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相次ぐ食材高騰にどう備える?価格高騰の理由と飲食店における対策を解説

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長引くコロナ禍に加えて、怒涛の値上げラッシュが日本の飲食業界を直撃しています。飲食サービスを提供する上で欠かせない食材の高騰は、飲食店にとって死活問題に。昨今の食材高騰の理由は何なのか?相次ぐ食材の値上げにどう対処すればいいのか?について、詳しく解説します。

食材の値上げラッシュが止まらない!

昨今、連日のように食品値上げのニュースが続いています。原油価格の高騰や、大豆・小麦など輸入作物の高騰をきっかけに、あらゆる食材の価格に影響を及ぼし、食品業界は空前の値上げラッシュに突入。長引くコロナ禍に加えて、飲食店の頭を悩ませる大きな問題となっています。

昨今の食材高騰の理由は?

そもそも食材価格の高騰は、需要量に対して供給量が足りなくなることで生じます。その原因として、以下3点が挙げられます。

新型コロナウイルスの感染拡大による影響

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界各国で人手不足が深刻に。特に物流分野では、貨物輸送のドライバーが不足したり、輸送コンテナが不足したりする事態が多く発生しました。その結果、物流費が高騰して価格上昇につながりました。
また、ロシアによるウクライナ侵攻も物流面で大きな影響が出ており、航空便・船便の欠航・遅延によって食材の価格上昇が発生しています。

原油価格の高騰

最近では脱コロナに向けて世界経済が回復基調にありますが、それに伴って原油の需要が急拡大し、供給が追いつかない事態になっています。
原油は、自動車やトラック、航空機、船の燃料だけでなく、ペットボトルやビニール袋、食品トレイといったプラスチック製品の原料、電気やガスの原料としても使われます。それらは全て食品の製造・輸送に関係するものであり、原油価格が高騰すれば当然、食品価格にも影響が及びます。

天候不順や自然災害による影響

地球温暖化の影響で、長雨による日照不足、記録的な猛暑といった天候不順、台風などの自然災害が増加しつつあります。その結果、農作物の生産量が減少し供給不足に陥り、価格の上昇を引き起こします。

食材高騰の事例

牛肉

中国や東南アジアなどの新興国では、経済発展に伴って牛肉の消費量が拡大。供給量が追いつかず、輸入牛肉の価格は上昇を続けています。特に牛タンの価格高騰は顕著です。元々牛一頭から取れる割合が小さい希少部位である上に、中国では日本式焼き肉店が増加傾向にあり、牛タンの人気が高まっていることも影響しています。
北米での天候不順によって、トウモロコシや大豆などの飼料価格が上昇していること、原油価格の高騰で輸送費が上昇していることも要因の一つです。

豚肉

牛肉と同様に、養豚用飼料の原料となるトウモロコシ・大豆の生産量が減少したことで、豚肉の価格にも影響が出ています。
また、中国では2018年に家畜伝染病の「アフリカ豚コレラ」が流行し、養豚業界が大きな打撃を受けました。ここ数年では豚の飼養頭数が急回復していますが、中国は飼料原料として外国産トウモロコシ・大豆の輸入量を増やしています。
元々食料自給率が高く、トウモロコシに関してはアメリカに次ぐ第2位の生産量を誇る中国ですが、昨今自国の生産量だけでは足りない状況にあるといわれています。このまま中国の輸入量が拡大し続けると、世界が食糧不足に陥る懸念もあります。

食用油

原材料の菜種、大豆、パーム油などの主要産地である北米の天候不順や、労働力不足による減産によって、食用油の価格高騰が続いています。それに伴って、食用油を原料とするマーガリンやマヨネーズも値上げに。中国やインドからの需要拡大で、供給が追いつかないという要因もあります。

小麦粉・パスタなどの麺類

北米やヨーロッパでは、豪雨や猛暑などの自然災害によって乾燥パスタの原料となるデュラム小麦の生産量が落ち込み、品質にも大きな影響を与えています。記録的な不作により、小麦の価格が高騰。物流費の上昇も重なり、値上げが相次いでいます。

コーヒー

世界最大のコーヒー生産国であるブラジルでは、2021年7月にコーヒーベルトで霜害を受け、コーヒー生豆が大幅な減産に。コーヒー生豆の国際相場が高騰したことに加え、コロナ禍による海上輸送運賃の値上げも相まって、コーヒーの卸・販売価格が値上がりしています。

ポテトチップス・フライドポテト

じゃがいもの生産・収穫量が全国1位の北海道では、2021年夏の記録的な高温・少雨の影響を受け、じゃがいもが大幅に減産となりました。
国内生産量の8割を占める北海道産じゃがいもが不作に陥ったことで、ポテトチップスの販売価格が値上げに。価格を据え置き、内容量を減らす「実質値上げ」の動きも見られました。
また、日本マクドナルドでは、じゃがいもの輸入が滞ったことでフライドポテトを一時販売中止に。日本マクドナルドのフライドポテトには、日本国内ではほとんど生産されていない「ラセットバーバンク」という品種のじゃがいもが使われています。
販売中止の原因は、世界的な人手不足と輸送コンテナ不足、海上の悪天候が重なり、じゃがいもの輸入に遅れが生じたこと。価格値上げにはならなかったものの、今後の情勢によっては価格に影響が出る可能性も十分にあります。

飲食店における食材高騰への対策は?

仕入れの見直し

食材や資材の卸業者は、価格の高騰により値上げをすることはあっても、値下げをしてくれることはほとんどありません。
一度取引を始めると長期的な付き合いになる場合が多いですが、仕入れ先は1社に限定せず、新たな業者を開拓することも重要です。仕入れ先が複数あれば業者を比較し、相見積もりも取れるため、仕入れコストを削減しやすくなります。
また、規格外野菜を取り入れることで、仕入れコストを抑える方法も。フードロス問題の解決にも寄与できます。

メニューの見直し

原価率を下げたいからといって、食材や料理のクオリティも落としてしまうのは厳禁です。お客様の
客足が遠のいてしまうリスクもありますから十分に注意しましょう。
メニューの見直し方法としては、根菜や豆苗、もやしなどの天候の影響を受けにくい野菜、価格変動の影響を受けにくい冷凍食品を活用したメニューを開発する手があります。冷凍食品は、食材の廃棄量を減らす意味でも有効です。
また、付加価値をつけたメニュー開発で販売価格を高めに設定し、利益を確保する方法も。刺身やステーキなど、素材で勝負する料理は他店との差別化が難しい傾向にあります。手間を加えるほどそのメニューにオリジナリティが出て付加価値が高まり、多少価格転嫁を行ってもお客様からの理解と満足が得られます。
例えば、単なる塩味の枝豆やフライドポテトではなく、バター醤油味、トリュフバター味、ペペロンチーノ風といったバリエーションを持たせるのも効果的。こうした取り組みは、客単価のアップや他店との差別化にもつながります。

逆風の今こそ、メニューや経営方針を見直すチャンス!

新型コロナウイルスの感染拡大、原油価格の高騰、天候不順や自然災害による影響など、さまざまな要因から引き起こされている食材の高騰。空前の値上げラッシュが収まる気配はなかなか見えない状況です。しかし、飲食店にとって逆風の今だからこそ、メニュー内容や経営方針を見直すチャンスともいえます。市場の状況を注視しつつ、一つ一つの要素を見直していくことが求められます。

ライター:上田はるか(フリーライター)

大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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