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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
「買えてよかったではなく、会えてよかった」の関係
今日は、顧客との絆作り活動がもたらす成果と幸せのお話。題材は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、水産業を営む方からのご報告だ。
同社は海苔養殖も行い、一般消費者向け商品に加工し販売もしているが、そのなかで、コロナ前には毎月出店していた出張販売先がある。ここ2年ほど、ワクワク系で顧客との絆作りを進めてきた同社だが、今回久々に出店すると、次のようなお客さんの反応が多く見られたとのこと。
例えば80代くらいの女性客。「いつも新聞(ニューズレターのこと)送っていただいてありがとう。あれ、いつも大笑いしながら読んでるのよ。あなた文章じょうずねえ」とニコニコしながら近寄ってきて、「この味付海苔は、辛いの?」とお尋ねになった。そこで、「うちの2歳になる娘も食べるのでたいして辛くはないですよ」と答えると、「あら、あの子、もう2歳になるの?早いねえ」と、会ったこともない彼の娘の話を嬉しそうに話題にし、しばらく雑談した後、海苔を買って帰っていった。(ちなみに、彼の娘はニューズレターにたまに登場している)
次に60代くらいの男性客。「そこの駐車場に“〇〇水産”のワゴンが止まっていたから、もしかして!と思って来てみたらやっぱりいた!!」と、嬉しそうに海苔を買って帰った。
さらに50代くらいの女性客。LINEで配信した「今日、来てますよ!」のメッセージに、「何時までいますか?仕事が終わったらすぐに行きます!!」と即座に反応。実際に来店し、海苔を買って帰ると、数時間後、「お会いできてよかったです」との、お礼のメッセージが。彼の報告書には驚きを込めてこうあった。「海苔が買えてよかったのではなく、会えてよかった!」。
絆が育まれてくることでリピートは安定する
これらの反応は、絆作り活動前にはなかったものと彼は言う。そしてそもそも食べて美味しい同社の海苔。このような絆が育まれてくることで、リピートは安定する。事実同社の既存客リピート率はこの2年で大幅に改善されてきた。そして改めて、と彼は言う。「このように多くの方々から応援していただき、ファンになっていただき、コミュニケ―ションが増えてくるにつれて、益々、生産者としての本分であるモノ作りで、妥協はできないな、という想いを強くしています」。生産者が、安定的なファンに支えられ、一層モノ作りへの意欲を強くし、臨む。これは、生産者と消費者との、最も幸せな関係と言えるのではないだろうか。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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