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【小阪裕司コラム】第71回:ついでにお客さんを笑顔にする

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

お客さんが笑顔になる瞬間をどれだけ増やせるかが大事

 今回は、「ついでにお客さんを笑顔にする」実践。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の美容院からのご報告だ。
 少し季節はさかのぼるが、ある冬の日、予約していたお客さんが同店を訪れると、用意された自分の席に1匹の可愛い犬のぬいぐるみが置いてある。「なにコレ?」と思うと店主が「この子が温めてくれてるんですよ」。そのぬいぐるみは湯たんぽになっており、すでに椅子は温かい。「え〜そうなんだ〜カワイイ」と手に取ると、「温かいんで抱っこしといてあげてください」と店主。そのままお互い笑顔で施術に入っていった――というようなシーンがこの冬、同店には連日のようにあった。
 同店がこの実践を始めた経緯は、冬に椅子が冷たくなるのをどうにかしたいという思いからだった。同店の施術用の椅子は合皮で、冬は最初に座った瞬間が冷たい。クレームがあったわけではないが、改善をしたかった。
 そこで初めは、椅子の座面と背面を温める電気毛布のようなものを設置してみたが、温かくはなるものの、自店に雰囲気が合わない。そこでこれは早々に撤去し、あれこれ考えているうちに、「ただ温めるのも面白くないな」となり、「椅子を温めつつお客さんが笑顔になるやり方はないか」と考えるようになった。そうして思いついたのが、「湯たんぽのぬいぐるみ」だった。このぬいぐるみはおなかのところにカイロが入るようになっており、それをレンジで温め、予約のお客さんが来店する5分ほど前から椅子の上に置いておく。そしてお客さんが来るといつも通り席に案内し、冒頭のようなシーンとなるのである。
 その後は、このぬいぐるみを膝に乗せてカイロ代わりにしてもらうのだが、施術に入ればすぐにクロスをかけてしまうので、ぬいぐるみは見えなくなる。しかし店主は言う。「見えるのは最初の瞬間だけなのですが、この笑顔になる瞬間をどれだけ増やせるかが大事なのかなと思います」。

お客さんは満足を超えればお店のファンになる

 この報告書には、「椅子を温めるついでにお客さんを笑顔に出来ることはないかと考えてやってみた実践」というタイトルがついていた。もちろん、美容院としてきちんと施術をすれば、お客さんは満足する。しかし冷えている椅子を温めようと考え、さらに「ついでに笑顔にできるには」と考える。こういうお店が、満足を超えた評価を得て、ファンが増えていく店となるのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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