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技術を磨き続けた真のプロフェッショナルならではの経営観

経営者である以上、事業を大きくするべきなのか真剣に考える時が来る

  • 倉田 正樹/enfleurage AOYAMA(アンフルラージュ アオヤマ)

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柔らかな物腰が魅力的なヘアメイクアーティスト・倉田正樹さん。その印象とは裏腹に「生涯現役でいたい」という発言には、プロフェッショナルとしての強い矜持を感じさせます。現在、青山と銀座にふたつのサロンを展開する経営者としての顔も持つ倉田さんに、現在のポジションを確立するまでの苦労や独自の経営観についてお話しいただきました。

「自分は日本一カットが上手い美容師だ」そんな天狗の鼻をへし折られた出来事とは?

ーー美容師として働き始めた20~30代の頃のエピソードを教えてください。
20代の頃は仕事がうまくいかず、苦悩の日々を過ごしていましたが、「カットの上手い一流の美容師になる」ことを目標に努力していました。その甲斐あって30代前半で店長を任された頃には、指名してくださるお客様が増え、ピーク時には15分刻みに予約が入っていることも。多忙を極めると同時に、「自分は日本一カットが上手い美容師だ」と思い込んで天狗になっていました(笑)。しかしある時、天狗の鼻をへし折られる出来事が起こったんです……。

「自分は日本一カットが上手い美容師だ」そんな天狗の鼻をへし折られた出来事とは?

ーー何があったのですか?
休日を使ってヘアメイクの勉強のために作品撮りをしていたのですが、自信がついてきたこともあり、いろんな雑誌の編集部にポートフォリオを見せて廻っていました。それが偶然マガジンハウスの編集者の目に留まり、運よく雑誌の撮影に参加するチャンスをいただけたんです。しかも、当時マガジンハウスがかなり注力していた『クリーク』というモード誌の仕事でした。気合いを入れて撮影に臨みましたが、評判は最悪……。本物のプロの中では、私の実力は素人同然でした。

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ーー大きな挫折を経験したわけですね。
「井の中の蛙」だと思い知らされたことで、すべての時間を技術の向上に費やさないとダメだ、と大きく意識が変わりました。仕事が軌道に乗り出してからは、このまま美容師としてそれなりにやっていく未来が見えつつありましたが、より高みを目指すなら、そんな呑気に構えている場合ではないな、と。現状に満足したら、そこで終わってしまいますから。

独立後の苦難を救ったのは自分の技術。挫折を経験し、ひたすら技術を磨いたた十数年は正しかった

ーーますます技術に磨きがかかってきた頃、転機が訪れました。
39歳の時、六本木に小さなビルを購入した遠い親戚から、その1階にお店を出さないか、と相談を受けました。当時勤めていたサロンにはお世話になっていたので、とても悩みましたね。そこで尊敬するオーナーに相談したら、「じっくり考えて、やりたいと思うならやってみろ」と背中を押されたんです。そして半年ほどの間、何度もオーナーと話し合い、ようやく独立に踏み出しました。

独立後の苦難を救ったのは自分の技術。挫折を経験し、ひたすら技術を磨いたた十数年は正しかった

ーー独立後は順調に進みましたか?
独立してから3ヵ月ほどは本当に苦しかったですね。というのも、以前のサロンを離れる時、敢えて自分のお客様にそのことを伝えなかったんです。自分のけじめとして、そのお店でついてくださったお客様には、そのまま残ってほしかったので。だから、独立する時にはまた新しいお客様を開拓しようと決めていました。そのせいで売上は散々でしたが(笑)。
しかし、3ヵ月が経ち、オープン時に取材を受けた20誌ほどに紹介記事が掲載されると、急激にお客様が増えたんです。各誌が僕の技術に注目してくださったおかげでした。ひたすら技術を磨いた十数年は正しかったと、その時に確信しましたね。それから3年ほどで、新たに六本木と銀座に店舗をオープンするまでになりました。

「自分は何がしたかったのだろう」事業の拡大に気をとられて陥ってしまった悪循環

ーーその後の経営における苦労や、その経験から得られた教訓はどんなことでしょうか?
店舗の拡大につれて、次第に方向性を見失い始めました。経営者として店舗の維持に気を取られるあまり、スタッフの技術より、広告などの集客手段に頼るようになってしまって……。その結果、価格だけで選んで来られるお客様も少なくありませんでした。かつては「倉田に切ってもらいたい」というお客様がたくさんいらっしゃったのに、すっかりお店が様変わりしてしまったのです。
そんな悪循環を目の当たりにし、「自分は何がしたかったのだろう」と原点に立ち返って考えました。多店舗で成功している経営者の方も存じ上げていますが、僕の場合、やっぱり自分の技術でお客様を喜ばせたかったんですね。お客様に満足してもらえる技術を提供することこそが、僕の夢でした。それを実現するために経営を考え直し、現在は青山と銀座に1店舗ずつという形に落ち着いています。経営者である以上、事業を大きくするべきなのか、真剣に考えなくてはならない時が来るものなのかもしれません。

ーー最後に、独立を目指す美容師の方にアドバイスをお願いします。
自分のお店を持って楽をしたいと思う人には、独立はおすすめしません。僕自身、独立してから初めの6年間は、正月以外、1日も休みなく働き続けました。休んでいたら借金が返せないと思っていたので(笑)。成功するには、それくらいの覚悟を持って取り組む必要があります。そして独立後も慢心せず、技術の研鑽を続けてください。
これは東京に限った話になりますが、いきなり都心部に出店する必要はないと思います。美容院はどの地域でもそれほど客単価が変わりませんが、都心部の家賃はケタ違いに高い! 実際、僕も固定費の捻出に苦しんだ時期がありました。まずは都心から離れた場所で始めて、順調であればお客様を連れて都心にお店を移転するのもよいのではないでしょうか。

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倉田 正樹

倉田 正樹

アンフルラージュ代表
ヘアメイクアーティスト
多くの女優やモデルのヘアメイクを手掛け、雑誌や広告でも活躍中のヘアメイクアーティスト。2000年頃に起こった「カリスマ美容師」ブームを牽引するひとりとして脚光を浴び、以降、美容業界の第一線を走り続けている。

enfleurage AOYAMA(アンフルラージュ アオヤマ)

enfleurage AOYAMA(アンフルラージュ アオヤマ)http://enfleurage-salon.com/
東京都港区南青山4-5-18

東京・青山の閑静な住宅地に佇む「enfleurage AOYAMA」は、一軒家をそのまま店舗にしたビューティーサロン。ゆったりと流れる上質な時間を味わいながら、美に関するトータルケアを受けられる大人のための空間だ。系列店として、銀座の並木通りに「enfleurage rangée(アンフルラージュ ランジェ)」を構える。

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