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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
POPのメッセージで売上は変わる
今回は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、リユース&リサイクルショップからのご報告を紹介しよう。報告をくださったのは同店の店長。お客さんに発信するたった一言がその商品に対する購買行動を変えるという好例だ。
商品はベッド。同店では多くの家具も扱っているが、ことベッドに関しては「直接肌に触れる商品はどうも…」と敬遠されることが多く、この抵抗感をどう取り除くかが課題だ。そんななか、接客時に効果があったキラーワードをPOP(店頭販促物)に書いて貼ったら大きな成果が出たとのことでご報告をいただいた。
売り場に貼ったPOPは4枚。まず1枚目に「中古のベッドに抵抗感があるお客様へ」とあり、2枚目、3枚目は「どんな高級旅館も」「どんな高級ホテルも」。そして4枚目にはこう続く。「お客様がお帰りになったらベッドまでは入れ替えません。シーツを変えれば気持ちよく寝れますよね リサイクル品も同じかと」。
これを読んで私も「たしかに!」と思わず声が出たが、まさにお客さんも同じで、このPOPを貼って以降、ベッドの売上は2倍になった。「買う」に至るまでの2つのハードル
ここでのポイントは「抵抗感をなくす」ことだ。昨年刊行した拙著『「価格上昇」時代のマーケティング』で“2つのハードル理論”を論じたが、それは、「人には、実際に『買う』と行動するまでに2つのハードルがある」というものだ。「買いたいか・買いたくないか」が1つ目で、2つ目は「買えるか・買えないか」。この2つを越えてはじめてお客さんは「買う」となり、売り手にとっては、そこではじめて「売上」となる、という理論だが、2つ目のハードルは、実は意外と気づきにくいもの。今回のベッドに関する抵抗感も、この2つ目のハードルに該当する。「いいベッドだな。値段も妥当だな」と、つまり「買いたい」となっても、この抵抗感によって「でも…」となり、「買う」には至らない。ならばそれを取り除くことで売上は伸ばせるのだが、この「2つ目のハードル」は意識しておかないと気づけない。結果、「ベッドは中古品で売るには難しい商品だね」などという、一見もっともらしい理由で売り手側が納得してしまうものなのである。
その点、今回の例は秀逸だ。たった一言で「たしかに!」となり、抵抗感は霧散し、「買う」となる。この「2つ目のハードル」に気づくこと。そして、たった一言でもそれを覆せることを知ること。それらもまた、「売るためのコツ」なのである。〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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