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個人事業主として開業するには? 必要手続きと注意点を解説

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「会社を辞めて起業したい」「フリーランスとして開業する」「副業で稼ぎたい」などの理由から、個人事業主として開業を目指す人も増えてきています。個人事業主として開業するには、所轄の税務署に開業届けの提出が必要です。この記事では、個人事業主として開業するまでに必要な手続き、開業届を提出するメリットとデメリット、開業届を出すまえに検討すべき注意点を解説します。

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そもそも個人事業主とはどのような人か?

個人事業主とは、対価を得る仕事を繰り返し継続して行い、どこの組織にも所属しておらず、独立している人です。国税庁が個人事業主として例示している職業には、賃貸業や取引の仲介、運送、請負、加工、修繕、清掃、クリーニング、理容や美容、医師、弁護士、公認会計士、税理士などがあります。

個人事業主として開業する場合、開業届けを事業の開始の事実があった日から1ヶ月以内に提出するよう所得税法で定められています。しかし、開業届けを出さなかったからといって罰則などがあるわけではなく後追いで提出可能であるため、個人で事業を営んでいる人の中には開業届を出していない人もいます。

しかしながら、開業届けを提出し個人事業主として事業を行うと青色申告ができるようになり、節税につながるなどのメリットがあります。この青色申告を初年度から利用できるようにするためには期限内の開業届の提出が必要です。
開業届けの提出に関する費用発生もないため、これから個人事業主として開業する方は開業届けを提出することをおすすめします。

関連記事:開業届の必要書類とは?書き方や提出方法をわかりやすく解説

個人事業主の開業に必要な書類は2種類

個人事業主として開業するためには、下記の書類を税務署に提出することが必要です。
・ 個人事業の開業・廃業等届出書(通称:開業届け)
・ 所得税の青色申告承認申請書(通称:青色申告申請書)

個人事業の開業・廃業等届出書(通称:開業届け)

個人事業の開業・廃業等届出書(開業届け)は、個人事業を開業したことを税務署に申告するための書類です。個人事業主になると、事業で得た利益に対する所得税や消費税等の納税義務が発生します。開業・廃業等届出書(開業届け)を提出すると、これら税金に関する税務署からの告知を受け取ることができるようになります。

また、開業・廃業等届出書(開業届け)は、本籍地、居所、事業所がある住所を管轄する税務署で平日の8時30分から17時までの間に申請できます。開業・廃業等届出書(開業届け)を作成する際は、マイナンバーカードを準備し、屋号(仕事をするときの別名)をあらかじめ決めておくとスムーズです。
従業員がいる場合(家族を含む)には追加で書類の提出が必要です。青色事業専従者給与に関する届出書と家族に給与を払う際の給与支払事務所等の開設届出書なども合わせて提出してください。

所得税の青色申告承認申請書(通称:青色申告申請書)

開業届けと一緒に提出したい書類が青色申告承認申請書です。青色申告承認申請書とは、青色申告制度の利用申請をするための書類です。青色申告制度は、所得税の申告のための帳簿を既定された方式で付けることを条件に、所得税の計算上の優遇制度を利用できるようにするものです。青色申告制度を利用することで、最大65万円の特別控除、赤字の3年間の繰越、家族への給与の経費計上などが可能です。

青色申告制度による特別控除や経費申請を利用することで、所得から特別控除や事業経費などの金額を差し引いた額が所得税の対象として計算されるため、所得税としてかかる金額が抑えられ、節税することができます。

青色申告承認申請書の提出期限は、青色申告をしようしている年の3月15日までです。期限を過ぎると原則青色申告することはできません。しかし、新規開業の場合のみ開業日から2ヶ月以内に提出すれば、3月15日を過ぎていても青色申告が可能です。

開業したタイミングで青色申告承認申請書を申請することで、期限に関係なく青色申告制度が利用でき、税制優遇制度が利用できるようになるため、開業・廃業等届出書と一緒に申請するようにしてください。

開業届を提出するメリットとは?

開業届けを出すメリットは、節税効果が見込めることと事業用の銀行口座開設や共済加入ができるようになることです。

青色申告することで節税効果が見込める

開業届を提出する最大のメリットは青色申告での確定申告が可能になり、所得税などの節税の効果が見込めることです。

たとえば、白色申告だと申告特別控除がないのに対し、青色申告だと最大65万円特別控除が受けられます。さらに、事業で赤字が出た場合に損失を翌年3年間繰り越しができる損益通算、事業を配偶者や子どもが手伝ってくれた場合の家族給与の経費計上、自宅を事務所として使用した場合に仕事で使用する割合に応じた家賃や光熱費の必要経費計上など、経費として申告できる枠が広がります。

屋号で銀行口座を開設できる

開業した屋号で事業用の銀行口座を開設することも可能です。仕事とプライベートの口座を分けることで、確定申告などの申告時に銀行預金の記帳を銀行預金の明細として使えるため申請がしやすくなります。

小規模企業共済(独立行政法人中小企業基盤整備機構)に加入できる

個人事業主になると、小規模企業共済(独立行政法人中小企業基盤整備機構)に加入することができるようになります。小規模企業共済とは、退職金がない個人事業主のための退職金の積立制度です。年間の積立金は、所得控除の対象になるため節税にもなります。

開業届を提出するデメリットとは?

一方、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出によって、利用できなくなる制度もあります。

失業保険の受給資格がなくなる

会社を辞めて開業する場合、無職の期間に失業保険を利用する人もいるでしょう。しかし、開業届けを提出すると無職ではなくたるため、失業保険の受給資格はなくなります。

しかし、失業期間中に開業したことをハローワークに申請すると、失業保険の給付制限期間を含めた受給期間のうち再就職する日の1日前までの段階で、受給期間の残り日数が1/3以上残っている場合に再就職手当が受け取れることがあります。税務署での受付印のある開業届けの控えがあると、開業証明として役立ち、再就職手当の申請しやすくなるため、活用してみてください。

なお、個人事業主でありながら、失業保険をもらうことは不正受給となるので注意してください。

扶養から外れるため夫の健康保険を利用できなくなる

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出し個人事業主になると、社会保険が健康保険は国民健康保険となり、年金は国民年金になります。

妻が個人事業主として開業した場合、夫の健康保険の扶養から外れる可能性もあります。扶養の対象として認められるかどうかは、夫の健康保険組合の規定によるため、開業前に確認しておくとよいでしょう。また、事業を進めていく中で妻の所得が103万円以上あると、扶養控除はもちろん、配偶者控除も受けられなくなります。

開業届作成、提出時の注意点

最後に開業届けの作成、提出時の注意点を紹介します。

開業届の作成

個人事業の開業・廃業等届出書に記載する項目は、納税地として自宅・事務所の住所、名前、職業、屋号を記載し、マイナンバー(個人番号)も記入します。屋号は自分の好きなもので良く、屋号がない場合には空欄のままでも提出できます。

開業届に記載する日付については注意が必要です。書類提出日は届出書の記載日ではなく提出日になります。提出の直前に日付を入れるようにしてください。また、開業日は個人事業を開始した日となります。

開業届の提出

開業届を提出する際は、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出しましょう。提出の際は、本人確認書類の提示が求められます。運転免許証やパスポートなどの身分証、印鑑も忘れずに持参してください。開業届の提出は、所轄の税務署に持参する以外に、郵送、もしくはe-Taxからの申告も可能です。

まとめ

個人事業主としての開業の手続きは、「個人事業の開業・廃業等届出書(通称:開業届け)」と「所得税の青色申告承認申請書(通称:青色申告申請書)」の2つの書類提出になります。事業を開始したら、1ヶ月以内に管轄の税務署に開業届と青色申告申請書を提出するようにしましょう。

この記事の監修

株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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