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まるで実験室のような店内、さらに塩の容器は試験管!? 塩の研究に明け暮れた理系女子の塩専門店開業「salt&deli solco」

儲けを出すことが目的じゃない。私がやりたいのは“塩の情報発信基地”をつくることだった

  • 田中 園子/salt&deli solco

まるで実験室のような店内、さらに塩の容器は試験管!? 塩の研究に明け暮れた理系女子の塩専門店開業「salt&deli solco」_記事画像

魅力を広め、伝える“塩の情報発信基地”として、店を作ったというシニアソルトコーディネーターの資格を持つ田中オーナー。塩の専門店を開いた経緯などについてお聞きしました。

塩専門店のアイデアが止まらない!理系女子、塩の研究をスタート

ーー田中さんがオーナーを務める「solco」のような塩専門店は少ないですが、なぜ塩だけを売るお店をやろうと思ったのでしょうか。
大きな転機は宮城県石巻市で『伊達の旨塩』に出会ったことです。口にした瞬間、思わず「うまっ!」って大きな声で叫んでしまうほど美味しくて。そこから一気に塩にハマり、「そういえば私、塩をたくさんもっていたな」と思い出したんです。元々調味料が好きで、当時、塩だけで20種類ほど持っていたのですが、よく見ると色も形も味も違うし、改めて塩に個性があることに気付いたんですよね。
理系出身なので、塩の成分表示をエクセルにまとめ、マグネシウムなどのミネラルの量を比較し、味の違いを検証してみたんです。マグネシウムが多いと苦いと思いきや、そうでもなかったことに驚き、塩の研究をスタート。朝から晩まで塩を調べる中で知った日本ソルトコーディネーター協会の資格を取得して、塩のビジネスをしようと思い立ったんです。じゃあ、具体的に何をやるのか。試しに書き出してみたんです。講師、料理教室、ワークショップ、ネットショップ、専門店―。すると、「専門店」の項目だけアイデアが止まらなくて、これはもう塩のお店をやれということだなと思いましたね。

塩専門店のアイデアが止まらない!理系女子、塩の研究をスタート

ーーお店は戸越銀座商店街(東京・品川区)の一角ですが、縁のある土地だったのでしょうか?
戸越銀座には長く住んでいて、商店街の特性を熟知していたんです。地元住民の買い物スポットですし、でき立ての惣菜などを食べ歩きができるのも人気で、週末は観光客も多い場所。メディアの取材が頻繁にあるのも知っていたので、これは広告の必要がないなと。実際にお店を出してからテレビやラジオ、雑誌などに取り上げられることも自然と増えて、これまでの広告費はゼロ。私の大好きな街でもあるし、商店街を盛り上げるためのひと助けになればと思ったのが、出店したきっかけですね。

まるで実験室のような塩専門店。塩の容器は・・・試験管!?

ーーこの人気商店街でよくぞ物件を見つけられたなと思います。
戸越銀座商店街で塩の専門店をやろうと地図を見ながら歩き廻っていた時、話しかけてくれたのが商店街で当時理事長を務めていた亀井さん。3つに別れて運営されている商店街の広報窓口をひとつにまとめた方で、それでメディアも取材がしやすくなったという背景があるようです。
その後、亀井さんと意気投合し、「塩屋をやりたい!」とプランを聞いてもらったら、「ぜひやって欲しい!」と。そこから物件探しなど開業に至るまで色々とサポートしてくれて、現在の店舗を紹介してくれたんです。たくさんのオファーがあった物件だったそうですが、どれも家主さんの決め手に欠ける内容で、諦めて住居施設にしようとしていたところでした。
商店街、それも建物の1階は路面店になるので飲食店の引き合いが多かったそうですが、匂いや騒音問題があるので、家主さんによっては敬遠されることもあり、貸したくても貸せないというケースがあるようです。私の店は幸いそうした心配もないので、即決してくれました。昔ながらの店がなくなり、マンションになることが増えている中で、商店街の灯を消したくないという想いも亀井さん、家主さんはお持ちでした。

ーー「solco」の店内はまるで実験室みたいですね。販売している塩も試験管のような容器に入っているし、理系出身の田中さんらしい店づくりです(笑)
少量でも何種類か持っていればメニューによって塩を使い分けられると伝えたくて。それにキッチンが狭くてもスリムボトルならたくさん置けるし、それぞれのパッケージで売るのではなく、容器を揃えると中に入れた塩の個性が際立つと考えました。それには大学時代に使っていた試験管だ!と思いつき、試行錯誤しながら実際の試験管をアレンジして容器を完成させたんです。
陳列棚も塩が生えるように黒にしました。単にしょっぱい粉じゃない。香りも味も、色、食感もすべて違う。塩は五感を使うものなんです。人によって味覚は違います。産まれ育った環境やその日の体調、普段食べているものや汗をかいた量。それによって摂るべき塩の量も異なるし、だからこそ自分が美味しいと思える塩の味をここで発見して欲しいですね。

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塩専門店が目指すのは、塩の情報発信基地。

ーー塩の可能性をさらに広めていくためにも、今後の展開はどのようにお考えですか?
店を始める前に通った起業セミナーでは利益の生み出し方とか上場の仕方などの話を聞いたのですが……私はそれがしたいんじゃないと分かったんです。
「solco」は塩の発信基地にしたいんです。一種のメディアとして、塩を伝えていく場所として。だから他人に任せられないし、店舗を増やすつもりも今はありません。デパートや催事出店のお話もいただくのですが、すべてお断りしています。ここで見つけた塩を他店で買ってくれても構わない。それで塩の生産者の方たちにスポットが当たり、塩も作り手も広まってくれたら私としても嬉しいですね。時々、テレビなどでうちの店を知った生産者の方が訪ねて来てくれるんです。オファーがあっても大量生産できないから大きなお店に卸せない。だけど塩をちゃんと伝えてくれる店に置いて欲しいと。こうした出会いはご縁なので可能な限り採用させていただいています。

ーー田中さんの塩への情熱が起業への原動力になったのでしょうね。
実は店を始める前、“起業ブルー”になったんですよ。お金の工面やオープンしても続けられるのだろうかと少し不安になることもあって。絶対的に安心できるものは何だろうと悩んだ結果、結局は自分自身だったんです。店に来る人は塩を買うのではなくて、私に会いに来てくれる。塩を伝える者として、そのような店づくりにしないといけないと気付いたんです。これで起業ブルーが吹っ飛び、とんとん拍子に上手くいきました。
「私がやるから大丈夫」という自信を持つことは大切です。それに至るまで40年以上かかりました(笑)。40歳前に起業する人も多いけど、私はいつまでに起業しようと決めていなかった。ずっと諦めなかったし、焦りはなかった。準備できて自信を付けて「さあ、お店をやろう」と思えたのが、このタイミングだったということ。道のりは遠かったかもしれないけど、過去、仕事でキツイことがあっても全部乗り越えてきたし、今は何が起きても動じません。物事を始めるには遅いということはありませんよ。

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田中 園子

田中 園子

1972年、横浜生まれ。理系学問を大学で学び、外資系製薬会社の開発職を長らく経験。後に野菜ソムリエ協会にて企画運営に従事し、ロンドンのスローフード協会にて日本食を紹介するイベントを行うなどさまざまな食のプロジェクトに関わる。2013年に塩に開眼し、シニアソルトコーディネーターを取得。2014年、戸越銀座商店街(東京・品川区)に、塩の専門店「salt&deli solco」をオープン。

salt&deli solco

salt&deli solcohttp://www.solco.co/
東京都品川区豊町1丁目3-13 モアビル1F

salt&deli solco
オーナー自ら厳選し、個性的な国内外の塩40種類以上を取り揃える。塩のティスティングも可能で、店内で販売しているおむすびなどのデリには、その場で塩をかけて食べられる。

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