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【小阪裕司コラム】第18回:眠ったままの売上

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

お客さんに商品力を伝えた「サンマ」の実例

 前回、ワクワク系的視点から「商品力の強化」についてお伝えした。「商品力」を強化することは良いことだが、それと並行して、そもそも強い商品力を「伝える力」を強化することも重要だと。この話に多くの反響をいただいたので、今回もこの話題を続けよう。
 このコラムの前身である日経MJの連載コラム『招客招福の法則』の初期の頃、サンマのPOP(店頭販促物)の話を書いたことがある。多くの店の魚売り場では、例えば2種類のサンマを売っていても、「サンマ1匹130円」「サンマ1匹150円」としか書かれていない。そうした場合、往々にして安いサンマの方がよく売れるのだが、その理由は、食品ではより低価格のものが好まれるからではなく、この表示だけではお客さんは高い方のサンマを買う理由がわからないから。そこで、ある店がそれならと、高い方のサンマを買う理由――高い方は背が厚く脂ののりがより良い、など――を伝えてみたら高い方が売れるようになった、という話だ。
 そうコラムに書いた後、ある食品スーパーの店主から「あのサンマの話、実際にやってみました」と報告があった。店頭で価格の異なる2種類のサンマの実物を並べて比較し、「新物の生さんまのおいしい見分け方!」「脂ののりが違う」「焼いてて肉汁がたれおちる」と、高い方のサンマを買うべき理由を大きく書いてみた。結果は、表示し始めた週からほとんどのお客さんが高い方のサンマを買って行くようになり、サンマの売上が前週比170%と大幅に伸びた。また予期しなかった出来事として、こう表示し始めた途端に「他におすすめの魚はどれ?」「こっちの魚はどう見分けるの?」と、お客さんから声をかけられるようになったとのことだった。

人はより安いものではなく、より価値のあるものを買う

 この手の事例は、ワクワク系では昔から事欠かない。私の人間研究からの確信のひとつは、「人はより安いものではなく、より価値のあるものを買う」だが、そこに気がつき、このサンマのように実際に売り場で実践してみると、誰しも、これが正しいことを実感できる。
 そこで「商品力」の話だが、サンマの場合、誰かが商品力を強化したのではない。もともと商品力の強いサンマと弱いサンマがいるのだ。そして強いサンマは、たぶんサンマが市場で取引されるようになった昔からずっといる。しかし今もなおどれほどのお客さんが、その商品力を知っているだろうか? そう思って見直せば、ほとんどの販売現場にまだまだ商品力は眠っている。それはすなわち眠ったままの売上なのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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