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強い意欲がなければビジネスの継続は難しいもの。お客様のため、社会のため。そして、社会を変えていけなければ淘汰される。現在、人気の飲食店を何店舗も経営されている関さんが、ビジネスを継続させるためのカードとして考えるものは?
カリフォルニアの食文化に触発されて、三宿にFUNGOをオープン
ーー関さんがFUNGOを起業されたのは1995年、28歳の時。最初に手がけたのはサンドイッチ&ハンバーガー専門店の「FUNGO」でした。
この店のルーツは僕が大学時代を過ごしたカリフォルニアにあります。向こうでは毎日のようにサンドイッチを食べていたのですが、帰国してから現地の味が恋しくなってしまって。求めていたのはBLTやパストラミ、クラブサンドにローストビーフといった種類も豊富で、パンの種類を選べたり自分好みにアレンジできるもの。だけど、同じようなものが当時の日本にはほとんどなかった。それともうひとつ、アメリカには当たり前のようにあって日本にはないと思っていたのが、犬と一緒に入れるテラスのあるお店。「犬も連れて行けてテイクアウトもできる。それでいてグルメサンドイッチを楽しめる店を日本で展開しよう!」と思い立ったんです。当時は経営コンサルティング会社で営業をしていたのですが、事業の構想が固まったので2年で会社を辞めて、開店準備に取り掛かりました。ーーFUNGOのような業態は当時の日本ではまだ珍しかったんですよね?だからこそ不安はなかったのでしょうか?
日本にないからこそ、いけるという自信はありました。当初の売り上げ目標は1日20万円を見込んでいたのですが、オープン初日の売り上げは65万円だったんです。ーーそれはすごい!どうやってそんなにお客様を集めることができのですか。
告知の類は何もしてないですね。ただデザイナーさんが模造紙にポスターのようなものを描いてくれて、それを工事中の店の壁に貼っていたことかな。あとは口コミで広まったという感じです。まだ工事も終わってないのに、お客様が入ってきてしまうこともありました。物珍しさと期待感が大きかったのかもしれませんね。「三宿」は駅から遠い…ふらっと立ち寄ってくださるいお客さまが途切れたあとは困難続き。それを乗り切れたものとは?
ーー初日から予想以上の売り上げがあったくらいですから、その後は順風満帆だったのでは?
そんなことはないです。オープニング景気が終わった後、急に暇になってしまったんですよ。開店は12月と寒い時期。それにお店も駅から遠いので、強烈な寒さの日なんて犬を散歩させる人もいません。その頃は犬を同伴してテラス席でお茶をするという文化が浸透していないので、テラスと中をちゃんと区切っていても「お店に犬がいるなんて不衛生だ」、「保健所に訴える」といったクレームもたくさんありました。あとは価格ですね。今でこそ1,000円のハンバーガーやサンドイッチは普通にあるけど、マクドナルドのハンバーガーが100円もしなかった時代です。メニューを見てそのまま帰ってしまう方もいらっしゃいましたね。
環境を取り巻く厳しさもありました。オープンから2年目の97年には消費税が3%から5%に上がったり、2000年に入ってからもITバブル崩壊やリーマンショックといった大きな波はありましたね。ーーそれでも辞めずに、やり続けられたのはなぜでしょう。
僕に体力があったからだと思います。というのも、起業して最初の難関は体力だと思うんです。乗り越えないといけない小さな壁が山ほどあるので、ちょっとしたことでくじけていたらダメだし、それを乗り切るには、どんなに辛くて苦しくて嫌なことがあっても、朝ムクッと起きて、よっしゃ!って頑張れる力が必要なんです。あとは物事を前向きに楽天的に捉えることができるか、ということでしょうか。潰れる会社や店っていうのは、「もう終わりにしよう」という判断があるわけですが、単純にいうと僕はその判断をしなかった。要するに匙を投げるという判断をしなかったということですね。FUNGO1号店のあと多店舗展開するも状況は悪化…独立は、日々100の苦悩にひとつの喜び
ーー事業が厳しい中でも、踏み止まれる体力があったということなんでしょうね。では、独立してよかったなと思うのはどんな瞬間でしたか?
瞬間はないですけど、日々100の苦悩に、ひとつの喜びというのはあります。それも予期せぬ喜びが。例えばFUNGO1号店を出した後、オファーがあって出店続きだったのですが、軌道に乗らず、結局3店舗あったのを、ひとつにまとめたんです。仲間も逃げていくし、借金も膨らんだ。散々な状況でも、一所懸命働くしかなかったんですよね。そんな時に思いがけずにお客様からお礼の手紙をもらったり、チップをいただいたことがありました。このような経験ひとつとっても、よかったというよりも、僕にとってはすべて勉強です。ーー今後、起業・開業を考えている方へアドバイスをお願いします。
今、どうしてもみんなすぐにビジネススキームを言いたがる。でも、成功の方程式なんて実はないんです。「こうすれば儲かる」という考えが先行する人は評論家にでもなった方がいい。逆に言うと、やりたいことの脚本を書ける方が大切なんです。僕は「犬を連れて行けるようなサンドイッチ専門店を作りたい」という具体的なストーリーが描けたから、新しいライフスタイルを提案することができた。
やり方やスキームは後でいいんです。自分が始めようとしているビジネスがお客様に喜んでもらえるか、社会を変えられることができるか、考えてみてください。社会を変えられるようなものじゃないと淘汰されていきます。すべては社会のため。じゃあ社会のためって何ぞやって、これはもう勉強するしかないんです。
やるからには気概を持ってやってください。そうじゃないと従業員もお客様も周りの関係者も着いて行けないし、応援もできない。儲けを出すことも大切ですが、強い意欲がなければビジネスの継続は難しいものなのです。関 俊一郎
1967年、長野県生まれ。米国・カリフォルニア大学バークレイ校カリフォルニア大学へ進み、以後6年間を海外で過ごす。帰国後、経営コンサルティング会社に勤務。学生時代、慣れ親しんだサンドイッチを日本でも食べたいという思いから飲食ビジネスの起業を決意し、1995年にサンドイッチとハンバーガーの専門店「FUNGO」を東京・三宿にオープン。
FUNGOhttp://www.fungo.com/
三宿店東京都世田谷区下馬1-40-10社名はgoing to be fun(楽しくいこう)という意味を持つ「FUNGO」。首都圏を中心に、イタリアンダイニングの「FUNGO DINING」、オーガニック食材を扱う「bistro BARNYARD」、アップルパイ専門店「GRANNY SMITH」、そして「FUNGO」の4つの業態、計7店舗を展開中。9月には東京・恵比寿にベーカリー専門店「Crossroad Bakery」をオープン予定。
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