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欧米ではミレニアム世代を中心に「ソーバーキュリアス」がトレンドになっています。
ソーバーキュリアスとは、「酒は飲めるけど、あえて飲まない選択」をする人やライフスタイルのことで、近年、日本でも広がりを見せています。
ソーバーキュリアスは「しらふ」を意味する「Sober」と「好奇心旺盛、~したがる」の意味を持つ「Curious」の2つを掛けた造語。さしずめ「しらふでいたがる」、「しらふ主義」と言ったところでしょうか。ではなぜ今、「ソーバーキュリアス」が注目されているのでしょうか。
目次
ソーバーキュリアス増加の裏には日本全体の酒離れがあった!?
昨今、よく耳にするのが「若者の酒離れ」という言葉。
厚生労働省の「国民健康栄養調査」では、飲酒の習慣を「週3日以上、1日1合以上飲酒する」としています。
この調査によると、1997年には飲酒習慣のある20代男性は30.7%、20代女性は9%でしたが、2017年には、20代男性は16.2%、20代女性は3%と減少傾向にあることがわかっています。
ただ、男性の飲酒習慣は、20代に限ったことではなく、全ての年代で減っています。一方、女性は、40代から60代まで増えていますが、もともと飲酒する人の割合が異なるので、全体で見れば「日本人の酒離れ」が進んでいると言えます。こうした酒離れがソーバーキュリアスが広がりを見せている理由と言えるでしょう。
「酒離れ」が進行している4つの理由
1. 非正規雇用の増加
バブル崩壊後、90年代末に起きた金融危機を境に、正規雇用が減少し、非正規雇用が増え始めました。95年には9.8%だった15歳~24歳男性の非正規雇用比率は、2005年には、28.2%に達しています。
非正規雇用者には正社員のような同期や上司といった強い繋がりが少なく、職場の仲間と飲むこともそう多くはないかもしれません。何より、所得の低い若い世代にとって、飲みの場は出費がかさむ場所。これでは酒を飲むことが習慣になるはずがありません。
2. 健康志向の高まり
食生活の変化などを背景に、日本人男性のBMI(人の肥満度を表す体格指数)は1990年代から上昇傾向にあることが厚生労働省の調査で分かっています。2008年から40歳以上を対象に始まった、いわゆる「メタボ健診」の広がりもあり、体重増加によってアルコール摂取を控えようと考える中年世代が増えた可能性は否定できません。
また、デジタルネイティブ世代の若者は、健康に関する知識が豊富で他の世代よりも健康志向が高いという指摘もあります。
3. 味の嗜好の変化
酒離れの中でも落ち込みが激しいビールに代わり、支持を広げているのがレモンサワーです。以前は「とりあえずビール」が当たり前でしたが、日本蒸留酒酒造組合の調べでは、3人に1人が「レモンサワーを飲むタイミングは1杯目から」と回答し、特に20代で1杯目からレモンサワーを飲む人の割合が大きく増えています。
レモンサワーを飲む理由では「味がすっきりしている」が全ての世代でトップです。
また、総務省の「家計調査」によると、1年間の一世帯あたりの飲料(清涼飲料)と酒類を合わせた支出額に占める割合を見ると、20年前は56%が酒類でしたが、10年前に逆転され、2016年には酒類が44%、となっています。
苦いビールより飲みやすいサワーが好まれ、さらにアルコール飲料より飲みやすいノンアルコールが選ばれる傾向にあります。
4. 働き方改革による影響
昨今の働き方改革によって以前では普通だった、“朝から晩まで働き、ストレス発散のため帰りに仲間と一杯”といった飲み方も減っているのかもしれません。このような時代の変化が酒離れに影響していることは間違いないでしょう。
20代の4分の1は、ソーバーキュリアスという実態
厚生労働省の「国民健康栄養調査」(2017年)によると、日本の20代の半数程度は日頃から酒を飲む習慣がなく、このうち「飲めるけれど、ほとんど飲まない」層は、 20代の男性で28.6%、女性では24.7%となっています。
つまり日本の若者の4人に1人は、あえて飲まない選択をしている「ソーバーキュリアス」と言えます。
10年で市場4倍!?拡大するノンアル需要
サントリーがまとめた「ノンアルコール飲料レポート2020」によると、2009年からの10年で、国内のノンアルコール飲料(※ノンアルコールビールテイスト飲料やノンアルコールチューハイ・カクテルテイスト飲料)の売上は、約4倍に増加。
2019年は対前年102%、2020年も対前年101%と見込まれ、市場規模は引き続き拡大傾向にあると推定しています。背景には新型コロナウイルス感染症拡大による生活の変化や、ノンアルコールビールテイスト飲料の味の向上、健康面の意識などがあるとしています。
拡大するノンアル需要の波に飲食店はどう立ち向かえばいい?
飲食店でこれまで客単価を支えていたのはアルコールドリンクでした。しかし、今後ノンアルコール派が増えてくれば、売上に響いてくることが懸念されます。
アルコールに頼らずに経営していくためには、どんなお店づくりを意識すればよいのでしょうか。
アルコールに頼らないアイデアの捻出
アルコールに頼らない飲食店を考える上でのポイントは、足を運ぶ動機を作ることです。新型コロナウイルスの影響でテイクアウトを始めた飲食店が増えましたが、店で食べるよりも割高に感じてしまうという声は少なくありません。
牛丼1杯ならまだしも、例えば2,000円程度のステーキがプラスチック容器で届けられたらどうでしょう。食べ物や飲み物だけに払ってもいいと思える金額には限度があります。
ただモノを売るのはなく、店の雰囲気、サービス、店員との会話、馴染みの客と過ごす時間などを体験としてトータルで売る。これこそが足を運ぶ動機で、内容の充実度は今まで以上に求められてくるでしょう。
もちろん、アルコールを飲まない選択をする人が増えている以上、アルコールがなくても食べたくなるメニューやオリジナルのノンアルコールドリンクを開発することも足を運んでもらう動機につながります。
新しいコンセプトのお店づくり
あえて飲まない選択をする人の中には健康を意識している人も少なくありません。こうした人々が足を運びたくなるような健康路線の店にシフトするのも一つの手です。
そもそも自炊で安心・安全な旬の食材ばかりを使い、カロリーや栄養バランスも考慮して料理するのは大変です。ヘルシーメニューをウリにするお店は、今まで以上にニーズが高まる可能性があります。
ソーバーキュリアスにも嬉しい、ノンアルコール専門店が出現
2020年7月、東京・六本木に新しいコンセプトの店がオープンしました。
日本初のノンアルコールバー「0%」です。「お酒は苦手だけど、ソフトドリンクじゃ物足りない。本格ドリンクとリッチなバーカウンターで上質な時間を過ごしたい。ワインのように夢中になれる大人の嗜好品に出会いたい」。そんな人に楽しんでもらうため、ノンアルコールドリンクのみを提供しています。
例えば、フルーツにバジルをあわせた「A Real Pleasure」や、コールドブリューコーヒーにフレッシュグレープフルーツを組み合わせた「Goldentree」など、酒でもソフトドリンクでもない新感覚のドリンクを提供。
フードは「罪悪感のないジャンクフード」をテーマに、ヴィーガン対応のメニューで構成されています。これまでのバーでは考えられなかった、車を利用する人や妊婦など、飲酒ができない人から好評だと言います。
雇用や生活環境の変化、健康志向などは簡単に変わるものではなく、こうした背景にある酒離れの流れは止まりそうにありません。
これからの時代の飲食店経営は、アルコールで酔わせるのではなく、その店でしか味わえないメニューや体験で顧客のハートをつかんで酔わせる、つまり魅了させることが必要不可欠になってくるのかもしれません。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
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