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最近街中でよく見かけるようになった無人販売所。非接触・非対面が推奨されたコロナ禍を機に、急拡大しているビジネスモデルです。
冷凍餃子をはじめとする食品の無人販売所は全国に急増中。コロナ禍を経てもなお、ピークアウトせずに広がりを見せる理由を解説します。
需要が高まる背景
コロナ禍で高まった非接触・非対面ニーズを背景に拡大した、無人販売の需要が今なお加速を続けています。時間や人の目を気にせず、気軽に利用できる点も多くの消費者に支持されるポイントです。
従来の無人販売といえば、野菜の路上販売やコインランドリーが主流でしたが、その状況を変えるきっかけとなったのはDX(デジタルトランスフォーメーション)の浸透。顔認証やAI搭載カメラなどの普及によって、野菜以外の食品、コンビニ、トレーニングジム、アパレルショップなどさまざまな業界で無人化が進み、無人販売を行いやすい環境が整ってきています。
その中でも食品の無人販売所はコロナ禍をきっかけに急増。経営に苦しむ飲食店が新たな経営施策として、無人販売を始めるケースも多く見られるようになってきました。
無人販売所とは?
無人販売所とは、接客スタッフが常駐せず、来店客のみで商品やサービスの利用・決済までを行える店舗のことです。定期的に商品の補充や店舗を清掃する人手は必要ですが、接客スタッフを必要としないため、人件費を安く抑えられます。
昨今では、無人販売所のフランチャイズ展開を行う企業も増加。片手間で24時間年中無休で営業できるため、副業ビジネスとしてフランチャイズの無人販売所経営を始める人も増えています。無人販売の始め方
資格や許可は必要?
無人販売所を始めるにあたって資格や許可が必要かどうかは、販売するモノやサービスの内容によって異なります。
●野菜・果物などの生鮮食品の販売
野菜や果物を仕入れて販売する場合は、保健所へ「野菜果物販売業」の届出と、原則として「食品衛生責任者」の設置が必要です。生産者自ら販売するのであれば資格や許可は不要ですが、どちらも食品表示法や食品衛生法を遵守する必要があります。
●餃子、ラーメン、スイーツなどの冷凍食品の販売
冷凍食品を仕入れて販売する場合、○○業などの営業許可は不要ですが、所轄の保健所に営業届出を提出しなければなりません。冷凍食品を製造・販売する場合は「冷凍食品製造業の営業許可」「複合型冷凍食品製造業の営業許可」「冷凍・冷蔵倉庫業の届出」などが必要です。
●自動販売機を使った無人店舗
販売する商品によって異なります。生鮮食品を仕入れて販売する場合は「野菜果物販売業」と「自動販売機による販売業」の届出、冷凍食品もしくは常温で長期保存が可能な食品(缶飲料やカップ麺など)を仕入れて販売する場合は「自動販売機による販売業の届出」が必要です。自動販売機ごとに届出が必要なので、複数台導入する場合は注意しましょう
関連記事 飲食店の自販機ビジネス、導入方法とそのメリットを解説!
必要な設備とは?
無人販売所に必要な設備は、販売する商品や業態、設置場所によって異なります。
例えば、冷凍餃子や冷凍加工品を販売する場合、商品の品質を保つために冷凍設備は必須です。そのほかにも、以下のような設備も必要です。
✔商品の陳列棚・ケース
✔セキュリティカメラ: 盗難やトラブル防止のため、設置が推奨されます。
✔POSレジ:キャッシュレス決済に対応するために必要です。
✔防犯灯:夜間でも安心して利用できるよう、設置が推奨されます。
✔入退店システム:店舗への入店を管理する場合に必要です。
上記以外にも、在庫の保管・清掃道具などを置くためのバックルームの用意も検討しましょう。
立地選びは慎重に
無人販売ではお客様の呼び込みができないため、立地が悪いと客数が伸び悩む可能性も。大前提として「人通りが多い」場所を選び、集客しやすい環境を整えましょう。人通りが多い場所は人の目に触れやすく、万引きや盗難などの犯罪を防ぐ要素にもなります。
その上で、ターゲット層に合わせた立地を検討します。主婦層を狙うのであれば住宅地に、会社員を狙うのならオフィス街や駅前に。学生や若者を狙うのであれば繁華街といった具合です。
無人販売のメリット
人件費の削減
無人販売は、お客様が自身で商品・サービスを選び、会計を済ませるセルフサービスが基本となります。接客や会計のスタッフが不要で、在庫の補充・管理など最低限の作業で済むことから、省人化による人件費の削減が可能となります。コロナ禍以前から課題となっている人手不足の解消につながる点も、大きなメリットといえます。
24時間販売可能
24時間365日営業できるため、有人店舗における定休日や営業時間外など販売機会の損失を減らすことが可能です。同時に、24時間販売によって新たな客層を取り込める可能性もあります。
運営コストが最小
無人販売所の運営で必要な作業は、商品の補充や売上金の回収、店舗の清掃程度で、週に数時間ほどしかかかりません。それすらも外部業者に委託してしまえば、運営コストはほとんどかからないと言ってよいでしょう。
手間がかからないため、他の事業と兼業したり、会社員が本業の傍ら副業として始めることも可能です。不労所得に近いビジネスではありますが、売上管理や商品の選定、マーケティングなど、経営者としての仕事は必要です。無人販売のデメリット
万引き・盗難のリスクがある
無人店舗であるがゆえ、万引きや盗難被害に遭う可能性は拭えません。外から店内が見えるガラス張り仕様にする、人通りの多い場所に店舗を構える、キャッシュレス決済を導入するといったセキュリティ対策が必須となります。
また、防犯カメラも無人販売には必須です。カメラがあるというだけで犯罪の抑止力になり、最近ではクラウド型の防犯監視カメラも普及しています。工事無しで簡単に設置でき、外出先のスマホからも防犯カメラの映像が確認できる利便性を備えています。
初期投資が必要
人件費が削減できる一方で、防犯カメラやセンサーの設置、決済システムの導入などの初期投資が発生します。場合によっては、有人店舗よりも費用がかさむ可能性も。
AIカメラなどの最新技術を備えた無人販売所はお客様にとっても魅力的ですが、利益を出せなくては意味がありませんので注意しましょう。
緊急時の対応が難しい
店舗にスタッフが常駐していないため、決済システムの故障や商品の欠品などのトラブルが起きた際に、即時の対応が難しいケースが予想されます。また、キャッシュレス決済や無人販売所の仕組みに慣れていない方が問い合わせをしたくても、スタッフがいないと問題を解決できず、購入を諦めてしまうこともあるでしょう。
それらのトラブルに対応するため、わかりやすいマニュアルを設置したり、緊急連絡先を記載したりして、事前の準備を怠らないことが大切です。
無人販売の成功事例
餃子の無人販売所
「餃子の雪松」は、2019年にオープンした冷凍餃子の無人販売所。群馬県水上の温泉街に佇む中華料理店、お食事処「雪松」から始まりました。昭和15年に創業した3代続く餃子の名店として知られ、客席20席ほどの小さな飲食店ながら大繁盛。県内からはもちろん、県外の人や著名人も訪れるほどの人気店です。
餃子の雪松の冷凍餃子は36個入りで1,000円。店内にある冷凍ケースから冷凍餃子を取り出し、料金箱に現金を入れるだけのシンプルなシステムです。36個入り1,000円(税込)という1商品のみで会計も簡単なことから、店内に人が滞留せず、密になることもないと好評。24時間営業なので、時間を気にせず誰でも気軽に購入できます。
餃子の雪松では日本全国に出店を進め、2021年11月時点で約280店舗にまで拡大。さらに2022年4月頃を目途に400店舗まで広げる計画だといいます。
「50年餃子」は、愛知・岐阜・三重エリアを中心に展開する冷凍餃子の無人販売所です。販売する商品は、元祖肉餃子と野菜増し肉餃子の2種類。どちらも40個入り1,000円(税込)で、餃子の雪松と同じく、冷凍ケースから冷凍餃子を取り出し、料金箱に現金を入れるシステムです。
しかし、有人店舗の駐車場内に販売所を設置する形態をとっていたり、FC店舗を募集していたりと、餃子の雪松とは少し異なる戦略もみられます。
ホルモンの無人販売所
合同会社藤が手掛ける「24h無人ホルモン直売所」は、数ある肉の無人販売所の中でも、ホルモンに特化した無人販売所です。和牛の畜産が盛んな岩手県から、1頭買いにこだわった質の高いホルモンを1,000円均一(一部500円均一)で提供しています。
フランチャイズ開始1年で170店舗以上まで拡大できたわけは、最小2坪から開業できること、立地の良し悪しにあまり影響されないこと、最短2日で開店できることなど、運営コストのみならず出店コストまで抑えられているためです。
肉を扱う無人販売所は多数ありますが、ホルモンに特化したことで地域のホルモン好きの心をとらえ、出店コストを小さくしたことでフランチャイズ加盟を伸ばした好例です。スイーツの無人販売所
2024年1月時点で75店舗を展開するトゥエンティフォー株式会社の「24(トゥエンティフォースイーツショップ)」、2024年6月時点で全国51店舗を突破した、株式会社MakeAndと株式会社Createurが手掛ける「いつでもスイーツ」が、スイーツ分野での草分け的存在です。
どちらも全国各地の有名店のスイーツや、コンビニやスーパーでは見掛けない“映えスイーツ”を数多く取り揃え、いつ来店しても新商品と出会えるワクワク感を提供しています。
また、商品だけでなく店内の装飾や商品の陳列にも気を配り、全体的に“カワイイ”を演出しているのも他の無人販売所と一線を画すポイントです。自分へのご褒美としてはもちろん、手土産や贈り物としての需要も高く、売上を伸ばしています。無人販売の熱気はさらに加速
人件費の削減、販売機会・客層の拡大といったメリットから注目を集める無人販売所。万引き・盗難のリスクや、初期投資がかさむデメリットはあるものの、高齢化社会による労働人口不足に対応する意味でも、今後さらに需要が高まると見込まれます。
しかし、せっかく無人販売所をオープンさせても、他店に埋もれてしまっては意味がありません。成功事例で紹介した店舗のように、商品や販売システムに個性を持たせることも頭に入れておくことをおすすめします。
まとめ
コロナ禍を経て、動向が注目されていた無人販売所ですが、食品のみならず昨今ではアパレルやトレーニングジム、化粧品など商材の幅が広がり、ますます店舗を増やしています。
非接触・非対面の販売スタイルに消費者が慣れたことと、人手不足でも店舗を運営できる手段として、これからも無人販売所は増えていくものと予想されます。
無人販売所を開業したいと考えた方は、飲食店の開業支援を得意とするcanaeruにご相談ください。
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この記事の執筆
ライター
鈴木あけみ
広告制作、音楽雑誌の編集者を経て、フィットネスや飲食、サブカル分野のオウンドメディア運営に携わるWebディレクター兼ライター。好きなことは食べること、マンガ、旅行、舞台鑑賞、バレーボールの2児の母。
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