるといわれています。
例えば、あるお店では、料理を出す時間を早めて、回転率も高めるために厨房のレイアウトに気を遣っているそうです。
厨房のレイアウトによっては、従業員の歩数が多くなってしまいます。歩数が多くなってしまうということは、それだけ時間がかかってしまうということ。そのため、歩数を減らすためにレイアウトを工夫すれば、お客さんにすばやく料理を提供できるという考えです。
また、人気店には決まって看板メニューなるものが存在します。これはメニュー全体の原価率を意識したものであるといえます。実は、飲食店のほとんどは、メニューが満遍なく売れるというわけではなく、全体のわずか4分の1しか売れていないということが多いのです。
そんな中で、すべてのメニューを均一の原価率に統一するとどうしてもムラが出てきますし、せっかく仕入れた食材も処分せざるを得ないといったことが増えます。人気店は看板メニューの原価率を高く設定して顧客に還元し、その他の原価率を下げることで、看板メニューで集客し、原価率の低いものも注文してもらおうという手法を取っています。
こうしたものはほんの一例です。実際に他のお店に足を運んで、参考になりそうなことを探してみましょう。まとめ
東京で飲食店を開業する際は、さまざまなメリットやデメリットをしっかりと理解し、適切な計画と戦略を立てることが重要です。多様な顧客層や高い集客力を持つ反面、競争が激しく、開業費用や固定費が高いため、慎重な資金計画が求められます。
また、トレンドに敏感な市場であるため、常に新しいアイデアやコンセプトを取り入れる姿勢が、事業を継続するポイントになる場合もあります。開業に向けた手続きや申請も忘れずに行い、法的な要件を満たした上で、独自の強みを生かしたビジネスモデルを構築しましょう。
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無料開業相談この記事の執筆
ライター・飲食店経営
大杉元則
調理師学校卒業後、大手老舗ホテルの西洋料理部門に勤務。フレンチレストランやベーカリー、給食会社を経て2010年、無農薬野菜にこだわったイタリアンを開業。現在は店舗のオーナーシェフを務めながら飲食関連を中心としたライターとして活動中。
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