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昨今、一つの料理や食材に特化した個性的な専門店が次々に登場しています。これまでにも、タピオカやからあげなどさまざまな専門店が誕生し、大きなブームを巻き起こしてきましたが、そもそも飲食店を専門店化するメリットとは何なのでしょうか?
飲食店開業を検討する方に向けて、専門店が増加する背景や、これまでムーブメントになった専門店、今後注目の専門店などの具体例も交えて、詳しく紹介します。
目次
年々活発になる飲食店の専門店化
飲食店のジャンルといえば、イタリアンやフレンチ、中華、和食などさまざま。イタリアンは1980年代の「イタ飯ブーム」で人気に火がつき、ピザ専門店、パスタ専門店というように細かく専門店化が進みました。
中華でいえば、坦々麺専門店や飲茶専門店、中華粥専門店など。特定の料理に特化した専門店は、挙げればキリがないほど当たり前の存在となりつつあります。
さらに昨今では、テーマをさらに細分化し、専門性を一層極めた飲食店が増加傾向にあります。パクチー料理専門店、マグロ専門店、 カルーアミルク専門店など、特定の食材に特化した専門店も続々と登場。個性豊かな専門店が次々に開業し、飲食店の専門店化は年々活発になっています。
専門店が増加する背景
飲食店の店舗数増加に伴う競争激化
一番の理由として、飲食店の店舗数増加に伴う競争激化が挙げられます。数ある飲食店の中から自店を選んでもらうには、自店の売りや他にはない魅力を明確にする必要があります。その最も分かりやすい手段が専門店化であり、特定の料理や食材に特化して個性を打ち出すことで、他店との差別化を図るのです。
テイクアウト・デリバリー需要の拡大
コロナ禍をきっかけにテイクアウト・デリバリー需要が拡大したことも、専門店増加の理由の一つに挙げられます。
複数人で店内飲食する際、さまざまなメニューが揃うカフェやファミリーレストランはとても便利です。しかし、テイクアウトやデリバリーでは食べたいものが明確な場合が多く、店内飲食と比べて、この料理が食べたいからこの飲食店を選ぶという行動につながりやすい傾向にあります。
コロナ禍が終息しても、一度定着したテイクアウトやデリバリーの需要は衰えないと見込まれており、専門店の増加も継続すると予想されます。
これまでムーブメントになった専門店
飲食店の専門化のメリット・デメリットを解説する前に、まずは、これまで大きなブームを巻き起こした専門店をいくつかご紹介します。
タピオカ
タピオカが日本で初めてブームになったのは1990年代のこと。中華料理店で提供された、小粒の白いタピオカにココナッツミルクをかけたデザートが人気に。2008年頃からは、日本生まれのタピオカ&クレープ専門店「パールレディ」や、タピオカミルクティー発祥の店として有名な台湾カフェ「春水堂」の人気が高まったことで第2次タピオカブームが到来しました。
そして爆発的な大ブームとなったのが、2018年頃から始まった第3次タピオカブームです。都市部を中心にタピオカドリンク専門店が次々とオープン。SNS映えする点からも若者を虜にし、「タピる」「タピ活」といった流行語も生まれました。
その後ブームは下火となり、コロナ禍の影響も相まって多くの店舗が閉店に追い込まれましたが、台湾カフェの「春水堂」や「ゴンチャ(Gong cha)」などは、若者を中心に変わらず大きな支持を得ています。その理由としては、タピオカドリンク専門店ではなく、さまざまなお茶を楽しむ専門店へと進化し定着したことが大きいでしょう。からあげ
コロナ禍の外食控えや自炊疲れを背景に急増したのが、からあげ専門店です。日本唐揚協会が発表した2022年4月現在の店舗数は、全国で推定4,379店舗。1年で1,256店が開業し、2012年の450店舗と比べると約10倍の店舗数にまで膨らんでいるといいます。
時間が経ってもおいしく、持ち運びも容易なことから、テイクアウトやデリバリー業態でからあげを販売する飲食店が増加。フライヤーなど最低限の厨房機器を揃えれば開業でき、テイクアウトやデリバリー専門であれば小規模なスペースでもOKと、金銭的なハードルが低いことも店舗数を伸ばした要因です。焼き芋
古くから愛される「焼き芋」も、現在平成から続く第4次焼き芋ブームの真っ只中。安納芋、紅はるかなどのねっとり系のさつまいも品種の誕生によって、焼き芋をスイーツ感覚で楽しむ方が増加し、焼き芋ブームは今も加速を続けています。
焼き芋専門店が全国で増加するとともに、焼き芋パフェ、焼き芋ラテなど焼き芋を使った進化系スイーツも続々登場中。スターバックスからは「焼き芋 フラペチーノ®」が発売されて話題になるなど、流行に敏感な若い世代も虜にしています。
焼き芋ブームや焼き芋専門店の開業に関しては、以下の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。
関連記事:第4次焼き芋ブーム真っ只中!なぜ人気なの?焼き芋屋を開業するには?
かき氷
焼き芋と同様に古くから日本人に愛される「かき氷」は、現在第3次ブームの最中。旬の果物や果物から作った濃密なシロップ、貴重な天然氷などの高級食材で作られたかき氷は「グルメかき氷」といわれ、1皿1,000円以上することも珍しくありません。
通年営業のかき氷専門店も年々増えており、今やかき氷は夏限定のものではなく、一年中楽しめるデザートに進化しつつあります。
高級食パン
高級食パンがブームになったのは2013年頃から。セブンイレブンが発売した「金の食パン」は 1斤4枚切りで約300円という価格ながらも、発売4か月で1,500万個を売り上げるなど高級食パンブームの草分け的存在となりました。
また、2013年に大阪で創業した「乃が美(のがみ)」や、同年に東京・銀座に開業した「セントル ザ・ベーカリー」も高級食パン専門店としてブームを後押し。消費者のプチ贅沢志向を満たし、食パンを日常品から嗜好品へと変化させていきました。
現在では高級食パンブームも落ち着き、閉店する店舗も急増していますが、セントル ザ・ベーカリーなど、ブームでなく定着フェーズに入った店も存在します。
専門店化のメリット
他店との差別化
競争が激しい飲食業界において、数ある飲食店の中から自店を選んでもらうためには、他店との差別化が欠かせません。一つのテーマに特化した専門店として、自店の売りやコンセプトを明確に定めることで、他店にはない付加価値を生み出すことができます。
また、目新しく競合の少ない専門店であればあるほど話題性もアップ。メディアに取り上げられやすくなったりSNSで拡散されたりと、集客効果も期待できます。
業務効率化につながる
メニューや食材を絞ることで仕入れや仕込みの時間が削減できるほか、食材の廃棄量を減らすことにもつながります。
また、さまざまなジャンルの料理を扱うファミリーレストランや居酒屋とは違って、注文内容もシンプルになるため、スタッフのオーダーミスも削減可能。その他にも、新人スタッフの研修期間を短縮できるなど、さまざまな業務効率化が期待できます。
メニューのクオリティを高めやすい
メニューを絞ることで、料理それぞれの品質向上・安定化が図りやすくなります。例えば、一人のスタッフがハンバーグ、ピザ、オムライスを毎日30食ずつ調理するのと、オムライスだけを毎日90食調理するのでは、質の高さと安定性に差が生じます。
いつ来店しても味にブレがなく美味しいという状況がキープできれば、結果的にお客様の満足度向上や常連客・リピーターの増加、売上アップにもつなげられます。専門店化のデメリット
客層が絞られる可能性がある
コアなお客様の心をがっちり掴み、リピート率を上げられる一方で、あまりにニッチな専門店だと客層が限られてしまい、そもそも需要が少ないことから集客が困難になる可能性があります。
流行に左右されやすい
一つの料理や食材に特化する専門店の場合、流行に左右されやすいというデメリットもあります。例えばタピオカドリンクのように、流行に乗った場合は爆発的な人気が出るものの、流行が落ち着くと一気に注目度が下がり客足が遠のいてしまう可能性も。専門店化を考える際は、大衆性と話題性のバランスを考えてテーマを検討することも重要です。
大衆性:年齢・性別を問わず好きな食べ物の王道、誰もがよく知っている食材
話題性:SNSでバズっている、雑誌やテレビで取り上げられている、目新しい食材
今後注目の専門店
最後に、ネクストブレイクが期待される注目の専門店をいくつかご紹介します。
カヌレ
フランスの伝統焼き菓子であるカヌレは昨今驚くほどの変化を遂げ、進化系カヌレの専門店が続々と登場。注目度、人気ともに拡大しています。
例えば、福岡発のカヌレ専門店「ラ・スール」が販売する「生カヌレ」は、生地を生で仕上げることで、外側のカリカリ食感をより感じられるように。カヌレの中には濃厚なカスタードクリームと生クリームが入っており、冷やしたまま食べる点も新しいと話題になっています。
また、銀座のトリュフ専門レストラン「AURUM+truffle」が手がける「半熟カヌレ」の専門店「boB(ボブ)」もSNSで大きな話題に。表面はカリッと、中はとろけるほど滑らかな口当たりが魅力です。
おにぎり
おにぎり専門店自体は珍しいものではありませんが、最近では、味、形状、見た目に個性を出した、進化系おにぎり専門店が増加しています。
例えば、東京・学芸大学にある「学大おむすびマルムス」のおにぎりの特徴は、手土産や差し入れにも使えるおしゃれなパッケージとまん丸な形状。丸い形であることで、最初から最後まで具材とご飯を一緒に楽しめます。東京・入谷にある「羽根つき焼きおにぎり専門店 gao」では、機械でプレスして焼き上げた、羽根部分は煎餅のようにパリパリ、中はチーズがとろける焼きおにぎりが大人気です。
カレーパン
惣菜パンの代表格・カレーパンの専門店も続々と登場しています。例えば、「カレーパン専門店 YES!」は20種類以上の商品を展開するカレーパン専門店。2021年12月、東京・大井町に1号店がオープンし、3か月で5万個を売り上げる人気店になりました。日替わり、週替わり、季節替わりでラインナップが変わるため、いつ来ても違う味を楽しめるのが魅力です。
カレーパン専門店が増加する背景には、新規参入のしやすさも。からあげ専門店のようにフライヤーなど最低限の厨房機器があれば済み、注文状況に応じて揚げれば良いため、省スペースでの営業が可能といったメリットが挙げられます。
専門店化による差別化が、飲食店が生き残るカギの一つに。
開業3年で約7割が廃業し、10年続くのは約1割ともいわれる飲食業界。数ある飲食店の中から自店を選んでもらい、長く生き残っていくためには、他店との差別化が欠かせません。
一つのテーマに特化した専門店は、お客様に店のコンセプトや特徴を理解してもらいやすい上、業務効率化につながるなどメリットづくし。大衆性と話題性のバランスを考慮したテーマ設定で、お客様の心を掴む個性的な飲食店を目指してはいかがでしょうか。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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