良質な飲食店サービスの基盤となる接客マニュアルの核心部分をわかりやすく解説します。心構えからマナー、プロの接客用語まで、スタッフ全員が身につけるべき基本をこの記事で徹底的に学びましょう。
飲食店は接客が超重要!
飲食店において、お客様に提供するのは料理だけではありません。接客サービスもまた、お店の価値を大きく左右する重要な要素です。どんなに美味しい料理を提供しても、接客が雑であればお客様の満足度は下がってしまいます。一方、丁寧な接客は、料理の味を引き立て、お店全体の印象を向上させる力があります。
また、接客はリピーターを生み出す鍵でもあります。温かみのある対応や細やかな気配りは、お客様の心に残り、「また来たい」という気持ちを育みます。SNSの普及により、接客の良し悪しはすぐに口コミとして広がるため、ビジネスの成功に直結するのです。
接客はお店の個性や魅力を伝える大切な手段です。スタッフ一人ひとりの対応がお店の看板となり、他店との差別化につながります。飲食業界は競争が激しいからこそ、料理とサービスの両方で高い水準を維持することが不可欠なのです。
飲食店の接客で大切な3つの心構え
では、接客力の向上のためには、どんなことを心がければよいのでしょうか。ここでは、留意すべき心構えを3つ挙げ、それぞれ説明していきます。
お客様視点に立った対応を心がける
お客様がどのような体験を求めてお店に来られたのかを常に考えることが大切です。初めての来店なのか、特別な日の利用なのか、急いでいるのかなど、お客様の状況や気持ちを察知し、それに合わせたサービスを提供しましょう。
例えば、記念日利用のお客様には少し特別感のある対応を、お急ぎのお客様には効率的な接客を心がけるなど、臨機応変な対応が求められます。お客様の立場になって考えることで、真に満足いただけるサービスが生まれます。
チームワークを大切にする
飲食店の接客は一人ではなく、キッチンスタッフも含めたチーム全体で行うものです。自分の担当範囲だけでなく、他のスタッフの状況にも気を配り、必要に応じてフォローし合う姿勢が重要です。忙しい時間帯でも連携がスムーズであれば、お客様を待たせることなく質の高いサービスを提供できます。
また、スタッフ間のコミュニケーションが活発なお店は、活気があり居心地の良い雰囲気を作り出せるため、お客様にもその良さが伝わります。
常に学ぶ姿勢を持ち続ける
接客のプロとして成長するためには、日々の経験から学び続ける姿勢が欠かせません。お客様からのフィードバックや同僚のアドバイスを謙虚に受け止め、自分の接客スキルを磨いていきましょう。
また、業界のトレンドや新しいサービス手法にも関心を持ち、自分の知識を更新し続けることが大切です。「もっと良い接客ができるはず」という向上心を忘れず、小さな改善を積み重ねることで、真のプロフェッショナルへと成長できます。
飲食店の接客マナーとは?
接客マナーは飲食店のスタッフとして身につけるべき基本中の基本です。お客様に気持ちよく食事を楽しんでいただくために、以下のポイントを押さえましょう。
身だしなみを清潔に
まずは身だしなみです。接客以前にお客様に不快感を与えてしまわないよう、見た目にはよく注意する必要があります。
一般的には清潔感のある髪型が望まれますが、奇抜な色や個性的なヘアスタイルにする場合も基本は同じです。長い髪はしっかりとまとめ、料理や顔にかからないようにします。また業務中に髪に触れる機会がないよう、おくれ毛を出さない工夫をしましょう。
顔・化粧
メイクの基本はナチュラルメイクですが「素顔」は極力避けましょう。アレルギーなどでメイクできない場合は、マスクなどで対策を。また、個性的なメイクをする場合は、なるべく「無香料」を選び、店内や料理に香りが混ざらないように気を配りましょう。男性も同様で、特に髭は綺麗に”剃るか保つか“の処理も重要です。口臭ケアも忘れずに。
服装・アクセサリー
制服有無にかかわらず、マメに洗濯をし「汚れ・ニオイ・シワ」が無い状態を保ちましょう。また、アクセサリーは、可能であれば身に付けないことをおすすめします。理由は、落下などで料理に混入したのに気付かない・引っかかってケガをする・指輪から細菌が料理内に混入したりなど、トラブルを防ぐためです。
靴
清潔で動きやすく足音が出ない靴を選びましょう。キッチンやホールの床は滑りやすい状態が多いので滑らない靴底タイプが理想です。転びやすいものや、落下物への防護力の低いものは避けましょう。
爪
短く清潔に保ちましょう。長い爪は不衛生だけでなく、作業効率も下げます。派手なネイルは避け、透明か薄いベージュなど控えめな色にとどめるのがマナーです。定期的な手洗いと合わせて爪の清潔さも保ちましょう。ですが、お店のコンセプトとして長い爪で調理や接客をする場合は、ビニール手袋を着用し、料理への異物混入を防ぎましょう。また爪に付けるパーツが落ちたり引っかからないように注意しましょう。
姿勢
背筋を伸ばし、顎を引いた美しい姿勢を保ちましょう。猫背や前かがみの姿勢はだらしない印象を与えます。特にホールで待機中は、体の片方に重心を置くような姿勢はNG。また、音が出ない歩き方も工夫し、プロフェッショナルな印象を与える意識を持つことが大切です。
やってはいけない接客NG行動
飲食店の接客では、お客様に不快感を与えるNG行動を理解し、徹底的に避けることが重要です。最も注意すべきはスタッフ間の「私語」です。お客様の目の前やフロア内では仕事の要件以外の会話は慎みましょう。同様に「スマホ操作」もご法度。使用する場合はバックヤードなど、お客様から見えない場所に移動してから使いましょう。
また、「お客様を待たせる」行為も大きな問題です。特に目が合っているのに対応せず、他の作業を続けることは致命的です。「表情の硬さ」にも注意が必要で、無表情や機械的な対応はお客様に冷たい印象を与えます。これらの接客NG行動を意識的に避け、お客様から喜ばれ、信頼される接客を常に心がけましょう。
飲食店の接客用語7選!
接客マナーを身につけたら、次は適切な接客用語の使い方をマスターしましょう。以下の7つの基本フレーズは、あらゆる場面で役立つ飲食店接客の必須表現です。
いらっしゃいませ
お客様を迎える最初の言葉です。明るく元気な声で、笑顔と共に発することが大切です。この一言でお店の第一印象が決まるため、心を込めて歓迎の気持ちを伝えましょう。目線を合わせ、お客様に気づいたらすぐに声をかけることで、大切にもてなす姿勢を示します。
かしこまりました
お客様のご注文やご要望を承諾する際に使う言葉です。「了解しました」よりも丁寧な表現で、お客様への敬意を示します。注文を復唱する際にも使うことで、正確さと丁寧さを同時に伝えられます。やや古風ですが、接客の場では最適な敬語表現です。
少々お待ちください
お客様に待っていただく際の表現です。「ちょっと待ってください」ではなく、この丁寧な表現を使いましょう。具体的な待ち時間がわかる場合は「5分ほどお時間をいただきます」など、より詳しく伝えるとさらに親切です。
お待たせいたしました
お客様をお待たせした後に必ず添える言葉です。料理の提供時や会計時など、お客様を待たせた場面では特に意識しましょう。たとえ短い時間でも、この言葉を添えることでプロの接客姿勢を示せます。長時間お待たせした時やお客様から確認された時などは「申し訳ない」といった表情を添えることを忘れずに。
申し訳ございません
ミスや対応の遅れなど、お客様にご迷惑をおかけした際に使います。言葉だけでなく、頭を下げる仕草も添えましょう。「すみません」より一段丁寧な表現で、真摯に謝罪する姿勢を示します。問題解決への対応も同時に伝えるとより誠意が伝わります。
恐れ入ります
お客様にご遠慮いただく場面で使う表現です。禁止事項をお伝えする際や、ご要望にお応えできない時、要件の導入部分に使うと、柔らかい印象になります。「できません」の一言より、「恐れ入りますが、〇〇のご用意はいたしかねます。申し訳ございません。」と伝えることで、断りを丁寧に伝えられます。
ありがとうございました
お会計時やお見送り時に使う、感謝の気持ちを伝える大切な言葉です。その際の声量は、大きすぎず小さすぎず、その場にふさわしいボリュームがベスト。例えば遠くのポジションから「ありがとうございました」の言葉だけを発する時。自分の近くに別のお客様がいらっしゃるにもかかわらず、突然大きな声を出すと非常に驚かれます。そんな時は、お客様に向かって “笑顔で頭を下げる”といった非言語的コミュニケーションで対応しましょう。更に「ありがとうございました」の後は「またのご来店をお待ちしております」と付け加えると、リピーターにつながる確率はUPします。このプラスの一言が、次回の来店意欲を左右します。
飲食店での上手な接客方法
次は実際の場面でどのように対応すればよいのか、具体的な接客方法を身につけましょう。お客様との接点となる7つの重要な場面について、プロとしての対応方法を解説します。
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お客さまのお出迎えの方法
入口のドアが開いたらすぐに「いらっしゃいませ」と明るく元気な声でお迎えしましょう。この時、手元の作業を中断してお客様に集中することが大切です。目線を合わせ、自然な笑顔で歓迎の意を示します。お客様は最初の印象でお店の評価を決めることが多いため、この瞬間の対応が非常に重要です。
お客さまをご案内する方法
「こちらへどうぞ」と案内する際は、お客様の先頭を歩き、振り返りながらお客様に合わせた速度で誘導します。特に、お子様連れやご年配の方、ヒールを履いた女性には歩くペースに配慮が必要です。また段差のある個所や暗い場所、雨の日などの足元は滑りやすいため、お客様にもその都度、口頭で伝えましょう。
お席に着いていただく際は、「こちらでございます」と声をかけます。着席時に、お客様が上着を脱がれれば、ハンガーをお渡したり、荷物を置く場所が無ければカゴを用意したりと、お客様が快適にお食事を楽しんでいただける環境を整えましょう。
ご注文の受け方
お客様が着席し落ち着かれたら、「本日はご来店いただきましてありがとうございます」とお礼をお伝えしたあと、メニューやタブレットをお客様がすぐに見られる方向に向きを変え、両手で丁寧に渡します。お客様がメニューに迷われている場合は、おすすめメニューや本日の特別メニューがあれば短めにお伝えしましょう。
注文を取る際は、メモやハンディを準備し、お客様の言葉を復唱します。アレルギーや特別なリクエストは、提供可能かどうかキッチンへ迅速に確認。そして、オーダーミスを防ぐために、最後は必ず全て復唱しましょう。
料理を提供する方法
料理を運ぶ際は「お待たせいたしました」と声をかけてから、テーブルに置きます。特にお客様の後ろから提供する場合は、声がけしてから行動します。そして、熱い器や料理は「熱くなっておりますのでお気をつけください」と必ず一言添えましょう。料理の説明が必要な場合は簡潔に。
また、ランチタイムなどは、テーブル全員が同時に食事を始められるよう同じタイミングで提供します。ご注文の料理が全て揃ったかを確認した後は笑顔で「ごゆっくりお召し上がりください」と伝えます。このような、お客様に「選ばれる飲食店」接客の基本スタイルを身に付けましょう。
空いたお皿やグラスを下げる方法
お客様の食事の進み具合を見て、空になったお皿やグラスを適切なタイミングで下げましょう。テーブル脇に置いてある場合は、丁寧な所作で「こちらをお下げ致します。」とお伝えしましょう。下げる際は、できるだけ音を立てないよう注意し、テーブルを乱さないように配慮します。
また、まだ食事中のお客様の前からお皿を下げる場合は「失礼いたします」と一言添えると丁寧です。「こちらのお皿はお下げしてもよろしいでしょうか?」などと尋ねるとより丁寧です。地味な作業ですが上記の動きをスムーズにできるようになることも実は重要ポイントの一つです。
トラブル時の対応方法
クレームやトラブルが発生した際は、まず「申し訳ございません」と謝罪し、お客様のお話をしっかり聞く姿勢を示しましょう。自分で判断できない場合は「少々お待ちください」と伝え、責任者に相談しましょう。どんな状況でも感情的にならず、冷静かつ丁寧な対応を心がけることが、トラブル解決の鍵となります。
また自分が責任者の場合も基本的には上記と同じ対応ですが、日頃からスタッフ間で問題が起こった時の対応のシミュレーションを考えたり練習したりといった時間も作りましょう。
そして、お客様から金品などの要求を過剰にされたり、カスタマーハラスメントに移行していく場合は、警察などに連絡するボーダーラインやお客様への対応策もスタッフ間でシェアしいましょう。他のお客様や従業員、お店を守るためにも大切な心得です。
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お客さまをお見送りする方法
会計時は笑顔で「ありがとうございました」と伝え、お釣りやカードはお客様から見てカードの文字や絵が正面になるように、両手で丁寧にお返しします。レシートも忘れずに渡し、「またのご来店をお待ちしております」と付け加えると良いでしょう。お見送りの際はドアまで見送り、「お気をつけてお帰りください」と声をかけます。天候が悪い日には、足元が悪くなっていることや傘のお忘れがないかなど、何か一言を添えるとさらに心配りが伝わります。最後までプロフェッショナルな対応で、次回の来店につながる良い印象を残しましょう。
電話で予約を受け付ける方法
電話が鳴ったら早めに出て、「〇〇(店名)でございます」と明るい声で応対します。予約内容(日時・人数・名前・連絡先)を復唱して確認し、特別なリクエストがあれば詳しくメモしましょう。予約可能な場合は「かしこまりました。〇月〇日〇時に〇名様でご予約を承りました」と復唱し確認します。満席で受けられない場合は代替案を提案し、最後に「お電話ありがとうございました」と丁寧に締めくくります。なお、「お客様への確認リスト」を作成し、見ながらお聞きすれば新人のスタッフでも対応が可能です。電話での第一印象もお店の評価に直結するため、丁寧な対応を心がけましょう。
まとめ
飲食店の接客は単なる仕事ではなく、お客様の大切な時間を彩る重要な役割を担っています。本記事で解説した基本的な心構え、マナー、そして接客用語・方法を身につけることで、プロフェッショナルな接客スタッフとして成長できるでしょう。
良い接客は顧客満足度を高め、リピーターを増やし、結果的にお店の評判や売上向上につながります。一方で、接客の質はスタッフ一人ひとりの心がけと日々の努力によって磨かれていくものです。お客様の立場に立って考え、チームで協力し、常に学び続ける姿勢を大切にしてください。
この記事の監修
オフィスわんさか 代表 愛嬌接客®専門家
木村美季 きむらみき
飲食業界約34年間携わり、女将として約15年間の飲食店経営の経験を持つ。
延べ34万人以上のお客様を接客した経験から、現在は全国の商工会議所や飲食店・サービス業界にて“リピーターが生まれる接客術”「愛嬌接客®セミナー」を展開中。
元・吉本新喜劇女優というポテンシャルを最大限に活かしたノウハウ「愛嬌接客®」は商標も登録済み。
また、研修や講演・コンサルティングだけではなく、現場の生の声を忘れぬよう、世界中から旅行者が集まる、大阪で一番忙しい道頓堀にて毎週土日、「株式会社くれおーる」の店舗で訪日外国人にたこ焼きを販売している。
《資格・所属など》
箕面商工会議所(登録専門家) /一般社団法人 日本ほめる達人協会 特別認定講師/一般社団法人 楽花成の会 広報(関西飲食店オーナー の会)
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