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自動車が通らないタイル敷きの歩道。駅前などに広場があり、街中から歩いてそのまま緑地へ入れるつくりが気持ちいい横浜市都筑区の仲町台。この街の住人の生活にマッチするアイテムを揃える洋品店のオーナーに、今後の展望について、また開業後に迎えたピンチなどについてもお話をいただきました。
目指すは町の情報発信地!この場所で洋服屋を開業しようとした理由とは?
ーーなぜ住宅街にお店を構えたのでしょうか?
僕は生まれも育ちも横浜市北部で、今は仲町台に住んでいます。自然が豊かで歩道も整備されたとても環境のいい住宅街で、30~40代の子育て世代が多く住んでいます。それなのに、仲町台に限らず横浜全体に言えることですが、洋服や靴といったファッションアイテムを扱う店が少なかったんです。
もちろん、横浜港周辺やたまプラーザなどの商業地も考えました。でも、それよりも何もない町に開くことで、「仲町台っておもしろい店があるんだ」と町の魅力に気づいてもらって活性化したら素敵だなと思いました。おこがましいですが、町の情報発信地を目指したんです。ーー店を開くことはいつから考えていたのですか?
学生の頃から自分の店を持ちたいと思っていましたが、いつという明確なビジョンはありませんでした。ただ、前職である革製品メーカーの生産管理の仕事を辞めた時に、手元にある程度の資金があったことと、駅近くにいい物件が出ていたことで「転機」かもしれないと、独立に踏み切ったんです。洋服屋のスタートは商品を揃えること。その方法は?
ーー商品はどのように揃えていったのでしょうか?
とにかくメーカーにメールを送りまくりました(笑)。セレクトショップはメーカーからの買い取り仕入れが一般的。メーカーの開拓が大変だといいますが、そこは苦ではありませんでしたね。前職のおかげで革製品の知識はありますし、学生の頃から食費を削って服や靴にお金をつぎ込むほどファッションが好きでしたから、交渉の際に引けを取ることがなかったんです。むしろ、うちのようなセレクトショップが周辺にないので快諾してくれるメーカーも多かったですよ。ーーどのようなアイテムを扱っているのですか?
「仲町台に住む人たちの生活にあったもの」というのがポイントです。緑道や公園の四季を楽しみ、ゆったりとした時間を過ごすような人が多いので、カチッとしたスーツやパンプス、ハンドバッグは置きません。上質でデザイン性が高いけれど、機能的で長く着られる、普段の生活を少し豊かにするようなアイテムを置くように心がけています。
とはいっても、大前提は自分が個人として感動できるもの。そうじゃないと自信をもって薦められませんから。この秋冬に日本初上陸したノルウェーブランドなど、他の店では扱いの少ないブランドも置いているので、千葉など遠方から来店されるお客様もいます。ファストファッション全盛で、洋服が売れない時代…。厳しいスタートもそのピンチを乗り切る。
ーーそれでは順調に営業されているんですね。
いえいえ、実は開店してからが大変でした。今は洋服が売れない時代ですし、販売員の経験がない僕にはなじみのお客様もいません。それなのにフロンティア精神を出して住宅街に店を構えたので(笑)。開店後しばらくは客足が鈍かったですね。
服は展示会発注が基本なので、売れなくてもシーズンごとに仕入れなければなりません。損益分岐点を超えるようになるまではかなり苦しかったですね。開業資金だけではなく、ある程度の運転資金も用意しておく必要があったと痛感しました。ーーそのピンチをどうやって乗り越えたのでしょうか?
ブログやSNSで積極的に発信しています。ホームページでオンラインショップを展開しているのも、カタログ的に利用して欲しいというのが大きい。SEO対策にもつながりますしね。遠方のお客様が来店してくださるのも、こうした情報発信がきっかけです。
今も仕入れから販売まですべてひとりでこなしていますし、休業日は展示会を巡っていて休みはほとんどありませんが、店を大きくするつもりもないのでアルバイトをひとり雇えるくらいであればいいと思っています。ーーファストファッション全盛の中で開店してちょうど2年。今後の展望についてお聞かせください。
嬉しい誤算だったのが、想定ターゲットより若い20代の男性のお客様が多いこと。今の20代は服にお金をかけないと言いますが、みんながそういう訳ではない。きっかけがないだけなんです。昔は町に洋品店やジーンズ屋さんが必ずあって、そこがファッションの入口だった。それがファストファッションの波に押されて姿を消してしまい、多感な時期にファッションの魅力に触れるチャンスがなくなってしまったんです。
ファストファッションが悪いとは言いません。でもそれだけでは服の本質的な楽しさを味わえません。ファストファッションを含め、いろいろなブランドを組み合わせて、自分なりの世界観をつくって服を楽しんで欲しい。その入口となる『町の洋品店』になりたいと思っています。井本 征志
神奈川県横浜市の北部に生まれる。中学1年生の頃に履いていた靴を笑われたことがきっかけでファッションに目覚め、ファッション、音楽、アート、文学に没頭する学生時代を過ごす。大学卒業後、家具屋、革製品メーカーの生産管理などの職を経て、2015年1月に地元にユーフォニカを開店。50ほどの取り扱いブランドの中には他店では扱いの少ない物も多く、地元はもとより遠方からの客も集めている。
Euphonica(ユーフォニカ)http://euphonica.yokohama/
神奈川県横浜市都筑区仲町台1-33-19ピアッツァ仲町台ノバAEuphonica(ユーフォニカ)
横浜市営地下鉄の仲町台駅からほど近い場所にある洋品店。日常に着られる気軽さを持ちながら、上質さと永続性を備えたファッションを提案し、30代を中心に幅広い層から支持を得ている。- NEW最新記事
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