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昔懐かしい和の趣を感じられる古民家を活用したカフェやレストランなどの飲食店が、近年注目されています。この記事では、そんな古民家カフェの開業の流れや、成功するためのコツや注意点を紹介します。メリット・デメリットを理解して、古民家カフェの開業を検討する際の参考としてお役立てください。
目次
古民家カフェとは?
古民家カフェとは、日本の伝統的な家屋を活用した独特の魅力を持つ飲食店です。築50年以上、中には100年以上経過した木造建築を改装し、柱・畳・障子といった和の要素を残しながら、利便性を損なわないための現代的な機能を融合させています。
昔ながらの落ち着いた和の雰囲気を醸し、時代を感じさせる内装や道具も特徴のひとつ。地元の食材を使用した料理やスイーツ、抹茶などの伝統的な飲み物が提供されることが多く、日本の食文化も体験できます。
古民家カフェは単なる飲食店以上の意味を持ち、地域の歴史や文化を体験できる場所として、また建築的価値のある古民家の保存に貢献する存在として注目されています。都市部から離れた郊外や田舎に多く見られ、現代の忙しい生活の中で、ゆっくりと時間を過ごし、日本の伝統を味わえる人気のスポットとなっています。古民家カフェの開業の流れ
古民家カフェの一般的な開業の流れは以下の通りです。
①必要な資格の取得
②開業する場所を決める
③物件探し
④様々な申請や手続きを行う
⑤必要な設備・道具を揃える
それぞれの工程を詳しく説明します。
必要な資格の取得
古民家カフェの開業に必要な資格は「食品衛生責任者」です。飲食店を経営する場合には、店舗に最低1人はこの資格を所有している人を置かなければならないと定められています。また、お店の収容人数が30人を超える場合には、「防火管理者」という資格も必要です。
「古民家カフェだから料理系の資格が必要なのでは!?」と思いがちですが、そのような資格は持っていなくても開業は可能です。開業する場所を決める
お店を開きたい場所を決めておけば物件も探しやすいです。場所を決める際は、物件の安さや立地の良さだけではなく、お客様となりうる周辺住民のステータスや、観光地・人気スポットからの距離、近隣に競合となりうるカフェはないかなど、多角的に分析し、本当にその場所で開業可能か判断しましょう。
物件探し
「古民家カフェ=長い年月を経てきた古民家を使用しているカフェ」ということから、新築やモダンな物件では古民家カフェの役目は務まりません。
物件を探す際はネットで下調べをすることもおすすめですが、ネットに出てこない物件もたくさんあります。空き家になっていて使っていないような物件の場合は、直接近隣の方に声を掛け、情報を得ることも有効な手段になることもあります。
何よりもたくさんの物件へ足を運ぶことが一番大切です。たった数件回っただけで決めるのは様々なリスクがあり危険ですので、必ず何十件も回ってから決めるようにしましょう。その際、可能な限り建築知識のある専門家に同行してもらうことをおすすめします。様々な申請や手続きを行う
開業するには、役所などで様々な申請や手続きを行う必要があります。例えば、保健所から飲食店営業許可を得たり、税務署に開業届や事業開始等申告書を提出したりなど、やるべき申請や手続きはかなり多いです。ひとつでも怠らないようにして、きちんと全ての申請や手続きを行いましょう。
必要な道具類を揃える
古民家カフェを開業するにあたって、必要な設備や道具はたくさんあります。特に古民家と言える物件は厨房や空調設備が整っていないケースが多いので、それらの設備を購入またはレンタル・リースし、内装工事をしなければなりません。
その他にも、食器類・テーブルや椅子・レジ用品やキッチン用品など、揃えなければならない道具は多岐にわたります。開業時に不足がないよう、計画的に準備しておきましょう。
カフェ開業の資金や失敗しないための準備については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご参考にしてください。
関連記事 カフェの開業資金や資格、失敗しないための準備について古民家をリノベーションして飲食店にする際の費用相場は約800万円〜1,500万円
物件のコンディションや店舗業種、利用する施工業者などの条件によって変動しますが、古民家をリノベーションして飲食店にする際の費用相場は、おおむね800万円〜1,500万円
とされています。駐車場の有無や坪数、立地などの環境によっては上記を上回るケースも少なくありません。
また、古い物件ゆえ、一般的には断熱材が入っていないことや構造自体が現在の建築基準より弱いことがほとんどです。上記金額の他に、断熱工事や構造補強工事がある場合は、数百万円単位で掛かることがあるので覚えておいてください。
古民家をリノベーションしてカフェやレストランなどの飲食店を開業するためには、主に以下6項目の費用が必要です。
①古民家の購入費や賃貸費
②足場組立や現場清掃などの仮設工事費
③天井・壁・床などの改装費および各種建具工事費
④電気・ガス・水道の各種インフラ工事費
⑤キッチンや製氷機といった厨房設備および機器の購入費
⑥雑工事費および机や椅子・食器・消耗品などの諸費用
既存の古民家物件をどこまで活かしてどの程度手を加えるかによって費用は変わります。例えば、壁の仕上材を無垢材や漆喰といった自然素材にこだわるなら相応の費用がかかる一方、ビニールクロスを使用すれば費用を抑えることが可能です。
こだわりたい点とコストカットしたい点を明確にし、リノベーションの予算と開業後しばらくの運転資金を考慮しながら、項目ごとに費用の増減を図りましょう。
地方自治体によっては古民家再生の助成金や補助金制度がある
古民家を飲食店にリノベーションして開業するには相応の費用がかかるため、開業を検討している地域の地方自治体で、古民家再生の助成金や補助金など利用可能な制度がないか確認してみましょう。コンディションが良好であるにも関わらず放置されている古民家を有効活用するために、古民家再生を助成・補助する制度を用意している地方自治体も珍しくありません。
例えば、兵庫県は県内にある古民家の再生促進支援事業を実施しており、下記の対象および条件を満たす古民家に、改修工事費用の助成を行っています。
対象 条件 ✔築年数50年以上の住宅または歴史的建造物
✔伝統的な木造建築技術によって建築されている
など
1.改修工事によって一定の耐震性を確保する
2.改修後10年間以上は地域交流施設等として活用し、事業完了後に活用状況を定期的に報告する
3.古民家が建てられている地域の市町からも改修工事助成を受ける
古民家カフェのメリットは?
古民家カフェのメリットは主に次の3つ。一般的なカフェとは異なるメリットが魅力です。
✔初期費用を抑えやすい(購入の場合)
✔税制面で優遇がある
✔古民家の魅力を活かしたコンセプトにできる初期費用を抑えやすい
古民家は一般的に新しい物件よりも安価に取得できる場合が多いため、物件取得費を抑えやすい傾向にあります。状態によってリノベーションが必要となりますが、古民家特有の風情ある内装や外観を活かせば、工事は最低限に済ませることもできるでしょう。
場合によっては、地域の空き家対策事業などの支援を受けられ、さらに費用を抑えられることもあります。税制面で優遇がある
古民家を利用する場合、税制面での優遇措置を受けることができることがあります。例えば、文化財に指定されている建物や、地域の景観保全に寄与する古民家は、固定資産税の減免や補助金の支給対象となることがあります。
また、リノベーションや修繕に対する補助金制度も利用できる場合があり、これにより、運営コストを抑えることが可能です。
古民家の魅力を活かしたコンセプトにできる
古民家の独特の雰囲気や歴史的価値を活かすことで、他のカフェにはない魅力的なコンセプトを打ち出すことができます。伝統的な建築様式や古材をそのまま活用することで、温かみや落ち着きのある空間を提供できるため、お客様に特別な体験を提供できます。
地域の文化や歴史を感じられる場所として、新たな観光スポットとなることも。さらに、古民家カフェは地元のコミュニティとも密接に結びつきやすく、近隣住民の集客も効果的に行えるでしょう。
古民家カフェのデメリットは?
多くのメリットがある古民家カフェですが、デメリットもあります。
✔古民家の空き家物件が限られる
✔物件によっては工事費がかなり高くなる
どの点に注意すべきか確認していきましょう。
古民家の空き家物件が限られる
古民家カフェを開業するためには、まず適切な古民家を見つける必要がありますが、空き家物件の数は限られています。特に、立地条件が良く、顧客がアクセスしやすい場所にある古民家は少ないです。また、人気のエリアでは既に多くの古民家が活用されているため、競争が激しいこともあります。
物件によっては工事費がかなり高くなる
古民家は歴史的な建物であるため、建物の状態には注意が必要です。長年の使用や自然環境の影響により、老朽化が進んでいる場合があります。例えば、屋根や柱の腐朽、シロアリ被害、水漏れ、断熱などの問題が発生していることがあり、これらを修繕するための費用や時間がかかることがあります。
さらに、建物の構造が現在の建築基準に合致していない場合が多く、改修工事を行う必要があるため、予想以上の費用がかかることも考えられます。このようなリスクを踏まえて、事前に専門家による建物診断を受けることが重要です。古民家リノベーションの3つの注意点
古民家をリノベーションする際は以下3つのポイントに注意しましょう。
①改修工事で古民家の断熱性および気密性を確保する
②耐震補強工事を行う際は建築士や古民家鑑定士と相談しながら進める
③リノベーションの内容次第で固定資産税や火災保険が高額になる
それぞれ詳しく解説します。改修工事で古民家の断熱性および気密性を確保する
1世紀以上前に建てられた古民家は、現代の建築物とは異なり、高度な断熱性・気密性を備えていません。長年放置され適切なメンテナンスがなされていない物件では、経年劣化により気密性が著しく低下し、場合によっては、室内に外気が直接流入するほどの隙間が存在することもあります。その結果、夏季には虫などが頻繁に屋内に侵入する問題が生じています。さらに、断熱性の低さから、夏季には冷房効率、冬季には暖房効率が悪く、厳しい暑さや寒さに悩まされることになります。
加えて、古民家を飲食店として活用する場合、保健所から営業許可を取得する際に一定の施設基準を満たす必要があります。気密性が低いと、ネズミや虫などの防除設備が不十分と判断され、施設検査に合格できない可能性があります。
したがって、古民家のリノベーションにおいては、「断熱材の適切な選択と施工」「気密性を高めるための隙間対策」「現代の建築基準や保健衛生基準への適合」などの要素を考慮しましょう。耐震補強工事を行う際は建築士や古民家鑑定士と相談しながら進める
古民家のリノベーションにおいて、耐震補強は重要な検討事項です。特に昭和初期以前の伝統工法で建てられた古民家の場合、建築士や古民家鑑定士との相談が不可欠です。伝統工法は柱と梁を仕口で接合した木造軸組構造で、地震時にはしなりでエネルギーを吸収する免震的特性を持ちます。
しかし、現行の建築基準法は壁量で耐震性を判断するため、開放的で壁の少ない伝統的な古民家は基準を満たさないことがあります。一般の工務店に耐震補強を依頼すると、壁を増やすことで古民家本来の開放的な空間が失われる可能性があります。
そのため、古民家の魅力を保ちつつ耐震性を高めるには、まず建築士や古民家鑑定士に物件の診断を依頼し、必要に応じて古民家再生を専門とする工務店に工事を依頼することをおすすめします。リノベーションの内容次第で固定資産税や火災保険が高額になる
古民家をリノベーションする際は、内容次第で固定資産税や火災保険が高額になることがあるため注意しましょう。
建物の固定資産税評価額は、木造か鉄筋かといった建物の構造、築年数などによって変動します。古民家は木造で築年数が50年以上であることがほとんどのため、固定資産税は新築の鉄筋物件と比べて安い傾向にあります。
しかし、リノベーションによって増築を行った場合、増築部分が経年劣化していない新築部分とみなされ、評価額が引き上げられるケースがあります。加えて、火災保険料は木造や土蔵など耐火性が低い建物だと割高になる傾向にあるため、木造の古民家は高額となる可能性も。
また、保険料は壁に石膏ボードを使い耐火性を高めるといった準耐火構造にすれば抑えられるとされていますが、見た目や質感など古民家本来の趣が失われてしまうため注意しましょう。人気の古民家カフェをつくるコツは独自性をもたせること
古民家カフェの経営を軌道にのせるには、古民家特有の趣や雰囲気を活かし、訪れたお客さんに特別感を抱いてもらうことがコツ。「一般的なカフェにはない趣」と相性のよい店舗設計・サービスを用意しましょう。
例えば、くつろげる畳部屋を設営する、夏季に縁側を開放する、地域の食材を使ったメニューを提供する、といったことがおすすめです。あえて洋風の食器や什器を取り入れて和と洋の調和が楽しめる空間を演出するというアプローチもありでしょう。古民家カフェを開業させるにあたって成功させるためのポイント
ここでは、古民家カフェを成功させるために押さえておくべきポイントを3つ紹介します。
✔コンセプトは必ず明確に決めること
✔現代の流行をしっかりと活用する
✔接客には常に注意をするコンセプトは必ず明確に決めること
古民家カフェは、日常にあるストレスや疲れを癒す空間として需要が高まっており、その背景から多くの開業が見られる業態です。競争率は高く、生き抜いていくためにはコンセプトを必ず明確に決めることが必要不可欠となってきます。
また、一般的に存在しているカフェも競合店となるため、来店の目的をしっかり検討し、打ち出していきましょう。
まずはコンセプトを決めて、それに合う物件やリノベーションの方向性、サービス内容を考えましょう。コンセプトは経営に迷った際の指針となり、集客にもつながる重要な要素です。現代の流行をしっかりと活用する
現代ではSNSを活用した集客や販促が主流です。例えばインスタグラム。インスタグラムではカフェに関する投稿が多く、「映え」を意識している若者に向けて有効な宣伝方法となりえます。その点、古民家カフェは「映え」を求めるお客様に向けてぴったりの業態なので、お店の映えるポイントなどを投稿してお客様に発信していくと効果的です。
接客には常に注意をする
接客でお店の印象はガラッと変わります。常に笑顔で、お客様により良い印象を与えるように心がけるようにしましょう。また、それだけにとどまらず食品を提供しているお店であることから、身だしなみにもしっかりと気をつけるようにしましょう。お客様に「いいお店だな」と思って貰えるだけでなく「いい店員さんがたくさんいる」と思って貰えるように心がけましょう。たったそれだけでお客様が、「また来たい」と思えるようなお店にすることができるのです。食べ物や飲み物での差別化よりも、接客による人での差別化はお金も時間もかからない、効率的な方法となります。
古民家カフェの成功事例
ここまで、古民家カフェの開業に必要な手順や、メリット・デメリット、注意すべきポイントなどを押さえてきましたが、最後に古民家カフェの成功事例をいくつか見ていきましょう。成功事例から古民家カフェ開業のヒントが得られるかもしれません。
古民家caféお亀堂
愛知県の老舗和菓子店を運営する株式会社お亀堂が、製菓工場の隣にあった古民家を改装してオープンさせたのが「古民家caféお亀堂」。元々あった美しい日本庭園がこのカフェの特徴で、来店客は四季の風景を楽しみながら上質な和菓子と抹茶が味わえます。
畳を基調とした店内には、日本や世界の民芸品・工芸品が飾られており、ゆったりとした時間の中で、日本の美と世界の文化に触れられる場所として、地元の人々や観光客から愛されています。
COTONOHA(コトノハ)
COTONOHAは昔ながらの風情が残る神奈川県鎌倉市に店を構える古民家カフェ。「おいしくて嘘のないヴィーガン料理」をコンセプトとしており、無添加・無化調の手作り料理やスイーツを提供しています。
戦前からある昭和初期の古民家をリノベーションしたカフェで、昭和のぬくもりが感じられる畳部屋や、庭木を眺める縁側デッキ席など、古民家の特徴を活かしたお店作りが印象的。
店内で使われている道具は主にリサイクル品を活用。また、ヴィーガン料理に使う野菜は鎌倉野菜にこだわるなど、地域活性と地産地消を大切にしており、地域の人々をはじめ、外国人観光客にも人気のカフェとなっています。
まとめ
日本の古き良き文化や風情を現代風にアレンジした古民家カフェは、大きな人気と注目を集めています。しかし、開業には、資格の取得・開業場所の選定・物件探し・内装整備など、多くの準備や段階を踏まなければなりません。
特に物件取得や内装工事は、一般的なカフェ開業より時間や資金がかかることがあり、一人で開業準備を進めることはなかなか難しいでしょう。その際は物件や古民家経営に詳しい専門家を頼ることをおすすめします。
株式会社USENが運営する開業支援サービス『canaeru』では、元飲食店経営者や金融機関出身者といった様々な経歴を持つプロフェッショナルが、開業を一からサポートします。不動産会社や内装業者への紹介も承っているので、「最適な物件が見つからない」、「物件は見つかったけど内装をどうすればいいかわからない」などのお悩みがある方は、ぜひお気軽に無料開業相談をご利用ください。
無料開業相談この記事の監修
サンクジャパン株式会社 代表取締役
清水 公彦
建築工事(店舗・オフィス・倉庫・住宅の設計施工及びリノベーション)
一級建築士事務所
古着屋みたいな不動産屋
開業体験ができる飲食店shitagoya運営
経営スクールも開講中
“仕事を楽しむ”をポリシーに、みんなが笑顔になるまちづくりを行っております。
サンクジャパン株式会社
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