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昨今の度重なる値上げラッシュで経営が圧迫される中、メニューの値上げを検討するも、なかなか踏み切れない飲食店も多いのではないでしょうか。今回は、飲食店の稼ぎ頭であるドリンクメニューに焦点を当て、上手な値上げに欠かせない「付加価値の高め方」について具体例も交えて解説します。
目次
飲食店におけるドリンクメニューの重要性
本題に入る前に、まずは飲食店にとってのドリンクメニューの重要性について整理しておきましょう。経営者目線で考えると、以下のポイントが挙げられます。
売上アップにつながる
一人あたりが食べられる料理の量には限界があり、お客様が満腹になってしまうと料理で客単価を上げることは難しくなります。一方、ドリンクに関しては満腹後も追加オーダーを得られやすく、注文杯数を増やすことで売上アップにつながります。
利益向上につながる
業態やメニュー内容にもよりますが、飲食店で提供されるフードの平均原価率は約30%、ドリンクの平均原価率は約25%といわれています。主要なアルコールドリンクの大まかな原価率は以下の通りです。
・生ビール:原価率 30%程度
・日本酒:原価率 30~50%程度
・ワイン:原価率 30~50%程度
・チューハイ・サワー:原価率 20%程度
・ウーロンハイ:原価率 10~13%程度
ビールや日本酒、ワインは原価率が高いものの、チューハイやサワーの原価率は20%程度と低め。その中でも最も原価率が低いといわれるのは「ウーロンハイ」や「緑茶ハイ」などのお茶割りです。
ドリンクは基本的に長期保存が可能であることから廃棄リスクも低く、フードに比べて利益の向上に大きく貢献します。
関連記事 居酒屋の利益率は何%?計算方法や平均、利益率の高いメニューを解説!人件費がかからない
ドリンクはフードに比べて作るのが簡単で、大半が注ぐだけでOK。食材の仕込みや調理、盛り付けなど複数の工程が発生するフードメニューとは違ってオペレーションコストが少ないため、人件費を抑えることができます。また、新人スタッフの指導・研修もほとんど必要ありません。
ドリンクメニューの付加価値を高めるには?
さまざまな食品の値上げが続く中、利益を確保するためにドリンクメニューの値上げを検討される方も少なくないでしょう。しかし、従来のドリンクメニューを単に値上げするだけでは、客離れを招く可能性も。そこでおすすめしたいのが、ここでしか飲めない付加価値の高いドリンクメニューを新たに開発することです。
付加価値を高める手段として、一番わかりやすく、取り入れやすい方法は「素材」にこだわること。ビールや日本酒、ワインなどの産地や品質、製法にこだわることで仕入価格は上がるものの、その分提供価格を高く設定しやすく、結果的に利益を確保できます。
カクテルやチューハイなどは、以下のような工夫を取り入れてオリジナリティ溢れるドリンクを作ることで、付加価値がアップ。価格を高めに設定しても、お客様からの理解を得られやすく、客単価も上がり、他店との差別化につながるメリットもあります。「フルーツ」をふんだんに取り入れる
生のフルーツをふんだんに使った「生フルーツカクテル」「生フルーツビール」「生フルーツハイボール」など。フルーツが主役のお酒は、普段あまりお酒を飲まない層にも興味を引きやすく、多少価格が高くても飲んでみたいと思わせる魅力を持ちます。見た目もカラフルで華やかなことから、SNS映えを重視する若年層からも支持を得られやすいです。
「自家製」にチャレンジ
単なる「豆腐」よりも「自家製豆腐」といわれた方が魅力的に感じるように、人は自家製という言葉に惹かれやすいものです。梅酒などの果実酒やレモネードなどを手作りすることで、ここでしか飲めない味を提供可能。自家製シロップなら、カクテルなどのお酒にもノンアルコールドリンクにも幅広く使えて便利です。
ただし、自家製のお酒を提供することは、酒税法に違反する場合もあるため十分な注意が必要です。酒税法では、酒類に何かを加えることは「新たなお酒を作る行為」と見なされ、自己消費のための混和やカクテルのように消費の直前に混和する場合を除いて、酒類の製造免許が必要とされます。
飲食店に関しては特例措置が設けられており、以下の要件を満たせば、酒類の製造免許がなくても自家製のお酒を提供できます。
・アルコール度数が20%以上の蒸留酒を使うこと
・他の種類のお酒と混ぜないこと(蒸留酒と他のお酒を混ぜるのはNG)
・米や麦などの穀物、麹、でんぷん、ぶどう、アミノ酸などの食品添加物は使わないこと
・店内で作り店内だけで提供すること(テイクアウトやお土産として提供・販売するのはNG)
・年間の製造量が1,000リットルを超えないこと
・月ごとの数量を帳簿に記載すること
・事前に所轄の税務署に「特例適用混和の開始申告書」を提出すること
女性向けの「デザートカクテル」
生クリームたっぷりのティラミス風、ショートケーキ風のデザートカクテルは、女性だけでなくデザート代わりのシメの一杯としても喜ばれます。前述のフルーツと同様にSNS映えしやすいのもメリットです。アップルパイ風、チョコレートタルト風、スイートポテト風など、アイデア次第でどんどんバリエーションを増やしていけます。
関連記事 飲食店の値上げ成功の近道!料理に付加価値をつけるには?ノンアルコールドリンクでも差別化できる!
アルコールの消費量が世界的に減少傾向にある一方で、ノンアルコール市場は右肩上がりに成長中。アサヒビールの調査によると、日本の20代〜60代の人口約8,000万人のうち半数が日常的にお酒を飲まない(飲めない・あえて飲まない)層に該当するといいます。
そうした状況から、「お酒を飲まない層」に向けてノンアルコールドリンクメニューを充実させることは、自店の付加価値を高める意味でも、他店との差別化を図る意味でも有効です。モクテル
モクテルとは、イギリス・ロンドン発祥のノンアルコールカクテルのこと。「似せた」という意味の“mock”と“cocktail”を組み合わせた造語です。アルコールが苦手な方や健康志向の方を中心に、世界中で人気が高まっています。カクテルと同じような手法で作られ、さまざまな食材の味わいが複雑に混ざり合い、ソフトドリンクとはまた違う、味の深みを楽しめるのが魅力です。
高級な紅茶やシロップ、珍しいフルーツなど、自宅では味わえないような食材を取り入れることで、ノンアルコールであっても外食ならではの特別感を提供可能。そうすることで、ソフトドリンクより高めの価格設定でもお客様に満足していただけます。
関連記事 低アル・ノンアルが世界のトレンドに!なぜ人気なの?押さえておきたい関連ワードも解説
ソフトドリンクにも差をつけよう!
小さな子どもも飲めるソフトドリンクも、ちょっとした工夫で付加価値を高めながらの値上げが可能です。例えば、市販のオレンジジュースを「愛媛県産ストレート果汁100%みかんジュース」に品替えするだけでOK。ドリンクの付加価値も販売価格も上げられるうえに、産地を明記することで安心感を与えたり、飲んでみたいという興味も高められます。
トレンドや季節感も意識した、ここでしか飲めないドリンクメニュー開発を
飲食店の稼ぎ頭であり、売上・利益アップには欠かせないドリンクメニュー。お客様の満足度を高めながら上手に値上げを行うには、「このカクテルが飲みたくて来ました!」と言ってもらえるような付加価値の高いドリンクメニューの開発が欠かせません。今回ご紹介したアイデアも取り入れながら、自店だけのオリジナルドリンクを作ってみてはいかがでしょうか。
お客様の好みやトレンドは年々移り変わっていくため、メニュー開発時にはトレンドや季節感を取り入れることも忘れずに。ドリンクメニューを定期的に入れ替えてブラッシュアップしていくことで、お客様を飽きさせない魅力的な店づくりを目指しましょう。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
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