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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
お客さんに好かれるお店の秘密
前回、直接の顧客ではない、子供たちの気持ちをも強烈につかむ、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の店の実例をご紹介した。当会にはこのような店は多いが、その秘密は何だろうか。
子供に限ったことではないが、人は“情緒的な体験”をさせてもらった店に対し、好感や愛着、信頼などのポジティブな感情を持つという、研究知見がある。情緒的な体験とは、心がじーんとなったり、嬉しくなったり、ありがとうと言いたくなるようなことだ。そういう体験が積み重なると、お客さんはずっと長くこの店といい関係を続けていきたいと思うようになる。そういう法則があるのである。
ワクワク系マーケティングではこの法則に則り、お客さんに情緒的な体験を与える、もしくは共有することを奨励している。前回ご紹介した店も含めて、私の知る多くの店は、ゆえにそれを意識し、行っている。いつも心がけている。かといって、何かプレゼントをしたり、特別な企画を行っているとは限らない。雨の日には買い物袋にビニールをかけ、風の強い日にはお気をつけてと一声かける。情緒的な体験とは、そのようなほんの気遣いが態度になるだけでもいいのだ。また、親子で来店すれば、直接の買い物客である親ばかりを相手にせず、子供たちにも同様に接する。好かれるお店には情緒的な体験がある
私は思う。子供たちの気持ちをつかむ店には、子供を魅了する特別なネタがあるのではなく、この情緒的な体験がカギなのではないかと。相手を思いやる気持ち、相手の心に寄り添おうとする気持ち、そこから生み出される態度や言動。それはちょっとしたことでも、たとえ自分に向けられたものでなくとも、人の心に強く響く。当然、子供たちの胸にもだ。それを感じ続けて彼らは、その店が好きになっていく。それは、お客さんとの絆作り、ひいては商売の真髄でもある。
前回ご紹介した、ある親子常連客からの手紙は、次の言葉で結ばれていた。「この店を通して私達は、人が生きていくのに必要なものって何だろうと気づくチャンスをもらっている気がします」。この言葉にこそ、答えが凝縮されていると私は思う。そして、こういう店が減っている今日、お客さんにとって、社会にとって、このような店はより必要とされていくのではないかと思うのである。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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