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【小阪裕司コラム】第96回:価値を伝えることで商売は

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

売れなかった商品も価値の伝え方次第で売れる商品に

 ここ数回に渡り、お客さんに価値を伝える意義と効果をお伝えして来た。ではそれが、「これまで長年売って来たものの、ほとんど売れない商品」の場合はどうだろう。今回はそういう話だ。
 報告いただいたのは、ある地方の小さな町にある食品スーパー。同店ではこれまで長年に渡りワインを販売してきた。ただ、あれこれ考え品ぞろえを増やしてもほとんど売れず、ここ3カ月の販売実績も5本だけ。商圏が高齢者の多い過疎の町であることもあり、店主は、この地域の人はワインを飲む習慣がないんだなと考えていた。
 また彼自身、ワインに慣れ親しんでいないという事情もあった。飲めないわけではないがよく分からない。分からないから飲まないということで、店での販売にも力が入らなかった。
 そんなある日、地元で友人たちとの飲み会があった。その際、乾杯用に出たワインが実に飲みやすく、友人らとも、「ワインはよく分からんが、これは飲みやすい!」と何本もあけた。飲み会の席での偶然ではあるが、おいしい、また飲みたいと思うワインに出合った彼はこう思った。今までワインを飲もうと思わなかったのは、ワイン初心者である自分に合ったワインに出合わなかったことと、それでも特段困りはしなかったからだが、それはお客さんも同じなのではないか。ワイン初心者である自分は詳しい方のようには語れないが、「初心者はこれを飲んでみて!」「初心者の自分がはまっている」というメッセージなら発信できる。
 そこで早速このワインを仕入れ、チラシとPOP(店頭販促物)で「ワイン初心者が飲むべきワインはこれ!」という内容の情報を発信したところ大人気。これまで3カ月で5本しか売れなかった同店で、たった1銘柄で、1カ月に30本以上が売れた。その後も、「飲みやすくて気に入った」「友達にも教えてあげたいのでプレゼントに」とリピーターが増え、すっかり売れ筋商品となったのだった。

価値を伝えることは「顧客を創る」ことにつながる

 実はこの実践報告は10年ほど前にいただいたもので、当時の連載コラムで紹介もした。そして今、同店のワイン売り場は大きなスペースになり、1万円以上する高級ワインも普通に置かれるようになった。それは客層が変わったのでなく、この実践をきっかけに、地域にワインファンが増えたことによる。「価値を伝える」とは単にその商品が売れるだけでなく、その商品を持続的に購入する「顧客を創る」ことにもなる。今回の例のように、それがずっと売れなかったものでも、だ。商売とは常に「価値を伝える」ことで成り立っていくのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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