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【小阪裕司コラム】第106回:声のかけ方をこう変えただけで

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

声のかけ方一つで課題は解決する

 前回、思い込みに気がついて売上が前年比6倍になったお話をした。普段見過ごしていることに目を向け気づくと、ほんの少しの(たいがい費用もほぼかからない)改善で大きな成果につながることが、こういう事例からはよく分かる。そこで今日はこういう話をしよう。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、あるサービス業の方からいただいた、名簿作りに関するご報告だ。
 同店では、改めて既存客とのコミュニケーションを重視し、名簿作りに一年前から取り組んでいる。順調に名簿は増え、すでに四〇〇名以上の名簿が出来上がり、ダイレクトメール(以下、DM)を送るなどしているのだが、ここ数ヶ月、名簿の増加がペースダウンしていた。というのも、これまでは「名簿にご記入頂けましたか?」と訊ね、未記入の方に記入をお願いすることで名簿を増やしてきたのだが、名簿作りが進んできた現在では、来店客の中に記入済みの方とそうでない方がいて、判別がつかなくなってきたからだ。今までのやり方では記入済みの方に再度訊いてしまう恐れもあり、店頭のスタッフにとっては、それがペースダウンの一因にもなっていた。
 そこで店主は思いついた。名簿に記入済みですでにDMを送っている方とそうでない方がいるのであれば、「名簿にご記入いただけましたか?」と訊くのではなく、「お手紙(DM)は届いていますか?」と訊いてみたらどうだろう。そうすれば返答で記入済みかどうかが分かるのではないかと。
 そこで早速実際に、お客さんとの会話のなかでさりげなく「手紙届いてます?」「読んでいただいてますか?」と訊ねてみると、「いつも楽しく読ませていただいてますよ」、もしくは「えっ?何ですかそれ?」の二種類の返事しか返ってこないことが分かった。そこで、未記入の方にはこれまでどおり記入をお願いし、結果、再びペース良く名簿作りが進んだのである。

重要なのは改善点に気づけるかどうか

 店頭での声かけを少し変えるだけでお客さんにもスタッフにも無理のない状況が作れる。また店主はスタッフが訊ねることを忘れないようにこのセリフを紙に書いてレジ横に貼っておいたのだが、こうしたことも効を奏している。こうしたちょっとした気づきと工夫が、顧客名簿という大きな資産をも生み出す。商売の結果がおもわしくないとき、目を向けるべきは目新しい手法やツールではなく、こういうところ。そして重要な点は、改善すべき盲点に気づけるかどうかなのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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