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わずか5坪の店舗で1日に800個を売り切ったドーナッツ店。HIGUMA Doughnutsオーナーが語るドーナッツの可能性。

店を続けていくことの大変さに比べると、店を始めるなんてゼロに等しい

  • 春日井 順/HIGUMA Doughnuts(ヒグマ ドーナッツ)

わずか5坪の店舗で1日に800個を売り切ったドーナッツ店。HIGUMA Doughnutsオーナーが語るドーナッツの可能性。_記事画像

デザイン・ブランディングを主とするsolla株式会社を経営する傍ら、ドーナッツ店を開業してしまったという、「HIGUMA Doughnuts」春日井オーナーにインタビュー。開業に至った理由とは何なのでしょうか。そして、目指す店舗の理想形とは?

ファーマーズマーケットから出発した1日に800個売る人気ドーナッツ店への道とは?

ーー春日井さんがオーナーを務める「ヒグマドーナッツ」ですが、オープンからしばらくは行列が絶えなかったそうですね。
もともと野外フェスや青山ファーマーズマーケット(※渋谷区の国連大学前で毎週土日開催)に長らく出店していたのですが、ありがたいことに僕らの作ったドーナッツにファンの方が付いてくれて、オープンは口コミで広まったようです。とくにファーマーズマーケットのお客様って食に敏感で、アンテナを張っている方が多いんですよ。開業からまもなくは10時に開店しても15時には売り切れ。そこから店を閉めて終電まで仕込んでまた翌朝店を開けて、仕込みのために週1で徹夜して……という状態がしばらくきました。5坪の広さしかない店ですが、最高で1日に800個売れたこともあります。

ファーマーズマーケットから出発した1日に800個売る人気ドーナッツ店への道とは?

ドーナッツを揚げながらデザインチェック!?ヒグマドーナッツは新しい部署ができたイメージ

ーードーナッツは規模が縮小したとはいえ、大手コンビニも参入する中で、それはすごい。個人で立ち向かうには厳しいマーケットではないですか。
この周辺にもドーナッツを売るコンビニはありますし、価格だけでみると他店の方が安いです。ただ、店を始めて感じたのは、お金を余分に払ってでも、安心・安全で美味しいものを食べたいという層は一定数いるということです。そもそも僕が生まれ育った北海道の食材を使ったビジネスをやりたいと立ち上げたのが「ヒグマドーナッツ」。小麦粉やバター、牛乳などは北海道産を使用し、店頭で作って揚げている。産地がはっきりしていて、作り手の顔が見える安心感はあると思います。そのような意味でもチェーン店と、うちではターゲットが違いますね。

ーー最初はイベント出店だけだったのが、実店舗を持たれたのはなぜでしょう。
ファーマーズマーケットは月1ペースで2年ほど出店していたのですが、完売することも多くて「お店を出したら?」という声が上がるようになったんです。僕はデザインや広告を手掛ける会社をやっているのですが、その片手間で仕込んだドーナッツを売っていたんですよ。趣味の延長で美味しいねと言われて満足するだけか、それとも店という形で今後に繋げるのか……。悩んだ末、このまま手弁当でやっていても発展性はないと思い、気持ちを切り替えて店を出すことにしたんです。「ヒグマドーナッツ」は会社の新しい部署として、飲食部門を立ち上げたという感じですね。オープンから2ヵ月間は行列が途切れなかったので会社に行けず、ドーナッツを揚げながら横にパソコンを置いてデザインチェックしていたことも(笑)。今は任せられるスタッフもいるので落ち着いて仕事ができるようになりました。

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マカロンではできない。“ドーナッツ”の持つ可能性とは?

ーー春日井さんのお話を伺っていると、北海道の食材を使ってビジネスを、という願いが実現して、開業に至るまで実に順調に進められてきたのだなと感じました。
店を出したことで夢を叶えたという感覚はありません。どんな店にするのかビジョンを決めて細部を詰めていくのは大変だけど、楽しいですよね。でもそれって、ちょっとした熱意とちょっとしたお金があれば誰でもできることなんです。大切なのはお客様と毎日向き合い、買っていただき、また来ようと思ってもらえる店にすること。それって延々と続くんですよ。僕らもまだオープンして半年ちょっとしか経っていませんが、その続けていくことの大変さを比べると、始めるなんてゼロに等しいんです。

東京には美味しいお店がめちゃくちゃあるし、10年生き残っている飲食店なんて1割も満たないかもしれない。夢を持って開業しても、短いスパンでなくなることはザラにある。僕らはこの調子で続けていけば大丈夫……とは全く思っていません。食中毒が起きればアウトだし、売り上げは気候に左右されることだってある。ドーナッツは生活に必要ないからこそ、買い続けてもらうことって大変なんです。

ーー続けることの難しさを実体験として学ばれた今、「ヒグマドーナッツ」はどのような店にしていきたいとお考えですか。
自分が好きなお店って美味いのは最低限、当たり前で。名物おばちゃんがいて、そんなおばちゃんが好きで集まっている客同士のコミュニケーションが楽しいからなんですよね。でもそれって店をやる上で実はすごく重要なこと。僕らがいるから店に来たくなる、ドーナッツが買いたくなるってお客様に思っていただけることはとても大切なんです。

「ヒグマドーナッツ」は街のハブみたいな存在になれたら、という想いがあるんです。ご近所さん同士のコミュニケーションが生まれる場にしたいんですよね。コーヒーとドーナッツならそういう媒体になれる可能性を持ったツールになり得るのかなと。これがマカロンだったら違うかな(笑)。つくづく感じるのは、ドーナッツって老若男女問わず好きだし、垣根がない食べ物なんですよね。

春日井 順

春日井 順

1979年、北海道室蘭市生まれ。HIGUMA Doughnuts店主。solla株式会社代表。バンクーバーアイランド大学MBA修了。2006年、デザイン・ブランディングを主とするsolla株式会社設立。2014年より、北海道の素材にこだわったハンドメイドのドーナッツを作りフェス等に出店。青山ファーマーズマーケット等で話題を呼び、2016年6月に実店舗「HIGUMA Doughnuts」をオープンさせる。

HIGUMA Doughnuts(ヒグマ ドーナッツ)

HIGUMA Doughnuts(ヒグマ ドーナッツ)https://www.higuma.co/
東京都目黒区鷹番2-8-21

保存料や添加物は一切使用せず、トランス脂肪酸フリーのパーム油100%のオイルを使用。“はるゆたか”を中心に北海道の小麦を特別にブレンドした小麦粉や、牛乳、バター、砂糖など、北海道の素材を厳選してひとつひとつ手作りするドーナッツ店。

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