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10年間変わらないのは「美味しくしようとする気持ち」だけ。日々進化し、変化を続けている小さな名店「麺処ほん田」

僕は自分で作るラーメンだけが、「麺処ほん田のラーメン」だと思っています。勉強を続けて、進化を続けて、常にこの業界の第一線を走っていたい。

  • 本田裕樹(ほんだ ゆうき)/麺処 ほん田(ほんだ)

10年間変わらないのは「美味しくしようとする気持ち」だけ。日々進化し、変化を続けている小さな名店「麺処ほん田」_記事画像

東京都北区東十条。昭和の情緒あふれる商店街と静かな住宅地が広がるこの街に、21歳の若者がラーメン専門店「麺処ほん田」をオープンさせたのは2008年のこと。それから10年の月日が経ち、東十条の小さな店は、全国区に名を轟かせる名店となった。開業時からなんら変わらない、カウンターだけの小さな店舗には、雨の日でさえも長蛇の行列ができる。店主の本田裕樹氏は31歳となった今も、変わらず店の厨房に立ち、すべてのラーメンを自らの手で仕上げている。そこにはどんな思いがあるのか、本田店主にお話を聞いてみた。

若干21歳でラーメン店をオープン。その経緯とは?

――ラーメン屋を開業したきっかけを教えてください。
高校生の時に3年間、ラーメン屋さんでアルバイトをしていて、それがこの業界を経験した最初のきっかけです。そのあと2年間、東京でフリーター生活をしていたんですが、その時の生活がすごく楽しくて。「東京で仕事をやりたいな」と思っていましたけど、人に怒られながら仕事をやるのも嫌だったので(笑)、「じゃあ、自分でお店をやろう」と思ったんですね。
ラーメンだったら人よりもちょっと詳しかったので、それから地元に帰って、僕の師匠でもある田代浩二さん(「麺屋こうじグループ」代表)のところで1年間、勉強をさせてもらいました。

こうじグループには弟子の独立をバックアップしてくれる仕組みがあって、浩二さんが物件を見つけてきて、独立したいという弟子に「お前が店長でやれ」ってことで店を任せてくれるんですね。で、そのまま好調なら、店を買い取って自分のものにできると。僕もそのシステムを使わせてもらって、ここのオープンから1年ぐらい経った2009年の1月に店を買い取って、名実とも自分の店になりました。

若干21歳でラーメン店をオープン。その経緯とは?

実はラーメン店が代々つぶれる物件だった!

――東十条という地を選んだのはなぜだったのでしょうか?
僕自身、最初から「東京で店を持ちたい」と思っていたんですけれど、それが東十条になったのは「たまたま」ですね。ここを探してきたのは師匠だったので。実はここ、代々ラーメン屋さんがつぶれているという物件だったんですけれど、「近くの店に行列ができているんだから、お前も頑張れば大丈夫だ」ってことで。自分としては、本当は三軒茶屋とか中目黒とかでやりたかったんですが(笑)。

でも今は、「結局ここで良かったんだな」って思っていますね。東十条の南口にはほかにラーメン屋さんもないので、行列ができていても、みんな並んでくれるんです。この場所で、これだけ繁盛させてもらっているっていうのが、誇りですね。

実はラーメン店が代々つぶれる物件だった!

――開業当初、大変だった点は何でしたか?
味が安定しなかったのと、お客さんが来なかったことですね。最初の半年くらいは本当にお客さんが少なくて、大変でした。「中盛無料」の券を配ったり、限定ラーメンを作ってみたり、いろいろやっていましたね。当時はSNSも発達していなかったので、張り紙とかで地道にやっていました。

――行列店になったきっかけは何でしたか?
いちばん影響が大きかったのはテレビですが、その前にいくつか雑誌の取材が来て、それがきっかけでした。『東京Walker』では、その年の上半期ランキングで1位になって、それからテレビの取材が来るようになりました。行列ができたのもその辺りからですね。

――ラーメン作りのポリシーを教えてください。
僕は「ラーメンは常に進化するもの」だと思っているので、今でもほかの店を食べ歩いていますし、食材の展示会にも行っています。いつでも「もっと美味しいもの」を作ろうと思って、勉強しています。スープも昔よりももっといい材料で作っていますし、醤油も塩も、やっている中で高めてきました。7年目の時にはメニューのリニューアルもやりました。その時から出しているのが、この手揉み麺の中華そばです。

味についても、開業当初と今ではまったく別物になっています。「その時に一番美味しい味」でやっていますから。ラーメンって流行のサイクルがすごく早いので、それを見逃しているとすぐに「過去の店」になっちゃうんです。だから当初と変わらないのは、「美味しくしようとする気持ち」ぐらいですかね。

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――支店を出したきっかけを教えてください。
最初に出した支店は東京駅(「東京ラーメンストリート」内)で、これは向こうから誘いをいただいて出しました。東京駅の店は最初から期間限定の話だったので、いまはもうないですけれど。

ほかのふたつの支店については、東京駅の店をオープンする時に人を募集したら、すごくいっぱい、優秀な人が来てくれて。「前の店では店長をやってました」みたいなクラスがたくさん来たんですよ。だから、その子たちのためにもチャンスを作りたいなって思って、「夏海」と「niji」を作りました。今のところは、これ以上増やすつもりはないですけれども。

ほん田流の人材育成術とは?

――支店では店長に任せている部分が大きいそうですね。そこに込めた思いは何ですか?
味については、「醤油ラーメンは任せるけど、つけ麺は俺に味を作らせてね」みたいな感じで、分担していますけれど、経営はほとんど任せています。僕が、師匠にそういうふうにしてもらったから、という部分が大きいですね。

ラーメン屋さんでいちばん大事なのは「個性」だと思っているんですよ。ほかの店だと、タオルの巻き方とか、ユニフォームとか、もちろん味も作り方も、キッチリ教えるお店があるじゃないですか。
それはそれで、全体的なレベルは高くなると思うんですけれど、「抜けた子」は育たないと思うんです。でも、うちでは「抜けた子」を育てたいので、ほぼ「放し飼い」みたいな感じにしています(笑)。もちろん、何か問題があれば口は出しますけれど。

ほん田流の人材育成術とは?

――ここ「麺処ほん田」では、今でもすべて本田さんが麺上げ、盛り付けをされているんですね。
そうですね、僕は自分で作るラーメンだけが、「麺処ほん田のラーメン」だと思っているので、人任せにするのはやめました。「やめた」というのも、実は途中、東京駅を始めた頃あたりは、忙しくてさぼっていた時期があったんですよ。でも、原点に戻りました。

トップの人は、諸先輩方を見ていても、「とみ田」の富田さんのように、自分で絶対に現場に出ている人もいれば、多店舗展開に成功して、現場にはまったく出なくて、日々楽しそうにしている人と、ふたつのタイプがいるんですよ。最初は後者のほうに憧れたんですけれど、ある時、「本当の男のかっこよさってなんだろうな」って考えた時に、やっぱり、富田さんみたいなのが「男」だな、と思って。だから原点に戻りました(笑)。

――今後のビジョンを教えてください。
今すぐには無理ですけれど、「いつか海外でやりたい」という気持ちはありますし、この店も手狭になってきているので、近場にいい物件があれば、移転して少し広くしたいです。ただ、あくまでも自分の目の届く範囲でやっていきたいですね。

いま10年目を迎えたところですが、「過去の店」にはなりたくないと思っています。勉強を続けて、進化を続けて、常にこの業界の第一線を走っていたいです。

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本田裕樹(ほんだ ゆうき)

本田裕樹(ほんだ ゆうき)

1986年7月生まれ。茨城県牛久市出身。高校時代に地元のラーメン店でアルバイトを経験し、その後ミュージシャンを目指して上京。2年間のフリーター生活を送る。20歳を前に「自分の店を持つ」ことを決意し、茨城に戻り「麺屋こうじグループ」に入門。1年間の修行で「牛久大勝軒」と「佐貫大勝軒」を経験。2008年2月、21歳の時に田代浩二氏のバックアップのもと「麺処ほん田」を開業。1年後にはオーナーとなる。2011年に東京駅構内に支店を出し4年間経営。2012年には大宮「niji」と赤羽「夏海」の2支店を出店。

麺処 ほん田(ほんだ)

麺処 ほん田(ほんだ)http://honda-japan.jp/
東京都北区東十条1-22-6

東十条駅南口から徒歩5分のロケーションにある、カウンター9席のラーメン店。常に行列が絶えない店として知られる。現在のスープは、鶏を主体とした「あっさり」と、豚を主体とした「こってり」の2本建て。「あっさり」は醤油と塩のラーメンに、「こってり」は魚介醤油味のラーメンとつけ麺に使われる。麺は「心の味食品」に特注した麺を仕入れ、中でも平打麺がユニーク。オーダーごとに本田氏が手揉みを加え、唯一無二の一杯を生み出している。

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