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これから独立開業をしようとしている人は、開業するための手続きや流れについて知りたいのではないでしょうか。会社を辞めて独立する場合は、どのタイミングで準備を始めればよいのかも知っておきたいですよね。
本記事では、開業する際に事前に進めておきたい手続きや具体的な準備について解説します。
目次
個人事業主として開業する方法
個人事業主とは、法人を設立せず個人でビジネスを営む人のことで、個人経営の飲食店オーナーや、独立開業した美容師・税理士などが該当します。
個人事業主として開業する場合、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出しなくてはなりません。提出期限は、事業を開始した日から原則1か月以内です。
ビジネスを始めて所得が発生すると所得税の支払義務が生じます。個人事業主は、確定申告を通して1年間の所得から所得税を算出・申告し、納税しなければなりません。そのため、個人事業主には税務署へ開業したことを知らせる開業届の提出が義務付けられているのです。
法人で開業する場合は登記などの手続きが必要になりますが、個人で開業する場合は税務署に開業届を提出するだけで事業をスタートすることができます。
参考記事:個人事業主として起業するには?具体的な手順や手続きを解説
【必須】開業するために必要な3つの手続き・届け出
ここからは開業するために必要な3つの手続き・届け出を解説します。
- ①開業届の提出
- ②保険・年金の手続き
- ③許認可の届け出
上記の手続き・届け出はいずれも難しいものではありませんが、場合によっては手続きに時間がかかるものもあります。計画通りに事業を始めるには上記の手続きが必須となるため、開業を目指す方は参考にしてください。
①開業届の提出
まずは開業届を提出しましょう。開業届は税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
記入する項目は以下のとおりです。- ✓提出先(所轄の税務署名)・提出日
- ✓納税地(納税地以外に住所地・事務所等がある場合は記載)
- ✓氏名・生年月日・個人番号・職業・屋号(※必須ではない)
- ✓届出の区分・所得の種類
- ✓開業日
- ✓開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
- ✓事業の概要
- ✓給与等の支払の状況
開業届は、開業から1か月以内に所轄税務署へ提出する必要があります。屋号をつけたい場合は開業届に記入して申し出るため、事前に考えておくとよいでしょう。
記入する内容は複雑に見えるかもしれませんが、難しいことを記入する必要はありません。詳細は別の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。
関連記事:開業届の必要書類とは?書き方や提出方法をわかりやすく解説
②保険・年金の手続き
個人事業主として開業するときは、保険や年金の手続きが必要かどうかを確認しましょう。会社員の場合は社会保険として、健康保険や厚生年金保険に加入していることがほとんどですが、会社を退職すると社会保険の加入者資格を喪失します。そのため、独立開業時には自身で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。
ただし条件を満たしている場合は、会社員時代に加入していた健康保険を継続加入できる「健康保険任意継続制度」を利用することができます。
会社員のときは会社と折半だった保険料が全額自己負担となりますが、国民健康保険よりも保険料が安くなる可能性があります。任意継続制度を利用するには、会社員時代の加入資格を喪失した上で、再度申請する必要があるので注意しましょう。保険料の支払いが遅れると期間満了前に資格を喪失する可能性があるので、規則をしっかり理解しておくことも大切です。
国民健康保険・国民年金へは、退職日の翌日から14日以内に加入手続きが必要です。手続きは居住地の区市町村の役所・役場で行います。社会保険の被扶養者が個人事業主になる場合は、所得金額が扶養範囲内を上回らなければ社会保険をそのまま維持できるでしょう。
③許認可の届け出
開業する業種によっては許認可の届け出が必要です。許認可とは、特定の事業を行うために警察署や保健所などから取得しなければならない許可のことです。
酒類の販売は税務署、飲食業は保健所といったように、定められた行政機関から許認可を得なければその事業を始めることができません。許認可が必要な事業を行う人は、最優先で許認可を取得するようにしましょう。
また許認可とは別に、資格が必要な業種もあります。飲食店の場合は「食品衛生責任者」、美容室を開業するなら「美容師免許」といったものです。
資格のなかには講習を受講すれば取得できるもの、国家資格など取得に時間がかかるものもあるため、開業に間に合うよう、余裕をもって資格を取得しておくことをおすすめします。
許認可や資格の取得が必要な業種には、以下のようなものがあります。
開業する業種 必要な許認可や資格 飲食業 食品衛生責任者、防火管理者、飲食店営業許可など 美容室 美容師免許、美容所開設届など マッサージ店 あん摩マッサージ指圧師、施術所開設届など
開業時の状況によって提出が必要な書類
開業時の状況によっては以下の書類が必要です。
- ・青色申告承認申請書
- ・青色専従者給与に関する届出書
- ・所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書
- ・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- ・給与支払事務所開設届出書
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は、確定申告時に青色申告を行うために必要な書類で、こちらを提出しない場合は白色申告を行うことになります。
青色申告のほうが白色申告よりも控除を多く受けられたり、家族の給与を経費にできたりといったさまざまなメリットがあります。記帳はやや煩雑になりますが、特段の事情がないのであれば青色申告を行ったほうがよいでしょう。
青色申告承認申請書は最寄りの税務署の窓口で受け取るか、国税庁のサイトからダウンロードすることが可能で、提出先は店舗や事業所の所在地を管轄する税務署です。国税電子申告・納税システム「e-Tax」を利用して、電子申請を行うこともできます。
PDFの取得はこちらから
国税庁:所得税の青色申告承認申請書
青色専従者給与に関する届出書
青色専従者給与に関する届出書は、確定申告で青色申告を行う際に、配偶者や親族に支払う給与を経費計上するために必要な書類です。
確定申告を青色申告で行わない場合や、配偶者や親族を従業員として雇わない場合は、提出する必要はありません。
青色専従者給与に関する届出書は、最寄りの税務署の窓口で受け取るか、国税庁のサイトからダウンロードすることが可能です。提出先は店舗や事業所の所在地を管轄する税務署で、国税電子申告・納税システム「e-Tax」を利用して、電子申請を行うこともできます。
PDFの取得はこちらから
国税庁:青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書
所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書は、開業届で申請した納税地から別の住居に引っ越した、もしくは事務所等の所在地を納税地に変更する場合に提出が必要となる書類です。
令和4年度税制改正において、令和5年1月1日以後の異動においては提出が不要になりました。令和4年度内に異動があった場合は従前通り提出しましょう。
所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書は、最寄りの税務署の窓口で受け取るか、国税庁のサイトからダウンロードすることが可能で、提出先は店舗や事業所の所在地を管轄する税務署です。国税電子申告・納税システム「e-Tax」を利用して、電子申請を行うこともできます。
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国税庁:所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、従業員を雇って給与の支払いを行う際に、源泉徴収した所得税を毎月の支払いから年2回の支払いへと変更したい場合に必要な書類です。
ただし、この特例が適用されるのは、常時雇用する従業員が10人未満の場合のみです。従業員を雇わずに自分だけで事業を行う、または常時10人以上の従業員を雇用予定の場合は適用されません。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、最寄りの税務署の窓口で受け取るか、国税庁のサイトからダウンロードすることが可能で、提出先は店舗や事業所の所在地を管轄する税務署です。国税電子申告・納税システム「e-Tax」を利用して、電子申請を行うこともできます。
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国税庁:源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与支払事務所開設届出書
給与支払事務所開設届出書は、従業員を雇用して給与を支払う場合に提出が必要な書類です。従業員を雇わず自分だけで事業を行う場合は、提出の必要はありません。
提出期限は従業員を雇用することになってから1か月以内なので、従業員雇用後はなるべく早く提出しましょう。
給与支払事務所等の開設届出書は、最寄りの税務署の窓口で受け取るか、国税庁のサイトからダウンロードすることが可能で、提出先は店舗や事業所の所在地を管轄する税務署です。国税電子申告・納税システム「e-Tax」を利用して、電子申請を行うこともできます。
PDFの取得はこちらから
国税庁:給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
適格請求書(インボイス)発行事業者の登録申請書
取引先が適格請求書(インボイス)の発行を求める場合は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出のうえ、インボイスの交付が必要となります。
インボイスとは適格請求書等保存方式のことで、2023年10月から取引先(買手)が仕入税額控除の適用を受けるために、売手である個人事業主がインボイスを交付しなければなりません。
インボイスを交付するためには、前年度の売上が免税事業者の基準(課税売上高が1,000万円以下)であったとしても、消費税を納める課税事業者になる必要があります。
本来、課税事業者になる場合は「課税事業者(選択)届出書」の提出が必要です。しかし、インボイス制度導入時の経過措置として、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出するだけで課税事業者になることができます。その場合、インボイス制度が開始される令和5年10月1日以前は免税事業者、10月1日以降は課税事業者扱いになります。
インボイス制度が開始されても免税事業者のままインボイスを交付しない選択もありますが、企業は免税事業者との取引を敬遠する恐れがあります。そのため、個人事業主もインボイス制度にどう対応するかの判断は急務でしょう。
開業の半年~3か月前までにやっておくべきこと
ここからは、開業3か月前までにゆとりを持ってやっておくべきことについて解説します。
- ①家族や知人に報告する
- ②取引先の開拓
- ③事業計画書を作成する
- ④資金調達の計画を立てる
①家族や知人に報告する
事業を始めるには、さまざまな場面で家族や知人の助けが必要になることがあります。事業がうまくいかない場合、家族のサポートを受けることもあるでしょう。同じ業界で働く知人に、経営の相談にのってもらうこともあるかもしれません。
開業後に協力をお願いする可能性がある近しい方々には、事前に開業することを報告し、理解を得ておくことが望ましいです。
②取引先の開拓
開業に向けて、取引先の開拓を始めておきましょう。事業を安定して継続するためには、複数の取引先を確保することが必須だからです。
開業してから取引先の開拓を始めようと考える人も少なくありませんが、それでは開拓がうまくいかなかった場合、計画通りに事業を進めることが難しくなってしまいます。事業計画を立てるためにも事前に取引先を開拓しておき、売上や事業のスケジュールを盛り込めるようにしておくとよいでしょう。
企業向けにビジネスを行う場合は受注元、個人向けのビジネスを行う場合は仕入先を少しずつ開拓しておきたいところです。
③事業計画書を作成する
事業計画書とは、事業内容やコンセプト、収益や経費の予測など、開業後にどのように事業を運営していくかなどを内外に説明するための書類です。
開業資金の算出や開業前後にやるべきことも明確になるため、スムーズに開業準備が進められるうえに、取り組むべき物事の優先順位もつけやすくなるでしょう。
また事業計画書は、日本政策金融公庫や銀行などから融資を受ける際に提出を求められます。自己資金だけでは開業に必要な資金が足りず、金融機関からの融資を検討している場合は必ず作成しましょう。
④資金調達の計画を立てる
事業計画書の作成と並行して、資金調達の計画も立てましょう。開業にどれくらいの費用がかかるかを計算し、自己資金だけで足りなければ資金調達を行う必要があるからです。
資金調達の方法には、日本政策金融公庫や銀行から融資を受けるほか、地方自治体の起業支援制度やクラウドファンディングを利用するといった選択肢があります。
開業にかかる費用の分類は、店舗取得費や備品購入費などの「開業資金」と、開業後に売り上げが現金化するまでに使用する「運転資金」の2種類です。開業資金と運転資金、トータルでいくら必要なのかシミュレーションしたうえで、不足しないように資金を調達しましょう。
特に運転資金は余裕を持って調達しておかなければ、オフィスや店舗の賃料や人件費、仕入れ費用が支払えなくなってしまいます。開業する業態にもよりますが、3~6か月分程度の運転資金を用意しておくと安心です。
開業資金を調達するには、以下のような方法があります。
資金調達の種類 概要 日本政策金融公庫からの借入 小規模事業者などを対象として融資や支援を行っている。民間の金融機関よりも融資を受けやすい傾向にあり、低金利で借りられる。 民間金融機関からの借入 銀行や信用金庫などから融資を受ける方法。金融機関から融資を受ける場合は申込者の社会的信用力が求められ、場合によっては保証人や担保が必要になる。 地方自治体の起業支援制度 特定の要件を満たせば都道府県や市町村などの自治体から助成金や補助金が受けられる。返済義務がない補助金も多いが、入金まで時間がかかる。 クラウドファンディング 企業理念や事業内容に賛同する支援者からインターネットを通じて出資を募る方法。融資ではないため返済義務は生じないが、出資額に見合うリターンが必要となる場合もある。 ベンチャーキャピタル ベンチャー企業に出資する投資会社から出資を受ける方法。ベンチャーキャピタルでは出資した企業の株式の売却益を目的としているため、株価が上がるよう継続した経営コンサルティングが受けられる 家族や知人に借りる 日本政策金融公庫や金融機関からの融資が受けられなかった場合は友人や知人から借りる選択肢もある。その場合はトラブルを防ぐために借用書を作るほか、送金の履歴が残るようにするとよい。
「canaeru」では、開業を検討している方向けに無料相談を実施しています。事業用資金の調達に悩んでいる方はぜひお問い合わせください。
関連記事 開業資金の調達方法をご紹介!自己資金と6つの集め方
canaeruへの無料開業相談はこちら
開業直前までにやっておくべきこと
開業直前までにやっておくべきことは以下のとおりです。
- ①備品を用意する
- ②事業用口座、クレジットカードを用意する
- ③人材の採用と宣伝広告を行う
①備品を用意する
パソコンやプリンターなど、事業を運営するために必要な備品の用意を始めましょう。商品や食材の仕入れが必要になる業種であれば、仕入先の候補を選出し、見積もりを依頼します。
小売業や飲食店の場合、コンセプトに合った備品選びも大切です。予算を抑えたいときは、中古備品の購入やリース契約を検討するのもよいでしょう。
個人事業主としてスモールスタートする場合、印鑑や名刺は必要ないと考える人もいますが、取引先の開拓や契約書を交わす際に必要となるため事前に作成しておきましょう。
名刺交換がきっかけで仕事につながることもあるため、自身の特徴を覚えてもらいやすい個性的なデザインにするのもおすすめです。
②事業用口座、クレジットカードを用意する
個人事業主として開業する場合は、個人と事業のお金の流れが区別できるように、事業用口座と事業用クレジットカードを用意しておくとよいでしょう。開業届を提出する際に屋号をつけた場合は、屋号で事業用の口座を作ることができます。
個人の口座やクレジットカードでも事業を行うことは可能ですが、青色申告をする場合に複式簿記を用いた記帳が必要であるため、事業用口座を作っておくと入金の内容やクレジットカードの利用履歴の仕訳がしやすくなります。
個人事業主は会社員に比べて個人の信用力が落ちるため、クレジットカードの作成は退職前に行っておくとよいでしょう。
③人材の採用と宣伝広告を行う
自分一人や家族だけで店舗や事務所を切り盛りするわけではないのなら、オープンに備えて採用活動を行う必要があります。さまざまな業態で人材不足が叫ばれる昨今、スタッフの確保は一朝一夕でできるものではないので、余裕をもった採用スケジュールを組みましょう。
また、店舗事業の場合はオープンが近づいてきたら、近隣の方に知ってもらえるように宣伝も行いましょう。宣伝方法はチラシ・タウン誌への出稿、SNSの利用など多岐に渡りますが、アプローチしたい層に合わせて広告媒体を選ぶことが大切です。
個人事業主の場合は、スキルや実績を説明できるホームページを用意するのも一案です。
開業した後は確定申告を行う必要がある
開業した翌年から、1年間の所得と所得税を申告する確定申告を行う必要があります。確定申告をしないと収入の証明ができないほか、さまざまな控除も受けられません。
確定申告をしなかったり、納税を怠ると、買い物をする際にローンが組めなくなるほか、追加で事業資金の融資が必要な場面でも資金調達ができなくなるかもしれません。
税務署は個人の収入をある程度把握しているため、「延滞税」や「無申告加算税」といったペナルティが課される可能性もあります。
確定申告は事業を営んだ翌年の2月16日〜3月15日までの間に行う必要があります。申告方法については税務署の窓口へ提出するほか、スマートフォンやパソコンから「e-Tax」を利用して電子申告を行うことも可能です。
参考記事:デメリットしかない!確定申告をしないとどうなるのか?開業のノウハウまとめ
開業を目指すにあたり、準備の流れや必要書類など、知っておくべきことはたくさんあります。準備が足りず開業後に後悔しないためにも、開業までのスケジュールを考えて、手順をシミュレーションしておくことが大切です。
また開業といっても個人事業主と法人では必要な書類や手続き、会社設立後に加入する社会保険などが異なります。まずは個人事業主と法人のどちらで事業を行うのかを決めたうえで、開業の準備を始めましょう。
「canaeru」では開業に関する無料相談を受け付けています。経験豊富な開業コンサルタントによって、さまざまなサポートが受けられるため、開業を検討している方は「canaeru」の利用をご検討ください。
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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
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