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10年越しに完成した、名物『よだれ鷄』徹底した味へのこだわりが人気の秘訣
料理のすべての工程に徹底的にこだわる。その想いはお客さんの満足につながる
- 山口 祐介/JASMINE 和心漢菜
7年前に創業した広尾店が高い評判を得て、着実に店舗を拡大。現在都内に4店舗を構えるまでに成長した人気中華料理店「JASMINE」。10年かけて生み出された“よだれ鷄”の開発ストーリーなど、味への徹底的なこだわりや集客の秘訣をお聞きしました。
来ていただいたお客さんを必ず満足させること。美味しさに徹底的にこだわった
ーー話題のGINZA SIXにも出店している「JASMINE」は、食べログでも高評価の人気店です。遡ると、7年前に広尾店をオープンさせたことからスタートしたそうですが、当初はどのようなコンセプトを持たれていましたか?
コンセプトは特になかったんですよ。10代、20代と修業してきて、いつかは自分の店をやりたいなと願ってきたことを実行しただけで。商売のことを考えたこともなかったし、料理人としての想いだけでスタートさせました。ただ、オープンした日の翌日に東日本大震災が起きたんです。世の中の空気が自粛ムードに変わり、いきなり開店休業状態になりました。お客さんは毎日1組か2組。暇な厨房でスタッフたちと繰り返し話したのは、いま来ていただいたお客さんを必ず満足させること。「いいお店だったね」と思ってもらえるものを提供しようということでした。じつは、当初はエビチリとか酢豚みたいなベタな中華はちょっとやりたくないなっていう若さゆえのとんがった気持ちがあったんですけど、そこで意識がガラリと変わりました。チャーハンでもかに玉でも何を頼まれても、他の店より美味しいねと思ってもらうことが大切だとマインドセットできたと思います。ーー震災を経て、「お客さまの満足を徹底的に追求する」というのが広尾店のコンセプトになったわけですね。
そうですね、震災に気づかせてもらったのかもしれません。広尾店の食べログを見ると「コスパがいい」ってコメントが並んでいるんですが、お値段以上の価値を出すことはかなり意識した部分です。うちの料理は、例えば酢豚なら1800円くらい。それってすごく安くはないかもしれない。でも、衣の厚さ、油の温度、揚げるタイミングなど、一つ一つの工程にどれだけこだわるかによって料理のクオリティは変わるんですよね。特別高いものも使えないし、特別高級な皿も使えない。その分こだわり抜いた料理の味で差をつけようと思いました。ーー波乱万丈な広尾店オープンから始まり、現在は4店舗まで広がっています。どのように大きくなっていきましたか?
震災の自粛ムードが少し和らいできたGW過ぎあたりに、お店の近所に住んでいた、雑誌『Hanako』のライターさんがJASMINEの味を気に入ってくれて、お店を取り上げてくれたんですよ。そこから変わりましたね。お店が繁盛し出すと、いろんなお話をいただけるようになり、2店目はリーズナブルに食べられる食堂風のJASMINEを日本橋に、3店目の中目黒は趣のある一軒家が気に入って、ずっとやりたかった江南料理を出す店にしました。4店目の銀座店は大きいですし、いままでとはまた違う客層がありますから、新たなチャレンジです。「よだれ鷄」は、お店の賄いで作ってひっそりと完成度を高めていった
ーー人気の理由でもあり、創業当初からのこだわりでもある「味」。いまの味に行き着いた経緯を教えてください。
創業当初から、看板メニューは「よだれ鷄」なんですが、これは僕が20歳のときに初めて中国に行ったときに出会い衝撃を受けた料理なんです。日本にない料理を食べようと思って注文したら、真っ赤なラー油がかかった鶏肉が出てきた。「激辛料理か、これは失敗した」と思って食べてみるとそこまで辛くはない。独特の香りが立っていてすごく美味しかったんです。これは日本でも絶対流行るなと思いました。それから30歳でお店を出すまでの間10年間、当時勤めていたお店の賄いで作ってはみんなの意見をもらったりして、ひっそりと完成度を高めていきました。ーー一番こだわったのはどこですか?
よだれ鷄って四川料理なんですが、僕はもともと広東料理を勉強していた時間が長いんですよ。広東料理は鷄の火入れにすごく気を使うんです。蒸し鶏にしても、身にちょうど火が通るくらい(骨は生)の火入れ加減を求めます。煮過ぎちゃうとしっとりさがなくなってしまうから、そこは追求しました。タレも研究しましたよ。2層構造になっていて、まず鶏肉のうえに醤油と黒酢と砂糖がベースの甘酸っぱいタレがあり、そのうえに真っ赤なラー油のタレがかかっているんですが、この本場で見たのと同じ味と香りを出すのには苦労しました。唐辛子だけでこの色を表現しようとすると辛すぎるし、パプリカの粉を使ってみたり、いろいろと。結局いろんな香辛料のバランスで実現するのですが、それがわかったのはJASMINEを始める直前でした。「辛いものを看板料理に」の秘密とは?
ーーまさに10年かけて完成したんですね。「日本で流行りそう」という予感は的中しました。
じつはもうひとつエピソードがあって、歌舞伎町に「川香苑」という四川料理屋さんがあって、修業時代は店が終わったあとよく食べに行っていたんですね。そこの上海出身の奥さんに「あなたも商売をやるときは絶対に辛いものを看板料理にしなさい」と言われたんですよ。当時は広東料理をやっていて、塩味のさっぱりとした炒め物などにも自信があったのですが、そういう料理はその場でどんなに美味しいと思ってもらえたとしても、1カ月後にいきなり「もう一度あれが食べたい!」とはならないからねと。その頃はもうよだれ鷄を看板メニューにしようと思っていたので、その言葉に背中を押されました。だから新しくお店を作る人は、看板メニューに何か味に特徴のあるものを置いたほうがいいと思います。辛くても、甘くても、苦くても何でもいいんですが、ただ美味しいものだと、世の中美味しいものだらけなので思い出してもらえないんですよね。勉強無くして商売は成り立たない
ーーほかに、集客のコツはありますか?
気持ちを込めて美味しい料理を作ること、それを徹底することだと思います。ただ、もうひとつ上げるならば、自分が身を置いている世界のことを勉強することでしょうか。僕だったら、料理業界でいま何が流行っているのか、どんな人が発信力を持っているのかなど知るために、アンテナを張って情報を集めておきます。例えば予約の名前を見て、「あれ? 中国料理のコラムを書いている人だな」と気づいてご挨拶することができれば、またそこから次が始まったりする。料理人はつい自分の世界に浸ってしまいがちなので、そこを意識して開いていけば、商売はもっと上手く行きやすくなると思います。山口 祐介
1980年生まれ、東京都出身。中学1年生のときに横浜中華街で食べた豚の角煮に感動し中国料理への道を志す。調理師専門学校を卒業後、(都内数件の料理店を経て)グランドハイアット東京の「チャイナルーム」にて8年修業。2011年3月より「中華香彩JASMIN」の総料理長を務め、現在では4店舗を監督する。自らを「中華オタク」と呼び、料理修業の傍ら中国語学校に通い中国語をマスター。中国のホテルや専門店でも研鑽を積んでいる。
JASMINE 和心漢菜http://ginza.jasmine310.com/index.php
東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 6F伝統と創造をテーマに、上海、杭州、四川などの代表的な名菜や、シェフが中国各地で出会った郷土料理の数々を旬の食材や現代の感覚と織り交ぜて表現している。銀座店では、そこに和の感性を加えたJASMINEの新境地を堪能できる。
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