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ミシュラン掲載のラーメン店「中華そば 多賀野」 。20年絶えない行列の理由とは?
業者さんとも、お客様とも、「長いお付き合い」をすることが大切。 その期待や信頼を裏切らないように、日々努力をしています。
- 高野多賀子(たかの たかこ)/中華そば 多賀野(たかの)
東京、品川区にある下町エリアのひとつ、荏原中延(えばらなかのぶ)。昭和の雰囲気を残したアーケード商店街があるこの街に、地元のおじいちゃんおばあちゃんも、全国から訪れる熱心なラーメンマニアも、一緒になって行列を成すラーメン店が存在する。「中華そば 多賀野」と聞けば、聞き覚えがある人も多いだろう。20年以上前の1996年に創業し、女性店主が作る極上の中華そばということで各メディアに紹介されブレイク。行列店になってからもクオリティを落とさず、ラーメン業界全体がレベルアップした現在も、その魅力は色あせていない。ごく普通の主婦だった高野多賀子店主が、どのようにして今の繁盛店を作り上げたのか。その秘密を紐解く。
主婦からいきなりラーメン屋!?きっかけは些細なことでした
ーー高野さんがラーメン店を始めようと考えたきっかけは何ですか?
私、もともとは主婦をしていまして、子どもが手を離れたのをきっかけに「何か仕事をしたい」と考え始めました。当時、家で(趣味で)ラーメンを作っていたものですから、主人と「ラーメン屋さんがいいじゃない」って話になって。好きなものを作るなら、きっと長続きするんじゃないかと。幸い、手元に若干の資金がありましたので、その資金の中で始められるということも決め手でした。当時は主人がまだフリーで仕事をしていましたし、私が言い出したことでしたから、私が店長ということで店をスタートしました。ーーもともと、ご夫婦は飲食関係での就業経験があったのですか?
いえ、全くなかったんですよ。主人は実家がレストランなので、飲食店のこともよく分かっていましたけど、私はそうじゃなかったので、開店する前の半年くらいは、ほかのラーメン屋さんでアルバイトをしました。でも、主婦は主婦なりのノウハウがありますから、安心、安全な食材や、身体にいいものを優先的に使ったりと、主婦目線のアイディアも出すことができて、主人とお互いの得意分野を持ち寄りながら、協力してやってこれたのかな、と思っています。
また、最初の1年半くらいはお客さんが少なくて。1日にだいたい40人くらい。でも、その分時間はたっぷりあったので、いろんな食材の研究や試作もして、その時の経験が今にもつながっていると思います。ラーメンブーム到来で行列が絶えないお店に
ーーこの場所に出店を決めたのはなぜですか?
実は最初はここではなく、中延4丁目(現在地から500mほど南)でお店を出したんです。そこが家賃も安くて、家からも近かったので。そこでは4年やっていたんですが、行列ができ始めて、ご近所にご迷惑をかけたり、車が通るとお客様にも危険があるということもあり、たまたまこの駅前の物件が出たタイミングで、こちらに移ってきました。ーー行列ができるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
当時はインターネットが普及し始め、いわゆる「ラオタ(ラーメンオタク)」さんが登場した頃で、ラーメンブームだったんです。そんな中で、うちも見つけていただいて、週刊誌でも紹介していただきました。それが最初に、皆さんに名前を知っていただくきっかけでした。
もうひとつは、同じくらいの時期にお店を出された人たちが、魚介系をうたったラーメンを出して、魚介系が流行になり始めていたんですね。私達の店もたまたま魚介の素材を使うラーメンだったので、タイミングが良かったんです。沢山の雑誌などに紹介していただきました。人気ラーメン店、長続きの秘訣は「顔の見えるお付き合い」
ーーなぜ、魚介系のラーメンにしたのですか?
お店を開くと決めた時に、「東京中華そば」を作ろうということで主人と決めて、いろいろと食べ歩いて、その中で、昔からある荻窪や杉並のラーメンが、すごくレベルが高いなと思ったんです。ああいうシンプルで飽きがこない、毎日でも来たくなるようなラーメンを作ろうと思って。そうしたら自然と、魚介系を使うラーメンになりました。ーーずっと20年以上も行列店であり続けていますね。その秘訣は何でしょうか?
開業してからも、使う食材を変えてみたり、その時のブームに合わせたものを出してみたり。いろいろ小さな改良を加えながら、「その時に一番美味しいものを作る」ということで努力をしてきましたので、その結果、ご支持をいただけているのかな、と思っています。
「長くお付き合いをする」ということも、私どもは大切にしていまして、鶏にしても、豚にしても、煮干し関係にしても、できるだけ近所の業者さんにお願いをして、顔の見える人と、長くお付き合いするということにしています。業者さんとの信頼関係があれば、ブレのない食材を優先的に入れていただけますし、それが結果的に、美味しいラーメンに結びつくと思っています。
お客様についても同じです。ここは駅前ではありますけど、よそから流れてくるお客様が少ない駅ですから、平日などは特に地元密着で、「顔が見えるお付き合い」なんです。土日などは、常連のお客様が9時半くらいから並ばれて、常連さん同士で、「あら、先週は来なかったわね」みたいな(笑)。そういう方々の期待や信頼を裏切らないように、日々努力しています。ーー開業から15年以上経ってから、自家製麺を始められたそうですね。
4年前から自家製麺にしました。それまでは麺は業者さんから仕入れていたんですが、これだけお客様に支持されて、並んでいただいて、週に何度も来ていただいているという中で、やはり、「より安心で安全なものを食べていただきたい」という思いが強くなって、麺も自分達で作ることに決めました。主人が麺を打って、私は麺を取って、毎日二人三脚で作っています。
自家製麺を始めて思ったのは、「添加物を加えなくても、こんなに美味しくてちゃんとした麺ができるんだ」ということでした。「どうしてもっと早くしなかったんだろう」って。麺には、私達は夫婦ふたりとも新潟の出身なので、新潟特産の「ふのり」という海藻を少し入れています。保湿性が高くなりますから伸びにくいですし、身体にいいですから。ラーメンはこれからも廃れない。本当にラーメンが好きならラーメン一本でやっていける。
ーー『ミシュランガイド東京』のビブグルマンに、初回の2015年から連続掲載されていますね。掲載のきっかけと、その後の変化について教えてください。
ミシュランは覆面調査なので、知らないうちに来ていただいていたみたいで。ある日突然、お電話をいただき…という感じなんですが、常連さんはちゃんと見てくださっていて、「おめでとう」なんて声もいただきました。でも、特に大きな変化はないですね。海外の方がだいぶ増えたかな、という印象はあります。ーー最後に、これからラーメン店を開業される方にメッセージをお願いします。
「信念」を持っていただきたいと思います。自分がやりたい、作りたい、って思ったものを諦めないでください。半年、1年、3年と、前を向きながら、信念を貫いて継続していけば、本当にラーメンが好きな方であれば、これ一本でやっていけると思います。ラーメンはこれからもずっと廃れないと思いますので、信念を持って粘り強く頑張ってください。高野多賀子(たかの たかこ)
新潟県出身。同郷のご主人と結婚してからは店舗近くの品川区内に暮らし、主婦をしてきた。子どもが小学校高学年になり手を離れたタイミングで、手に職を持つことを決意。当時、自宅でスープから手作りしたラーメンを作っていたことから、ラーメン店を開業することに。自宅に近い中延駅近くに最初の店舗を構え、自らが店主として厨房に立った。開業当初は別に職を持っていたご主人も、今は「大将」として多賀子さんとともに店に立ち、二人三脚で切り盛りしている。
中華そば 多賀野(たかの)http://www.geocities.jp/taganoya/
東京都品川区中延2-15-10荏原中延駅のすぐ目の前にある中華そば専門店。1996年の開業当初は現在地ではなく、隣駅の中延駅近くに店を構えていた。その後次第に行列を成す店となり、往来の安全等を考慮し2000年に荏原中延駅前に移転。以降も行列が絶えない店として、多くの人々に愛され続けている。看板メニューの「中華そば」の他に「ごまの辛いそば」や「酸辛担麺」など、個性派のメニューもあり、それぞれに固定ファンが付いている。以前は夜の営業も行っていたが、2013年の自家製麺への切り替えを機に、昼のみの営業となった。
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