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埼玉県入間市にある話題の人気スポット「ジョンソンタウン」。ここで現在店舗を運営している人たちは、どのような経緯でこの場所を開業の地として選んだのか。そして、この地で開業することのメリットを4人の飲食店経営者にお聞きした。第2回の連載ではイーストコンテンツカフェを運営する赤久保良二さんと、黒糖カフェKAFUUを運営する池上小枝子さんの話を紹介する。
ジョンソンタウンのほぼ中央に位置し、黎明期から11年間この地でイーストコンテンツカフェを運営するのが赤久保良二さん。この街で商売をすることのプラス、マイナス面について率直に語ってもらった。
ジョンソンタウンでお店を開いて11年。開業に至ったきっかけは?
「もともと同じ入間市内で別のお店を1軒やっていたのですが、ある日そこに磯野商会の社長さんと営業さん、建築家の方が3人でいらして『ジョンソンタウンでバーをやりませんか?』と打診されました」。
当時のジョンソンタウンはまだいまの活気ある街にはほど遠い状態。店舗も2〜3軒ほどだったそうだが、「将来的にこういう街にしたいという話をしてくれて。それを聞いて面白そうだなと思ったので出店を決めました」。
イーストコンテンツカフェは、バーカウンターも床も、店内にある机や椅子もすべて手作り。おまけに水回りも赤久保さん自らが行った。「内装費はほぼ材料費」なのだそうだ。
ジョンソンタウン内にはこういった手作り感満載の店舗がいくつも存在する。それがこの街の雰囲気に見事にマッチ。店舗側もジョンソンタウンで出店することを意識したお店づくりをしていることがうかがえる。この地で開業することのメリットは「広告費がかからないこと」
この場所でお店をやることのメリットについて聞いてみると、「広告宣伝費が一切かからないこと」と言う。
「いろんなメディアが取り上げてくれるのでテレビは民法をほとんど一周しましたし、新聞や雑誌にも掲載されたり、『空飛ぶ広報室』(2013年TBS)というドラマの撮影でうちが使われたので綾野剛くんのファンが遠方からも来てくれたりもします」と笑顔を見せる。
ただ、赤久保さんはこうも付け加える。
「個人で営業していたらなかなかそういう機会もない。そこはジョンソンタウンならではだなと。家賃が高いと言われることもあるけど、一概に土地単価だけで考えられるものではないし、ここには普通の賃貸とは別の付加価値があると思います」。
これはジョンソンタウンのプラスの面と言っていいだろう。だが、プラスとマイナスは表裏一体だと思わせるエピソードを赤久保さんは教えてくれた。
それは某人気テレビ番組に出演したときのこと。「店に来るとオープン前なのにもう人が待っていて、駐車場も渋滞で入れなくて、警備員さんがいるのにジョンソンタウンの中も外もぐちゃぐちゃになったことがありました」と、その時の状況を振り返った。
ジョンソンタウン内のお店はほぼ個人店舗だ。一過性とは言え、個人でやれることの限界もある。結果的に、それが嫌になり撤退してしまったテナントもあったそうだ。
お店も街も盛り上げる。そんな気持ちがなければ、ここでの開業は難しいのではないか。そんな風に思わせてくれるエピソードだ。続いてお話を聞いたのは、「黒糖」をテーマにした、ゆったりとした沖縄時間が流れる癒しのお店、黒糖カフェKAFUUを運営する池上さん。池上さんがこの場所で開業したきっかけは”偶然”だった。
ジョギングで通りかかったジョンソンタウンで即開業?
「自分でお店を開きたいという目標のために、物件を探していましたが、なかなか見つからなくて。それで、その頃はこの近くの公園にジョギングによく行っていて、ジョンソンタウンも通りかかっていました。『緑も多いし、家にも近いし、こんなところでお店ができたらいいなぁ』なんて思いながらブラブラしていたら”興味のある方は事務所まで”という張り紙を見て、直接磯野さん(ジョンソンタウンの管理者)に電話をしました」。
そして、「この街に他にはない可能性を感じていたのかもしれません」と池上さんは続ける。
実は池上さん、ここが地元ではあるが、大学卒業後は県外で就職。その後、母親の病気をきっかけに、帰郷してきている。
ジョンソンタウンのかつての姿ももちろん知っているのだ。
「子どもの頃はまるで廃墟のようで米軍のお化けが出るという噂もあるほど。『あまり近寄らないほうがいいよ』なんて言われていたんです」と笑う。
それが2010年に地元に戻ってきて目にしたときは、「他にはない雰囲気で”これからの街”っていうワクワク感もあって、どうせやるならこんな素敵なところでやりたい」と思うまでに変わっていたそうだ。これはジョンソンタウンが作り上げようとしているコンセプトが間違っていなかったことを意味しているのだろう。「圧倒的に広告宣伝費がかからない」
池上さんにもジョンソンタウンでお店を開くことのメリットを聞いてみた。そうしたら、「圧倒的に広告宣伝費が要らないこと」と、イーストコンテンツカフェの赤久保さんと同じ答えが返ってきた。
「ジョンソンタウンとしていろいろメディアに出ているので、普通の商店街にお店を出すのとは違い、ジョンソンタウン自体にお客さんが来てくれるのが何よりの強み」。続けて「他のお店とコラボレーションできたり、情報交換ができたり、店同士のコミュニケーションが重なることで大きな力になる」とも話す。これは街が盛り上がることによって、お店が潤っていることを意味し、それをこの街の人たちは皆わかっている。だから皆でこの街を盛り上げるのだ。
「父からは『ジョンソンタウンだからやっていけるんだよ』って言われますけど(笑)」と、池上さんは言うが、立地選びは店舗経営において、とても重要なポイントである。この場所を選んだのは紛れもない池上さんだ。ジョンソンタウン流店舗経営で成功するコツ
最後に横との強固なつながりを感じるこの街で、お店を開く際に大切なことを聞いてみた。返ってきた答えは、人として正しいことだった。
「オープン前から隣近所に自分の存在を知っていただいて、積極的にこちらからご挨拶に行ったりコミュニケーションを取ったりすることが大切だと思います。気付いたらお店ができていて『この店いつから!?』ってなるより、お店を開くときに「宜しくお願いします」って挨拶をして最初の繋がりを大切にできれば、何かあったときに、以前からいる方の知恵をお借りできたり、助けていただけたりするので」。
「私もジョンソンタウンで続けていく限り周りとの共存はずっと続きますし、管理されている磯野商会さんとの密な関係も続きますから、そこは大事にしています。そういう普段からの関係性があるからか、あれが壊れたとか、これが運べないとか言うと飛んできてみんなで手伝ってくれるのでいつも感謝しています」と話してくれた。
この街にライバルというものは存在しないのかもしれない。強力で強固な仲間意識がこの街を支えている。
ちなみに、池上さんはもうひとつお店を開く際に大切なことを教えてくれた。それは「健康第一」。
「私が心に留めているのは『無理をしない』ということです。以前体調を崩して1ヵ月休業してしまったことがあって、そのときは売上もなくて大打撃でした。だからお店を開く方には何よりもまず『健康第一』と伝えたいです」。とその自然体な人柄で経営の秘訣を教えてくれた。第3回目の連載では、この街に家族4人で暮らすメロウフードカフェの経営者、高橋みきえさん、そして、レンタルスペースも完備するカルチャーカフェ グランディールを経営する皆川安季子さんのお話を紹介していく。
【プロフィール】
赤久保良二さん
埼玉県入間市出身。44歳。自身の店を持つことを目標に昼間は土木職人、夜はバイトという二足のわらじ生活を5年半経験したのち、26歳で入間市内にバーを開く。イーストコンテンツカフェは自身2軒めのお店。
イーストコンテンツカフェ
http://www2.tbb.t-com.ne.jp/eastcontents/
埼玉県入間市東町1丁目7-3 平成ハウス15
昼はカフェ、夜はバーと2つの顔を持つお店。店内にはジュークボックスが置かれクラシックアメリカンな雰囲気が漂う。メニュー豊富でガッツリ系の肉料理からパスタやザ、おつまみまで取り揃う。年に数回ライヴイベントを開催するなど、地域コミュニティの重要なジャンクションにもなっている。
池上小枝子さんプロフィール
子どもの頃からのいつか店を開くという目標のため、大学卒業後は洋菓子販売や喫茶を運営する会社に7年務め、その間に調理師と製菓衛生師の免許を取得。その後スターバックスに10年弱務めたのち、現在の「カフー」をオープン。その自然体な人柄に惹かれ、お店を訪れるファンも多い。
黒糖カフェKAFUU
http://www.kafuu-siawase.com/goaisatsu.html
「幸せな気分になって帰ってもらいたい」と願いを込めて “カフー(沖縄方言で“幸せ”)”を店名にした沖縄時間が流れる癒し系カフェ。黒糖を使ったメニューが豊富な他、沖縄のソウルフードである沖縄そばはありつつも、ピザ、丼物、スイーツに至るまで、沖縄料理の枠に収まらないオリジナル料理が人気。ジョンソンタウン
埼玉県入間市にある、米軍ハウスと呼ばれる平屋のアメリカン古民家と、平成ハウスと呼ばれる現代的低層新築住宅が、樹々の間に点在して建っている自然豊かなレジデンスプレース。映画やドラマのロケ地として使用されたり、さまざまなメディアに登場し、近年人気を集めている。
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