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ラーメン砂漠だった三鷹に開業。カウンター超しにコミュニケーションできるラーメン店
「飽きない味」に必要なのは日々の進歩。ラーメン店をやるなら、相当な覚悟を持つべし
- 櫻井 祐太/麺屋 さくら井(めんや さくらい)
東京・武蔵野市西久保。閑静な住宅街の裏通りの一角に、2016年11月に誕生した「麺屋さくら井」。車もほとんど通らないような場所で、宣伝もなしにひっそり開業したこのお店は、今や毎日行列が絶えない大人気ラーメン店となっている。飲食営業に不向きとされるような立地でこれほどの人気を集めている理由はどこにあるのだろうか。店主の櫻井祐太氏にその理由をうかがった。
ラーメン店開業ノウハウはコチラ
>>ラーメン店を始める前に知っておきたい4つのポイント年間500杯を食すラーメンオタクからラーメン店オーナーへ
ーー櫻井さんがラーメン店主を目指したきっかけは何ですか?
大学生の時にすごくラーメンが好きになって、食べ歩くようになったんです。年間500杯ぐらい食べていました。いわゆる「ラヲタ」(ラーメンオタク)です(笑)。その中で「ほん田」のラーメンがとくに美味しく、(店主の)本田さんの接客も素晴らしくて、惹かれていったんですね。そんな時に、東京駅に新しいお店を出すということを知り、最初は軽い気持ちで、アルバイトとして入ったんです。
アルバイトをしているうちにすごく楽しくなってきて、社員の人たちのラーメンに対する情熱も聞いて、「自分もラーメンの世界に進めればいいな」と思い始めました。大学を卒業して、そのまま社員として「ほん田」に就職しました。三鷹はラーメン店が少ない。地の利を生かした物件選びが成功
ーー三鷹の地を選んだのはなぜでしょうか?
武蔵野市の関前というところの出身で、店から自転車で5分くらいの場所に実家があるんですよ。だから「地元」っていう点が大きいです。三鷹ってなぜか、人口に対してラーメン店が少なくて、ラーメン砂漠みたいな状態だったんですね。だから「絶対に三鷹でやってやろう」という思いはありました。「ほん田」で働いていた時から、1年半ぐらいずっと物件を探していましたね。
あと、地元に店を出すのって、「カッコいい」じゃないですか。昔からの友達もいっぱいいるので、友達にも来てもらえたらいいなっていうのもありました。
※編注:店舗所在地は武蔵野市だが、最寄りは中央線三鷹駅なので三鷹エリアと言われることが多いーー地元にお店を出してよかった点は何ですか?
お客さんと話をした時に地元の話で盛り上がれます。そういうのはやっぱり楽しいですね。もちろん、友達もいっぱい来てくれますし。
物件探しもしやすかったですね。この店は住宅地の真ん中で、正直、そんなにいい場所じゃないです。三鷹以外の人がこの場所を見たら、絶対に選ばない物件だと思います。でも、僕は地元なので何となく「けっこう人は通る道だし、ここならいける」と直感的に思ったんです。そういう土地勘は働きましたね。いきなりの開業は危険?ラーメン店で修業することの重要性とは?
ーー開店までに一番苦労した点は何でしたか?
「味作り」が一番大変でした。「ほん田」にいる時から試作はしていて、「こんな感じでいこう」っていうスープはできていたんですよ。でもいざ店ができて、この厨房で試作をしてみると、全然違うものができてしまって。環境が違うと勝手も変わるので、安定した味を作ることが、一番苦労しました。
今も毎日毎日、(味のブレが)不安で、味見をしないと気が済まないですね。自分の店だと自分で全部責任を持たなきゃいけないので、ちょっとした違いでも気になります。ーー開店後に苦労した点、想像と違っていた点はありましたか?
想像以上に最初からお客さんが来たことですね(笑)。何も宣伝はせず、店の前にクーポンを置いたくらいでしたが、最初から、想像の3倍くらいのお客さんが来てくれました。アルバイトも雇わず、自分ひとりだけで回したので、めちゃくちゃ大変でしたけど(笑)。
それからは駆け抜けすぎて、何が大変だったのかも分からないですが、毎日毎日改良を繰り返しているので、味はオープン当初とだいぶ違ってきていると思います。もちろん美味しい方に。「味を安定させたい」という思いよりも、「まだ納得できない」という思いの方が強いですね。ーー想定していた客層と、今の客層に齟齬(そご)はありますか?
もともと、この店は地元のお客さんに来てもらいたいと思って作った店で、毎日食べてほしいくらいだと思っています。今は地元のお客さんがほとんどで、想像通りですね。もちろん、週末になれば「ラヲタ」みたいな皆さんも来ますが、昼間は地元のリピーターの方がほとんどです。ーー修行をしておいて良かったと思うことは何ですか?
やっぱり、ラーメン店で働いておかないと(店の)回し方がわからないので、そこは良かったですね。仕込みの量や時間のかけ方、仕事の分担なんかは特にそうです。今は僕がラーメンを作って、洗い物は全部アルバイトの子に任せていますが、こういう感覚は経験しないと分からないと思います。僕は今でもラーメンを作るのにめちゃくちゃ集中していますが、そうするには、ちゃんと分業するということも必要だと思います。
経験があればとにかく気持ちに余裕が持てるので、その余裕でお客さんと話をできたり、もっといい店にするために気を回せたりします。カウンターにこだわり。人気ラーメン店が教える、内装の秘密
ーーラーメン作り、店舗作りのポリシーについて教えてください。
味に関しては、「飽きずに毎日食べてもらえるようなラーメン」というコンセプトでやっています。でも、「飽きない」ってけっこう難しいと思うんです。ずっとまったく同じ味だったら、やっぱり、飽きちゃうんですよ。だから気づかないくらいに毎日ちょっとずつ変わっていく、ということを大事にしています。日々、進歩する味ですね。
店の雰囲気という面では、カウンター越しにお客さんと目線を合わせられるような造りにしています。具体的に言えば、二段カウンターではない、広くてフラットなカウンターです。お客さんとの距離が近い感じもするし、話しかけやすい。それに、ひとりでやっている時に、フラットだと片付けも楽なんですよね。ーー最後に、これからラーメン店を開きたいという方に向けてメッセージをお願いします。
僕はひとつのお店でしか働いていませんでしたが、いろんなお店で働いてみるのもいいと思います。いろんなやり方を知っていれば、その中から自分に一番合ったやり方を選んで、自分だけのスタイルの店を作れますから。僕みたいにひとつのお店だけで修行すると、いざ自分の店になった時に、どうしても前に働いていた店のやり方になっちゃうんです。
あとはやっぱり、この業界は相当な「覚悟」が必要ということです。想像以上に大変な業界なので、軽い気持ちで始めるのであればやめたほうがいいです。ラーメンが相当好きじゃないと続かないと思います。自分には、天職だと思っていますけど(笑)。ラーメン開業ノウハウを知る!
櫻井 祐太
東京都武蔵野市関前出身。大学在学中にラーメンの食べ歩きを始め、年間に500杯を数えることも。その中で当時新進気鋭の店として話題になっていた「麺処ほん田」(東十条)を訪ね、味と店主の人柄に惚れて何度も通い、のちにアルバイトとして働き始める。最初の勤務地は東京駅構内の「東京ラーメンストリート」内の店舗。大学卒業後は「ほん田」で社員として勤務し、在籍5年の間に「夏海」などの支店長も務めた。2016年11月に独立し、地元に「麺屋さくら井」を出店した。
麺屋 さくら井(めんや さくらい)http://www.io-sacra.com/MenyaSakurai.html
東京都武蔵野市西久保2-15-27JR中央線三鷹駅北口から徒歩12分、バス通りに並行して南北に通る裏通り「城山通り」沿いにひっそりと佇むラーメン専門店。基本メニューは醤油味、塩味の澄んだスープのラーメンで、数量限定で煮干しが効いたスープのラーメンも出す。週末を中心に長い行列ができる人気店だが、鮮度を重視し、スープが切れた時点で営業を終了するというスタイルを貫いている。
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