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高度成長期とともに栄え、人々の胃袋を支えてきた「町中華」。いわゆるよくある町の大衆食堂ですが、近年では雑誌やテレビの情報番組で特集が組まれる機会が増え、注目を浴びています。
同時に、昨今のコロナ禍で飲食店の売上が落ち込み閉店も相次ぐ中、町中華は上手く生き残っているという声も聞かれます。昭和の時代から長く愛され、コロナ禍や景気にも左右されず営業し続けられる理由はどこにあるのでしょうか。
この記事では、町中華がつぶれない理由について考察するとともに、町中華から学ぶ飲食店開業のヒントについても解説します。
町中華とは?
明確な定義はありませんが、昔から地域に根ざし愛され続ける、中華料理中心の大衆食堂を指すのが一般的です。
そもそも中華料理とは、中国の料理が日本人の舌や好みに合わせて進化を遂げたもので、本場の中国料理とは別物です。それゆえ、町中華という言葉も日本にしか存在しません。
中国人にとっては、日本独自に進化した町中華が興味深く映るようで、コロナ禍以前までは、中国人観光客が日本の町中華を訪れる様子も度々見られました。
町中華で提供されるメニューは店によってさまざま。一般的な中華料理店で提供される麻婆豆腐や回鍋肉、エビチリといった料理を始め、ラーメンやチャーハン、レバニラ炒めなど、定食・飯類・麺類の幅広いメニューが提供されています。
さらには、和食であるはずのカツ丼や親子丼、カレーライス、洋食であるオムライスやシチューがメニューに並ぶなど、専門店とは対局にある、なんでもありなラインナップ。より庶民的なファミリーレストランといったところでしょうか。
また「安くて、おいしくて、ボリュームがある」ことを売りにしている町中華が多く、1,000円あれば間違いなく満腹になれる、庶民の味方でもあります。町中華がつぶれない理由
新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの飲食店は休業や時短営業を余儀なくされ、売上が急減。廃業に追い込まれる店舗も多く見られます。
その一方で、コロナ禍でも客入りを保ち、生き残っている飲食店業種も多く存在します。その一つに挙げられる「町中華」にはどんな特徴があるのでしょうか。
自宅近くの食堂的存在であること
町中華は安くておいしく、ボリューム満点!毎日通っても飽きない豊富なメニューが揃い、昼食にも夕食時にも気軽に通える、町の食堂的存在なのです。居酒屋としての役割も兼ね備えているため、仕事終わりに一杯飲みたいお客様にも重宝されます。
さらに重要なのは、自宅近くにあるということ。
コロナ禍によってオフィス街のランチや繁華街での外飲み需要が激減したと言われますが、自宅近辺の飲食店は、コロナ禍や景気に関係なく生活の一部として繰り返し利用される傾向にあります。
実際に、ある大手飲食チェーン店では、コロナ禍をきっかけに出店戦略を大幅に変更。以前はインバウンド客をターゲットとし、繁華街への出店に注力していましたが、現在はターミナル駅から離れた、住宅街が集まる駅に積極的に出店しています。
その地域住民の昼食や夕食需要に応えるメニュー開発やテイクアウトにも力を入れることで、業績を伸ばしています。
地域に根づいていること
自宅に近いというだけなら、飲食チェーン店も同じです。
しかし、多くの町中華は、何十年にも渡って、親から子へ受け継がれてきた老舗店や個人・家族経営の店舗が中心で、その地域に根づいている場合がほとんどです。
それゆえ常連客も多く、お客様同士が家族のように会話をしているなんてことも珍しくありません。家庭料理を提供するかのように、常連客からリクエストがあれば、その料理を定番メニュー化するなんてこともしばしば。まるで実家に帰ってきたかような感覚になれるのも、町中華の魅力です。
店主とお客様との距離が近いため、初めて訪問したとしても、アットホームな雰囲気で受け入れてくれます。
形式ばらない接客と味の個性
大手飲食チェーン店では、接客や調理方法がマニュアル化されている場合がほとんどですが、個人経営の町中華の場合、前者ほど厳格なマニュアルが用意されていないことが多いです。
その結果、店主やスタッフそれぞれの人柄が色濃く出た接客になり、形式ばらない受け答えや、良い意味でゆるい店舗の雰囲気に惹かれるという方もおられます。
また、たとえ暖簾分けの飲食店であっても、マニュアルがないことで店主によって味に個性が出てきます。
それをマイナスに捉える方もおられるかもしれませんが、言葉を言い換えると「ここでしか食べられない味」であるということです。
マニュアル化されていないがゆえに、店主の人柄やここでしか味わえない味にファンがつく。これは町中華に限った話ではありませんが、町中華が支持される一つの理由と言えるでしょう。
ランニングコストが抑えられること
物件を賃貸し、従業員を雇う場合と比べて、家賃や人件費などのランニングコストが抑えられるという理由もあります。
前述のように、町中華は家族経営や個人経営の店舗が多く、何十年も営業を続けている老舗が中心。創業30年以下の店舗は珍しいと言われるほどです。
そのため、自己所有の物件であったり、既に物件のローンを完済していたりすることで家賃が発生せず、家族経営で人件費が大幅に抑えられる場合も多いです。
レトロな雰囲気が若者を惹きつけている
昭和の時代から営業を続けている町中華は、多少のリフォームや改修を行っているにせよ、レトロな雰囲気を醸し出している店舗が大半です。
昭和の時代に育った世代が懐かしさを感じる一方、平成以降に生まれた若い世代にとっては、そのレトロな雰囲気が逆に新鮮だと感じるようです。
町中華がメディアで取り上げられたことをきっかけに興味を持って初めて訪問し、町中華にハマるという方も出てきています。
町中華を見習った開業のヒント
これまで述べてきたことを整理すると、町中華から学ぶ飲食店開業のヒントとして、以下が挙げられます。
毎日通いたくなる店づくり
町の食堂的存在として、毎日通っても飽きないメニューやサービス提供が必要です。ただし、やみくもにメニューの数を増やすだけでは意味がありませんし、料理を提供する自分たちの負担も大きくなります。
日替わり定食の導入、曜日ごとに変わる割引サービス、ワンコインのランチボックス販売、夕食にぴったりな惣菜のテイクアウト販売など、工夫できる点はたくさんあります。
お客様の絶妙な距離感
高級ホテルのような礼儀正しく整った接客ももちろん素晴らしいですが、肩肘張らずにくつろげる、アットホームな接客が落ち着くという方も多いものです。
一歩踏み込んだ会話を行うなど、お客様との距離感を上手く図り、コミュニケーションを取ることは、常連客作りにもつながります。時代に合わせた変化も必要
世代交代で両親などから飲食店を受け継ぐ場合、今後の方向性を迷われる方は多いかもしれません。長年愛されてきた店の味を守ることはもちろん大切ですが、さらに何十年にも渡って経営を続けていく上では、時代に合わせた変化も必要です。
常連客に愛される味や雰囲気は残しつつも、今の時代にあわせたデジタル機器の導入、新たな料理ジャンル・サービスの採用など、柔軟に取り入れていくことも意識されてみてください。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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