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【小阪裕司コラム】第24回:「名入れマスター」安心を売る

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

商人はお客さんの「師」、お客さんは「弟子」

 私がかねてより――古くは、2001年刊行の著書『失われた「売り上げ」を探せ!』の頃から――ずっと提唱してきているビジネスコンセプトのひとつに“マスタービジネス”というものがある。これは、簡単に言えば、商人はお客さんの「師」、お客さんは「弟子」である、という考え方。商人は自分の商売の分野においてお客さんよりずっと詳しいし、一方でお客さんは自分の知るべきことを知らず苦労していたり、もっと楽しい世界があるのを知らないまま過ごしているので、それを解決してあげよう、といった意味が含まれたものだ。私は以前から、特に中小企業や個人商店の方々にはマスタービジネスこそが道だと説いてきた。
 しかしこの話をすると、当の商人のみなさんは意外と、「“マスター”と言えるほどの領域には達していません」とか、「どのレベルまで高めれば、そう言えるようになるのでしょうか?」とおっしゃる。そこで、今回はこういうお話をしたい。

ひとつのアイディアでお客さんの行動が激変!

 ある地方の文具店でのお話。そこでは毎年春の入学シーズンになると、小学校入学用品を準備する親御さんたちで賑わう。学校側は準備物を事細かに説明はしないので、何が必要か、名入れはどうやるのかなど、毎年お客さんから質問を受ける。また、鉛筆には名入れができたり、同店では名前シールの注文もできるのだが、知らない方が多く、入学準備の中でも特に名入れは大変なため、入学式当日には徹夜で目の下にくまが…などということも珍しくないそうだ。
 そこで同店はある年から、「小学校入学用品チェック表」なるものをオリジナルで作成。その数多い準備物それぞれに、どのように名入れができるか、そのためのツールやサービスを列記。SNSでは、それら名入れツールをまとめて写真を撮り、「名入れツール見本」として発信した。
 するとその年からお客さんの行動が激変。自分でチェック表を見て、名前シールの申込書を書き込んでレジに持ってくる方が続出。それまで、場合によっては1人のお客さんに1時間くらい付きっきりになっていた接客状況も緩和された。そして何よりお客さんが、それまでは「どうしたらいいの?」と不安な質問が多かったのが、「なるほどね~!」という安心の声に変わり、会話も前向きな話で弾み、入学後の勉強サポート商品のご案内にまで話が進むようになったとのこと。

多くの商人がすでに「マスター」

 これぞ“マスター”である。彼女らに名前を付けるとすれば「入学準備マスター」「名入れマスター」とでも言おうか。このような例を通じて考えると、多くの商人がすでにマスターであることに気づける。気づけばそこからマスタービジネスが始まるのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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