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【小阪裕司コラム】第10回:お客さんを教育する

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

商品の価値を伝えることの重要性

 前回、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員である沖縄料理店の、「ゴーヤーチャンプルー」リニューアルの顛末をご紹介した。「コスパが悪くなった」との指摘もあった同メニューだが、ここで重要なのはコスパが良い悪いの以前にある、価値を伝えることの大切さだ。
 改めて言うが、人は価値をどう認識するかで、「適正」と感じる価格は変わる。価格そのものよりも、価値の伝え方と内容が問題だ。だからこそ店主が、コスパの指摘をきっかけに、「自分たちがなぜこのようなゴーヤーチャンプルーを出すことにしたのか」をメニューに書いていないことに気づき、積極的に伝えることにしたことには意味がある。
 これは、価値を伝える際に見落としやすいことでもある。今回店主は、「究極のゴーヤーチャンプルー」のために厳選した食材については、ゴーヤーをはじめ、卵、アグー豚、島豆腐など、すべてどこのどういうものか由来を書いた。つまり「このメニューがどんなものか」は発信していたのだ。しかし「なぜこのメニューを出すことにしたのか」は見落とした。人に価値を伝えようとするとき、この「なぜ」に関わる情報は重要なのである。

価値を伝えることを通じて、お客さんを教育する

 さらに、このエピソードからはもう1つ重要なことが学べる。それは、価値を伝えることを通じて、お客さんを教育することの大切さだ。今回のリニューアルの背景には、沖縄の郷土料理であるゴーヤーチャンプルーに、多くは沖縄県産の材料が使われていないことがあった。それはコストに因るものだが、その事実、そして高価な食材はなぜ高価なのか、どこに顧客体験としての差があるのかなど、買い手は知らないことばかりだ。それを知らせることなく価格だけが上がれば、買い手には価格の情報しか入らないゆえ価値が認識できず、「コスパが悪い」となる人もいる。そこでその価値を教える「教育」が必要なのだが、この課題はもちろんゴーヤーチャンプルーに限ったことではない。
 価値あるものを正当な対価で売り、そのことでさらに顧客の支持を受ける――それこそが今、そしてこれから、中小企業や小さな店舗の多くが生き残っていくための必須条件だと私は思うが、どうだろうか? そのために不可欠な活動のひとつは、価値を伝えること、それを通じお客さんを教育していくことなのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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