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【小阪裕司コラム】第87回:「店」とは「スペクタクル」

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

盛り上がれる話題は身近なところにある

 今回は、「店」というものの本来の役割にもつながる、ささやかだが学びのあるお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある酒店からのご報告だ。
 同店では、顧客とのコミュニケーション手段の一環として、A4版のニューズレター(以下、NL)を配布している。そのとき、スタッフでもある店主の両親と叔母にも記事を1つ書いてもらっているのだが、先月号で叔母が書いた記事が、ゾウカブトムシの幼虫を触った話だった。
 あなたは、ゾウカブトムシをご存じだろうか?世界最重量級のカブトムシであり、私たちが普段目にする普通のカブトムシより格段に大きい。さらにその幼虫は、大人の手のひら並の世界最大のサイズ。店主の叔母は、まさにその幼虫を触ってきたのだが、記事にも「『かわいいー』と喜んで触っていると、周りはドン引き」とあるくらいの生き物好き。この度、幼虫の大きさを500円玉と比べた写真も提供してくれた。
 さすがに店主、「この幼虫をそのままNLに乗せると、嫌がられるかな…」と思い、写真を加工してリアルさを下げ、小さめに掲載したのだが、インパクトが強い写真ゆえもったいない気もしていた。「好きな人は気になるだろうし、このサイズ感を伝えられないか…」。
 そこで、店頭で見られるようにしようと思いついた。具体的には、写真を実物大に印刷、上から紙で隠して、めくって見られるように。めくり紙には「超巨大幼虫ゾウカブトムシ実物大写真」と書いて、中身の予告を。「虫が苦手な方は絶対に見ないでください」と注意書きも添え、紙の端を折ってめくりやすいようにし、お客さんの目に入りやすい、レジの釣り銭トレーの横に置いた。
 すると来店したお客さんがさっそくめくり始め、続々反応が。「え、本当に? こんなに大きいんですか?」「昆虫好きなんですか?」と、お客さんから話を振ってくれ、大いに盛り上がったとのこと。

ささやかなことでも「楽しい店づくり」に繋がる

 この実践は、まずは店頭でお客さんと共に盛り上がる機会と会話が作れ、「楽しい店づくり」に役立ったというものだが、このようなささやかなことでも、その店に行くたびに、ちょっとした驚きやドキドキ・ワクワク、知らなかった何かを教わる喜びなどがあったら、どうだろう。本来それは「店」の持つ役割。「店」とはそういう意味で、規模の大小に関わらず、お客さんにとっての「スペクタクル」であるべきなのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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