更新日:

飲食店にも迫る「脱プラスチック」の波!導入事例や取り入れ方とは?

飲食店にも迫る「脱プラスチック」の波!導入事例や取り入れ方とは?

安くて丈夫で長持ちする特性から、さまざまな製品や場面で使用されているプラスチック。世界では毎年3億トン以上のプラスチック製品が生産されており、私たちの生活に欠かせない存在となっています。

その一方で、近年プラスチックは自然環境や生態系に悪影響をもたらすものとして問題視され、世界中で脱プラスチックを目指す動きが加速しています。
この記事では、脱プラスチックが求められる理由を解説するとともに、飲食店が脱プラスチックに向けてできる取り組みについて、導入事例を交えて紹介します。

脱プラスチックは世界的な課題に

プラスチックが問題視される理由

安くて使い勝手が良いことから、世界中で重宝されているプラスチック。しかし、その原料は限りある石油資源であり、プラスチック製品を使い続けることは資源の枯渇につながります。
また、プラスチックは容易に自然分解されるものではないため、処理されない限り数百年以上地球に残り続けるゴミに。焼却処理を行うにしても、プラスチックが燃やされる際に温室効果ガスが発生し、地球温暖化の原因になっています。

深刻化する海洋汚染問題

さらに、昨今深刻な課題となっているのがプラスチックによる海洋汚染問題です。ポイ捨てなどの不適切な廃棄によって海に流出するプラスチックゴミは、世界全体で年間800万トンを超えると推計されています。
海には既に1億5,000万トンものプラスチックゴミが溜まっているといわれ、2050年には海洋中のプラスチック量が魚の量を上回るとの予測もあります。

海に溜まったプラスチックゴミは、ただ海洋を汚染するだけではなく、海洋生物や人間にも悪影響を与えます。例えば、海に浮遊するプラスチックゴミを食べ物と勘違いして飲み込んだカメやアザラシ、鳥などがケガをしたり、命を落としたりする事例が多々発生しています。

また、海に流れ込んだプラスチックゴミの一部は、波や紫外線の影響を受けて徐々に小さな粒子となり、海中や海底に浮遊することになります。5mm以下の粒子になった「マイクロプラスチック」は海洋生物の体内に取り込まれ、それを食べる人間の体内にも蓄積されていく可能性があるのです。

こうした理由から脱プラスチックを目指す動きは年々活発に。世界中でさまざまな取り組みが行われており、SDGs(持続可能な開発目標)のゴールの一つにもなっています。

飲食店にも大きく関わる法律が施行

そんな中、飲食業界にも大きく関わる「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が2022年4月から施行。飲食店にも脱プラスチックの波が押し寄せています。

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」とは?

プラスチックの製品設計から製造、廃棄物の処理までの各プロセスに関係する事業者、消費者、自治体が連携し、プラスチックの資源循環を実現するための法律です。「プラスチック資源循環促進法」「プラ循環法」「プラ新法」とも呼ばれています。
プラスチック製品を販売・提供する事業者においては「特定プラスチック使用製品」の使用量を減らす工夫や取り組みが求められ、飲食店もその対象事業者にあたります。
特定プラスチック使用製品の対象となるのは、消費者に無償で提供される以下12品目のカトラリーやアメニティ等の使い捨てプラスチック製品です。

①フォーク
②スプーン
③テーブルナイフ
④マドラー
⑤飲料用ストロー
⑥ヘアブラシ
⑦くし
⑧かみそり
⑨シャワーキャップ
⑩歯ブラシ
⑪衣類用ハンガー
⑫衣類用カバー

前年度提供した特定プラスチック使用製品量が5トンを超える事業者には、上記12品目の廃棄物排出抑制を目指すことが義務化されています。取り組みが著しく不十分な場合には、勧告・公表・命令・罰則を受ける可能性があります。

飲食店に求められる取り組み内容は?

飲食店においては、プラスチック製のフォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストローの提供方法を見直すことが求められます。具体的な施策として、以下が挙げられます。

・お客様に必要・不要の意思確認を行う
・不要としたお客様にポイントを還元する
・お客様に有料で提供する
・再生可能素材などを原料とする代替製品に切り替える など。

飲食業界における脱プラスチックの事例

スターバックス コーヒー

従来提供してきたプラスチック製カップ、フタ、ストローの提供・廃棄量を削減すべく、2020年11月からホット・アイス兼用の新たな紙カップとストロー不要のフタを導入。2022年4月からは113店舗で、店内利用時に限りフラペチーノを含むアイスドリンクのフタ無し提供を開始しました。
フォークやナイフなどのカトラリーについては、店内利用時にはリユース可能なステンレス製カトラリーを、テイクアウト時には100%植物由来のカトラリーを全国の店舗で提供しています。

2021年11月からは、繰り返し使えるタンブラーを「借りて・返して・再利用する」循環型プログラム実証実験を開始。2022年5月現在、東京・丸の内エリアの10店舗、渋谷エリアの9店舗で実施しています。
テイクアウトで利用する消費者にフタ付きのステンレス製タンブラーを貸し出すサービスで、タンブラーの返却期限は3日以内。手ぶらで来店し、飲んだ後洗わずにそのまま返却できることから、タンブラーを自宅から持ち運んだり、洗ったりするのが面倒という消費者に支持されています。
さらにコンビニチェーンのローソンでも、2022年4月からコーヒータンブラーを貸し出す同様の実証実験をスタート。2022年5月現在、東京都内(丸の内・渋谷)の14店舗で実施しています。ローソンで借りたタンブラーをスターバックスコーヒーの店舗で返却するなど、実証実験の参加店舗であればどこでも利用・返却が可能です。

すかいらーくグループ

ガストやバーミヤンなどのファミリーレストランを展開するすかいらーくグループでは、2018年8月からドリンクバーなどに常備されていたプラスチック製ストローの提供を廃止しました。現在では、ストローを必要とされるお客様にトウモロコシを原料とする生分解性のストローが提供されています。
2019年12月からは、テイクアウト用のレジ袋をバイオマスプラスチック製に変更。2022年1月からは、テイクアウトやデリバリー用カトラリーについて、プラスチック製から木製に変更しています。

日本マクドナルド

2022年2月より、神奈川県内の30店舗で実験的に「FSC認証紙」を使用した紙ストロー、木製カトラリーを導入しています。今後消費者の反応を見ながら対象店舗を拡大し、全国的な導入も検討する方針です。
2020年に日本マクドナルド店舗で廃棄されたプラスチック量は約5,700トン。全国の店舗で紙ストロー、木製カトラリーを導入した場合、プラスチック使用量を年間900トン削減できると予測されています。

飲食店でも取り入れられる、脱プラ商品が続々登場!

紙製・木製食器

プラスチックの代替品として取り入れやすいのが紙製・木製の食器です。紙や木も環境に悪いのでは?と思われがちですが、以下の点からプラスチックよりも環境負荷が少ないとされています。

紙や木は自然分解される
プラスチック製品と違って自然分解されるため、ポイ捨てされることがあっても、最終的に土の中の有機物に戻ります。

木は循環型資源である
木は石油とは違い、持続可能な循環型資源です。木を伐採して消費しても、同時に苗木を植えて育てることで、持続的に資源を生産し続けることができるからです。木は二酸化炭素を吸収し、さまざまな生物を守る役割も果たすことから、積極的に利用したい素材といえます。
一方で、伐採許可量や許可区域を超えた伐採、所有権・伐採権のない森林の伐採といった「違法伐採」が世界中で問題となっています。木は循環型資源であるものの、適切に管理されなければ森林破壊が発生し、森のサイクルが崩れてしまいます。
紙製・木製の食器を導入する際には、「FSC認証材」などの適切に管理された木材を原料としていることが証明されている商品を選ぶことが大切です。

バイオマスプラスチック食器

バイオマスプラスチックは、トウモロコシやサトウキビなどの再生可能な植物由来素材を原料として作られています。トウモロコシやサトウキビの食べられない部分を有効活用するため、食糧供給には影響がなく、種が存在する限りは何度でも育てることが可能です。紙製の食器と比べて耐水性や強度に優れていることもメリットといえます。

食べられる食器

クッキー生地で作られたスプーンやストロー、えびせんべいで作られたお皿など、小さな子どもも楽しく食べられる食器が登場しています。

食べられるスプーン「PACOON(パクーン)」
国産の野菜パウダーを練り込んだスプーン型のクッキーで、味は「おから」「かぼちゃ」「井草」「抹茶」「ビーツ」の5種類。スープやアイスクリームなどを食べてもやわらかくならず、最後はスプーンをポリポリと食べて楽しめます。

食べられるストロー「コロネクッキー」
大手菓子メーカーのブルボンが業務用として全国販売している、クッキーで作られたストローです。ジュースやシェイク、スムージーなどのアイスドリンク専用で、長さは20cm、直径は12〜13mm(内径は8~9mm)。食用油脂コーティングをすることで、20分程度は耐水可能となっています。

食べられる食器のメリットは、脱プラスチックにつながる上に、ゴミ自体の排出量を減らせること。食器を洗う必要がないため、水や洗剤の使用量が減り、水質汚染も防げます。さらに、食べられる食器というエンターテインメント性によって、話題性や集客効果も期待できます。

マイ食器を歓迎する手も

マイスプーン、マイ箸、マイストロー、マイボトルといったマイ食器の普及が進み、最近ではシリコン製の折り畳んで持ち運べるものも登場しています。マイ食器を持参したお客様へ割引サービスを提供するなど、マイ食器を歓迎する施策を始めるのも良いでしょう。

脱プラ商品を取り入れる際の注意点

コスト面の負担は大きい

今回ご紹介したプラスチックの代替商品は、プラスチック製品と比べて価格が圧倒的に高いのが現状です。紙製・木製食器やバイオマスプラスチック食器の価格は、プラスチック食器の5〜10倍ともいわれ、コスト面での負担が大きいことを理解しておきましょう。
さらに、紙食器は長時間使用するとふやけてしまったり、食べられる食器では溶けたり割れたりするリスクも。その結果、お客様に新しい食器を提供することでさらにコストが膨らむ可能性もあります。

有料提供時には告知を徹底する

脱プラスチックを目指す動きは高まっているものの、プラスチック製品の有料提供が推奨されていることを知らない消費者も多いのが現状です。
ストローやカトラリーを有料提供する場合には、ポスターやPOPによる告知、メニュー表への記載などを徹底し、トラブルを防ぐ工夫も必要です。

脱プラ商品を取り入れて、環境に優しい飲食店づくりを

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の施行も相まって、脱プラスチックに向けた取り組みは飲食店にとっても急務となっています。
コスト面の課題など、個人経営の飲食店には厳しい点もあるかもしれませんが、まずは一種類、脱プラ商品を取り入れてみることから始めてみませんか?脱プラスチックに向けた取り組みを率先して実施することは、お客様の共感を得る店づくりにもつながりますので、ぜひ検討してみてください。

ライター:上田はるか(フリーライター)

大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

canaeruは年間300件以上の開業サポート実績!

メールアドレスの登録で
開業までのサポート完全無料で受けられます!

個人情報の取り扱いについて

メールアドレスを入力してください

無料会員登録でできること
① 「日本政策金融公庫」の創業融資をはじめとする資金調達の相談が出来る!
② 開業時に必要な事業計画書の作成サポートが受けられる!
③ 店舗開業や運営に関するさまざまな疑問点・お悩みを何度でも相談可能!
※ 金融機関出身者、元飲食店オーナーら店舗開業のプロが対応します

PAGETOPへ