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前編:最初は小さく生んで、大きく育てたほうがいい

探求心、好奇心、マメさを失ってはならない。流行らないのはすべて店の責任だから

  • 中島 武/際コーポレーション

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飲食店のヒットメーカーとして注目を受け続ける「際コーポレーション」中島代表取締役社長。その独創的なアイデアと、時代を読む先見の明には“業態開発の奇才”との異名も付くほど。数々の成功談を持つ中島社長だからこそ語れる、起業への知恵と心構えを伺いました。

中島さんが“起業”を意識したのはいつからですか?

私は非常に内向的な子どもでしたが、高校・大学7年間の応援団で変わったと思います。大勢の団員の中で、いかに自分のポジションを確立するか、必死に考え行動することでタフな生き方を学びました。最終的に団長になり300~400人の後輩を引き連れて「押忍!」と肩で風を切っていましたね。

でも社会に出るとみんな“一年生”でしょ。大学を卒業して大手企業に就職しましたが、新人研修中に、会社員になるのがバカバカしくなってしまってね。今でも覚えていますが、軽井沢へ合宿研修に行き「ウサギと狩人」というレクリエーションをやらされたんです。みんなで両手を耳のように立てて「ウサギがピョン」なんて喜んでやっている。「これを俺にやれと言うのか、ふざけるな!」と(笑)。

研修終了後、すぐに会社を辞め、そこから仕事を転々としました。いわゆる“自分探し”です。独立しなければならないと強く感じていました。でも、何ができるかわからない、頭もよくない、何が何だかサッパリわからない。何か見つけなければと必死でした。

そこから、どんなきっかけを掴み、最初のお店である『DEMODE(デモデ)』(1982年)の出店に至ったのですか? 

探求心は元々あったのでしょう。バブル時代に、みんな浮かれている時も、私はゴルフなんてしないで、町の隅々を見て廻るほうが好きでした。香港へ行けば、ペニンシュラでお食事するより、路地裏にどんどこ入っていく。最近は、アメリカの方々にガード下や路地の焼き鳥屋が人気ですが、ちょうどあんな感じで、なるべくディープな場所へ行きたがる性格なんです。そうやって“飲食”の下地を培っていきました。それと私は生まれ育ったのが米軍基地のある福生市の近くだったため、アメリカン・アンティークな家具や古着が昔から大好きでした。そこで、「アンティーク屋から始めるのも方法かな」と思い、立ち上げたのが『DEMODE』です。ところが、これがうまくいかない……。本場アメリカにも飛んで本物のアンティークを買い付け、そこそこ物を見る目はありますから、自分の目に叶ったものを吟味して店頭に置くのですが、まぁ、これが売れない。

その後、30歳くらいの時、福生の米軍基地の米軍ハウスがすごく可愛いくて気に入り、一軒借りて小さなイタリアンレストラン『UnQuinto(ウノ・クイント)』を作りました。

当時はまだサラリーマンだったとか。

そうです。サラリーマンをしながらの開店です。
家賃は8万円くらい、工事代もそんなにかけない。最小の力での出店です。これまた流行らなくて、大変でした。当時は『Hanako』(マガジンハウス発行)さんの影響力が凄くて、載れば行列ができるんですが、まあ、Hanakoさんは来てくれない(笑)。少しずつ地元の人が来てくれるようになったけど、大流行りではないですよ。どうやったら流行るか必死に考えましたよね。サラリーマンの給料で、店の従業員に給料を払う生活がしばらく続きました。そんなところから、私の飲食店は始まったのです。

満を持して、こだわりの店を出したいと勢い込む人が多いと思うのですが、中島さんの出店は気負いのない印象です。

私はできるなら、最初は小さく生んで、大きく育てたほうがいいと思うのです。気張らなければ、いくらでも店は作れます、カッコつけなければ。スタート地点で頑張り過ぎて、だいたいみなさんミステイクする。某上場会社の副社長さんが、退職金何億円を費やして超高級なフランス料理店を作りましたが、1、2年で3億円近くの赤字を出しました。こだわって頑張るのもいいけれど、大きく投資したばかりに損失も大きく膨らんだわけですよ。

満を持して、こだわりの店を出したいと勢い込む人が多いと思うのですが、中島さんの出店は気負いのない印象です。

サラリーマンをしながら出店計画をする際に大事なことは何でしょうか?

流行りの洋服を買ったり、高級店で食事したりせず、1、2年は誰とも付き合わないと覚悟して本気で貯金すれば、年間200万円くらい貯まるんじゃないかな。その根性でストイックに、さらにアルバイトで皿洗いでも何でもやれば(もちろん勤める会社がOKなら)、2年で500~600万円ですよ。それだけあれば300万円で物件を押さえ、保証金100万円、家賃10万円で始められる。場所はどこでもいい。内装にもお金をかけない。潰れたスナックを居抜きで借りるとか、何でもいいからスタートさせるのです。

個人ではお金が無いから起業できないと言う人がいますが、今は個人だからチャンスです。この時代、チェーンストアより個人店のほうが贔屓にしてもらいやすい。個性が好まれているのです。お金が無いということは、下手な飾りやカッコつけをしないということ。ちょっとお金がある男は中途半端なカッコつけをするじゃないですか、気持ち悪いですよ(笑)。それより、ジーンズに白いTシャツのほうが爽やかだし、それでいて中身にはちゃんと個性が詰まっていれば、本当にいい店ができると思います。自分の中身をしっかり魅せるプログラムを、頭の中でイメージすることです。

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中島 武

中島 武

1948年生まれ。大学卒業後、サラリーマンをしながら輸入雑貨販売店、次いでイタリアンレストランを立ち上げる。その後1990年に「際コーポレーション」を設立した創業者。飲食の「紅虎餃子房」、「タイガー餃子会館」など人気店を次々と生み出し、同業者からは“外食界の鬼才”と呼ばれている。主な著書に『ハングリー』、『繁盛道場』などがある。

際コーポレーション

際コーポレーションhttp://www.kiwa-group.co.jp/
東京都目黒区大橋2-22-8 いちご池尻ビル

1990年創業。飲食、物販・衣料品、家具、宿泊事業など、グループ全体で400の店舗を運営する“ライフスタイル・カンパニー”。「紅虎餃子房」のヒットモデルをはじめ、チェーン業態からミシュラン1つ星に輝いた「柚子屋旅館」などの高級業態まで幅広く展開する。また行政と組んでの食にちなんだプロモーションをはじめ、長崎県新上五島町地域振興プロジェクト、「旧白洲邸 武相荘」に代表される文化的事業など、自治体と連携し、地域の魅力をデザインする新ビジネスも展開。

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