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パンづくりの奥深さに魅了され、理想とするベーカリーを追い求めて

パン、接客、ローケション。トータルで美味しいと言ってもらいたい

  • 北村 千里/CICOUTE BAKERY(チクテベーカリー)

パンづくりの奥深さに魅了され、理想とするベーカリーを追い求めて_記事画像

長く続けられる仕事をしたいと考え、パン工房・チクテベーカリーを開業した北村千里さん。しかし、売上げが思うように伸びず、悩んだこともあったと言います。さまざまな壁をどのように乗り越えてきたのでしょうか。お店を続ける原動力についてもお話ししていただきました。

映像の仕事からなぜパン屋に?八王子と下北沢、ふたつの「チクテ」の関係とは

ーー元々は、大学時代に専攻していた映像のお仕事をやっていた北村さんが、パンの製造・販売という業種を選択した理由を聞かせていただけますか?
長く続けられる仕事をしたい、という思いがずっとありました。当時は、映像のお仕事だけで食べていくのがなかなか厳しくて。そんなことを考えていた時に、ふとパン屋を思いつき、アルバイトで始めたのがパンとの出会いでした。実は始まりは何となくだったんです(笑)。でも、実際にやってみたら発酵の仕組みや香り以外にもパンづくりの奥深さにどんどんのめり込んでいったのがきっかけです。

映像の仕事からなぜパン屋に?八王子と下北沢、ふたつの「チクテ」の関係とは

ーーリピーターの多いチクテのパン。開業は少し変わった形態ですね。
美大の予備校に通っていた時の友人がいまして、その子といつか一緒に何かやりたいね、という話をしていました。その時はまだ漠然とした内容でしたけど。大学卒業後に、それぞれ別の仕事をしながら準備を進めて、同じタイミングで友人は東京・下北沢に「チクテカフェ」(※編集部注:現在は閉店)を、私は実家を建て変えるタイミングも重なって多摩境の自宅一階にパン工房を構えました。まずは個人のお客様への配送と下北沢のカフェ以外に雑貨屋さんなどにもパンの配達に行っていました。

当時のパン工房は、東京の八王子駅から20分ほど下ったところの多摩境という場所にありました。チクテカフェがあるような場所で工房を開ければよかったんですが、物件を探すとなると家賃も高くて、私が用意していた資金では厳しかったんです。友達同士で事業をはじめると、トラブルが起きた時に大変なので、場所は離れていますけど、お互い「チクテ」という名前を使い、経営を分けて開業しました。

パン屋とカフェの相乗効果!しかし八王子に移転前は人手不足で苦労の日々だった

ーー実際に同じ店名を使い、経営を分けたことでのメリットはありましたか?
「チクテ」という同じ店名でカフェとベーカリーを分けたことで、メディアにカフェが取り上げられれば、必然的にベーカリーも取り上げられ、その逆も然りですよね。そうしたら、お互いの店も知名度も上がるなと。結果、相乗効果になったと思います。

ーー今でこそ、たくさんのお客様に愛されるパン屋さんへと成長しましたが、軌道に乗せるまでの苦労はありましたか?
多摩境ではじめた当初は、スタッフがいなかったのでパン作りから発送作業、配達までをすべてひとりでこなしていました。個人のお客様に地方発送をし、ご紹介いただいたお店に納品するような形を自分だけで捌くのは正直、かなり大変でした。当時は天然酵母を使用したパンというのは、どちらかというと健康志向が強いお客様中心でしたので、店舗を併設してみると近隣の方にはなじみも薄く、思うように売り上げは伸びませんでした。私自身、カフェと二人三脚で経営をしていくつもりだったので、パン作りに対しての覚悟や自信をしっかり持てていなかったのも、今思うとよくなかったのかもしれません。チクテカフェが雑誌で取り上げられたことがきっかけで、カフェで使用していたマフィンが人気となり、パンの注文も少しずつ増えましたが、逆に自分が作りたくてはじめた自家製酵母のパン屋として確立できるように、試行錯誤しながらここまでなんとかやってきました。

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八王子へ移転のきっかけは東日本大震災。当時はパン屋を続けるかどうかまで悩みました。

ーー現在の店舗に移転した決め手は?
前の店舗は駅からも遠く、住宅街にあったので、車でないと来店するのが大変な立地だったんです。決定打は東日本大震災の影響ですかね。ガゾリンの供給が行き届かなかったあの時期に、お客様が一気に離れてしまったんです。パンを発送しようにもうまく手配ができず、パンだけやたら残ってしまって。これから10年先を考えた時に、パンの製造数もパンの質も、機材を含め限界がきていると感じ、正直お店をこのまま続けるかどうかまで悩みました。でも、それでも自分が作るパンを楽しみにしてくれるお客様がまだいるんだと考えた時に、車でも電車でも来やすい環境で、今までのお客様にも足を運んでいただける場所を探した結果、今の店舗と出会ったんです。ここは古い団地でお年寄りの方も多いのですが、幼稚園や学童なども近くて子どもからお年寄りまでが交流を持てる場所ができたらいいなと思い、決めました。また新しい機材を入れることで、これから新たに作るパンにも可能性を感じてワクワクしました。

ーー自分の手でお店をスタートさせたい方へのアドバイスをお願いします。
立ち上げる時はしんどいことも多いですが、自分の意識が開業する方向に強く進んでいると、思いがけない出会いや、周りの人の支援がテンポよく進むタイミングがあると思うんです。それで何とか開業まで辿り着けたとしても、勝負はそこから。
走り出すと挫折や苦労ってたくさんあると思うのですが、お店をスタートさせたからには続ける義務もあるのかなと感じています。継続することで協力してくれた方々に恩返しもできる。自分の感情だけに判断を任せるのではなく、どうにか続けていくことが大切だと、いつも自分に言い聞かせています。

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北村 千里

北村 千里

美術大学卒業後に、パン酵母(イースト)と自家製酵母でのパン作りを修行する。2000年11月に自宅1階で卸と個人配送のパン工房を開業、2002年2坪の店舗を併設する。2013年より東京・八王子へ移転し現在の店舗をスタート。

CICOUTE BAKERY(チクテベーカリー)

CICOUTE BAKERY(チクテベーカリー)http://cicoute-bakery.com/
東京都八王子市南大沢3-9-5 101

2000年11月開業。自家製酵母を使用し、粉と塩と水でゆっくりと発酵させたパンが基本。季節や温度で少しずつ変化する酵母菌と上手く付き合いながら、ひとつひとつ丁寧に焼き上げていく。また温かみのある接客も人気の理由。

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