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知識や経験を活かして独立開業(起業)したいという夢を見ている人は少なくありません。
しかし、夢を形にするには様々なステップを踏む必要があります。
この記事では、個人事業主として飲食店を開業し、店舗を構えることを志している方に向けて、開業の際に必要な準備とそれぞれの基礎知識について説明します。開業までのステップバイステップ
業種や条件によって多少の変化はあるものの、開業の準備期間はおよそ1年程度と見積もるのが一般的と言われています。
ここでは準備期間中に踏むべきステップを大きく7つの項目に分けて紹介していきます。(1)コンセプト作り
開業準備の最初の第一歩はコンセプト作りです。
コンセプトとは、言い換えれば「どのようなお店にしたいのか」を言語化したもの。
コンセプトを決めることでお店の売りと方向性が明確になり、ブレのない店舗づくりと経営方針の設計ができるようになります。
地に足の着いたコンセプトを考えるためには、まず目標を細分化することが重要です。
「誰に来店してもらうか・何を提供するか・どのように利用されるか」といった観点から考えていきましょう。
■誰に来店してもらうか
どのようなお客様にご来店いただきたいのかをイメージすることで、立地や価格帯といった店舗に求められる要件も整理できるでしょう。
極端な例ですが、「男子高校生が部活帰りに寄る飲食店」であれば、一等地の高級フレンチと学校付近の定食屋のどちらがよりニーズに適っているかは明白と言えます。
・年齢と性別
・職業
・収入
・家族構成
・来店する時間
こうした要素を定義することで、ターゲットを明確にしていきましょう。
■何を提供するか
あなたのお店はどのような商品やサービスを取り扱うのでしょうか。
開業を考えている方であれば業態は漠然とイメージできているかもしれませんが、実際に開業して店舗を運営していく際には、具体的にどういったものを提供するのかも考えなくてはなりません。
たとえばオーガニック食材にこだわったレストランや、何年もかけて開発したスープで勝負するラーメン屋など、「お客様に提供したいものの核」が明確になっていれば、仕入れやメニュー作成を考える助けになります。
■どのように利用されるか
「お客様はどういった体験を求めてお店を利用するのか」という観点も重要です。
仮にカフェを開くとしたら、あなたのカフェはお客様にとってどのような場所になるのかを考えてみましょう。
ゆっくりとくつろげるお店、仕事や勉強ができるお店、あるいはデートで訪れるおしゃれなお店など、お客様から見たお店の価値は何なのかをイメージすることで、内外装はもちろんサービスのオペレーションを作成したり、どういった従業員を雇うべきか考えたりする際の指針になるでしょう。(2)事業計画書の作成
事業計画書は金融機関から融資を受ける際の説明資料として用いられる重要なものであるほか、自分の事業を客観的に見つめ直すシミュレーションとしての役割も併せ持っています。
事業計画書の書き方は人によって様々ですが、以下のような内容をまとめるのが一般的です。
・事業の内容や動機
・事業主の経歴
・収益の見込み
・開業資金と運転資金
・経営戦略
中でも特に重要なのは収益の見込みです。
上述したとおり、事業計画書は銀行などから融資を受ける際の審査にも影響するため、融資担当者に対して「開業から○年間でいくらの利益を上げ、遅滞なく返済できる見込みだ」と説明できるような具体的な損益の予測を立てる必要があります。
客単価や回転率といった指標を設けて売上予測を立て、仕入れ(売上原価)や運転資金といったコストを見積もることで、信憑性の高い損益予想を立てることができるでしょう。(3)開業資金調達
開業に必要な資金を調達するには、自己資金(自分で用意可能なお金)の他に金融機関から融資を受ける方法が一般的です。
その際、借入先として多くの方が利用しているのが日本政策金融公庫の創業融資制度です。
財務省所管の公的な金融機関である日本政策金融公庫は、一般金融機関よりも融資を受けやすかったり、自己資金が少額の場合でも融資を受けやすかったりといったメリットがあります。
なお、開業資金は「物件取得費」「内装・設備導入費店舗投資」「運転資金」「生活資金」などに分けることができます。
●物件取得費
店舗物件を借りる際の保証金や礼金、仲介手数料などの費用
●内装・設備導入費
内装工事費用や厨房機器導入費のほか、什器など各種消耗品の購入費
●運転資金
仕入れや店舗家賃、光熱費、人件費など開業後にかかる各費用を賄うための資金
●生活資金
自身や家族を養うための貯蓄
一般的に、飲食店経営が軌道に乗り、売上が安定するのは開業から3ヶ月~6ヶ月ほど要すると言われています。運転資金や生活資金は、売上から賄えるようになるまでの間の3ヶ月~6ヶ月分を目安に準備しておくといいでしょう。(4)物件探し
店舗型ビジネスであれば、物件探しは事業成功の明暗を分ける生命線と言えます。
しかし、物件の良し悪しというものは相対的な評価であり、どんなビジネスモデルにもぴったりとフィットするような完璧な物件などありません。
そこで、物件探しをする際には今一度コンセプトと事業計画に立ち返り、物件の条件を明確にしていく必要があります。
・そもそもどのようなお客様がターゲットなのか
・ターゲットはどういったエリアで集客できるのか
・賃料にかけられる費用はどのくらいか
こうした条件を明確にした上で、「広さ」「周辺の環境」「付近の同業店舗数」といった要件とすり合わせをしていきましょう。
すべてが希望通りとはいかなくとも、絶対に外せない要件や、逆に妥協ができるポイントもあるはずです。
物件探しは考慮すべき材料が多く、開業準備のなかでも非常に時間のかかる工程です。
しかし、焦らず一つずつ条件を固めていくことで理想と現実の乖離を防ぐことができるでしょう。(5)店舗の内外装工事(店舗づくり)
内外装をデザインするということは、言い換えると「店舗のコンセプトを具現化する」ということです。
お客様から見て、そのお店から得られる体験がひと目でイメージできるようなものが望ましいと言えます。
・ターゲットにあなたのお店をどう見せたいか
・あなたのお店はターゲットにとってどのような価値があるか
・事業内容との整合性が取れているか
こうした軸を持って内外装のデザインに臨むことで、一貫性のあるお店づくりが可能になります。
施工業者に工事を依頼する際には、実在するお店などを参考にし、雑誌や写真などを通じてイメージを共有することも大切です。
また、これらと並行して店舗の設備や備品も揃えていく必要があります。
事業によって必要なものは様々ですが、たとえば飲食店であれば客席用のテーブルや椅子、食器、厨房機器が必要になるでしょうし、お客様が利用する傘立てなど細かいものまで、抜け漏れがないようリストを作成し、事業のスタートに備えましょう。(6)提供商品と仕入先を決める
お店で実際に提供(販売)する商品を決め、それらの仕入先を決めていきます。
仕入は提供するサービスの質を左右する要素であり、なおかつ利益を上げるためには原価率を考慮に入れる必要もあるため、決してないがしろにはできない重要な要素です。
さらに、一口に仕入先と言った場合でも、メーカーから直接仕入れたり、卸売業者(問屋)から仕入れたり、あるいはネットショップで仕入れたりと選択肢は様々です。
あなたの店舗に合った仕入先を見つけるためには、以下のような場所に足を運んでみるのも良いでしょう。
・ギフトショー
・見本市
・問屋街(名前の通り問屋の多く立ち並んだ街)
・業界専門誌
ギフトショーや見本市、問屋街では、自分の目で直接商材を確認したり、仕入業者と交渉ができたりするのもポイントです。
仕入先はいわばビジネスパートナー。
しっかりと信頼関係を築ける相手を探しましょう。(7)営業準備・採用
お店と商品を用意したなら、いよいよ営業開始に備えます。
具体的な店舗のオペレーションを決めたり、販売促進活動を行ったり、従業員の募集をかけたりと、すべきことは多岐にわたります。
■オープンの告知
オープン前から店舗の情報を発信し、客様から認知してもらうことで、実際にオープンした際の集客につなげることができます。
自作したチラシを配布したり、SNSで告知を行ったりといった0円集客から、お金をかけて地方紙やフリーペーパーに広告出稿するなど様々なアプローチがあります。オープンまでのスケジュールや費用と相談しつつ、ターゲットに訴求する方法を考えていきましょう。
■従業員の採用
従業員を採用する場合にも、求人情報誌や求人情報サイトへの求人の掲載、ハローワークなどで募集を行うことになります。
ただ単に人を雇えばいいというものでもないので、「どんな人に働いてほしいのか」という採用基準を作成する必要があるでしょう。
また、採用したらそれで終わりというものではありません。
シフトの管理も必要になりますし、給与計算の方法も整備しなくてはならないので、採用スケジュールには余裕を持ちたいところです。
■各種マニュアルの作成
接客、会計、清掃、備品の管理など、店舗運営の具体的なルールを決めます。行き当たりばったりの運営をしてしまうと、思わぬトラブルが発生した際に混乱してしまいます。
お店を開いてから閉めるまでの業務を洗い出し、抜け漏れがないように入念にイメージしましょう。開業資金の相場は?
飲食店を開業する場合、開業資金として必要な金額の相場は1,000万円と言われています。ただし、これはあくまで目安であり、店舗の場所や規模、コンセプトなどの経営計画などによって大きく異なります。
開業資金は大きく4つの費用に分けることができます。
①物件取得費用
②内装・設備導入費用
③運転資金
④生活費
これらの費用を個々に算出することで、開業時に必要な資金がより具体的になります。
関連記事 開業の支援制度にはどんなものがある?創業に関する相談窓口を設ける機関も紹介!物件取得費用
物件取得費用は、店舗を借りる際に発生する様々な費用の総称です。具体的には、入居保証金、礼金、仲介手数料などが含まれます。一般的な相場では、入居保証金は一般的に家賃の6~10ヶ月分程度のことが多く、礼金と仲介手数料はそれぞれ1~2ヶ月分程度のことが多いようです。
以下の表は、家賃が10万円の物件を借りる際の総合的な物件取得費用の概算を示したものです(保証金が10ヶ月分、礼金、仲介手数料がそれぞれ1ヶ月分の場合)。
相場 費用 保証金 10ヶ月 100万円 礼金 1ヶ月 10万円 仲介手数料 1ヶ月 10万円 合計 120万円
これは店舗を借りる際の一般的なケースに当てはめたものです。
内装・設備導入費
物件を取得した後にかかる重要な費用の一つが内装・設備導入費です。これは「店舗投資費用」とも呼ばれ、店舗の業種やコンセプトに適した内装工事や厨房機器、什器などの導入費用を指します。内装工事の費用は通常、1坪あたり30万円から50万円と言われています。
ただし、この費用は物件取得費用とは異なり、こだわればこだわるほど費用が高くなる傾向があります。費用を抑えたい場合は、居抜き物件を探したり、DIYを活用するなどの工夫が必要です。これによって、内装工事や必要な設備を抑えることができます。
運転資金
運転資金は、開業後にかかる様々な費用をカバーするための資金です。具体的には、仕入れ費や店舗家賃、光熱費、人件費などが含まれます。これらの費用は、売上と直接関係ない固定費と、売上に応じて日々変動する変動費に分類されます。
飲食店を経営する上で必要な主な費用は、次のように分けられます。
【固定費】
●店舗家賃
●人件費
【変動費】
●仕入れ費
●消耗品費
●光熱費
飲食店は基本的に現金商売なので、立替払いの生じる製造業などに比し多額の運転資金は必要としません。しかし最近ではキャッシュレス決済が普及していることや、何らかの理由で休業せざるを得ないリスクなどを勘案すると最低でも3ヶ月、可能であれば6ヶ月分程度の運転資金を確保しておくことをお勧めします。生活費
生活費とは文字通り自身や家族を養うための費用です。忘れられがちな費用ですが、経営が軌道に乗るまでの間、収入はほぼゼロになってしまうため、必要な生活費を計算して蓄えておくようにしましょう。
一般的に、飲食店経営が軌道に乗り、売上が安定するのは開業から3ヶ月~6ヶ月ほど要すると言われています。運転資金や生活費は、売上から賄えるようになるまでの間の3ヶ月~6ヶ月分を目安に準備しておくといいでしょう。カフェでの例
開業前に必要な資金の内訳が理解できたところで、カフェ開業を例に資金のシミュレーションを行ってみましょう。
店舗は東京都世田谷区にある10坪の貸店舗。飲食店ドットコムによると、ここ1年以内における(2024年3月時点)世田谷区の店舗家賃相場は1坪当たり2万5千円のため、家賃は25万円ほど。
これを上述の物件取得費用の計算に当てはめると、家賃25万円の物件取得費はおよそ325万円となります。
次に運転資金の計算です。毎月かかる費用を細かく算出すると、アルバイト一名の人件費18万円、水道光熱費8万円、通信費や税理士などへの手数料5万円、消耗品費・雑費など8万円の経費がかかると考えられます。そこに家賃25万円を加えた必要経費は64万円です。
さらにこの規模の店舗を維持していくには毎月140万円程度の売り上げが必要であり、原価率を30%とすると仕入れ資金はおよそ42万円。
以上をもとにすると、運転資金は仕入れ資金1ヶ月分(42万円)+経費3ヶ月分(64万円×3)で、最低でも234万円が必要となります。
そのほか、内装・設備導入費を500万円、生活費を75万円(1ヶ月25万円×3ヶ月分)とした場合、概算ではありますが、東京世田谷区で10坪のカフェをオープンする場合、1134万円ほどの開業資金が必要となります。
項目 金額 物件取得費用 325万円 内装・設備導入費 500万円 運転資金 234万円 生活費 75万円 合計 1134万円
なお、カフェの詳しい開業シミュレーションは以下の記事でも紹介しています。
関連記事 カフェを開業するために必要な資金はいくら?資金の目安や調達方法を解説まとめ
ここまで開業までの手順と必要な資金について確認してきました。しかし、開業までの道のりは予期せぬ課題に直面するかもしれません。物件探しに難航したり、内装工事費用や資金の調達に苦労したりすることもあります。これらの問題に一つずつ対処すると、開業までの時間が予想以上にかかる可能性があります。そのため、いくつかの工程を並行して進めることが重要です。
開業資金についても必要な費用を細かく計算しましょう。各費用項目にどれだけの費用が必要かを把握することは、事業計画書の作成や資金調達の際に重要です。具体的な数字を示すことで、金融機関からの融資が受けやすくなります。
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