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儲かっていても給料は上がらない!?スタッフが辞めていかざるをえない仕組みを知ることの意味とは?

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2013年にAmazon「会社経営」「企業革新」「企業経営」「投資・金融・会社経営」で1位を獲得した本『小さくても儲かる会社をつくれた4つの秘訣』の著者・森田健太郎氏は、IT系の会社で起業しながら、ヘアサロン事業、飲食事業も立ち上げ、大成功したビジネスパーソンだ。森田氏の成功談を基に具体的に「お店」で成功する秘訣をたっぷりお話しいただいた。6回連載でお届けする。

「頑張ったら給料上げてやる」はウソ!? 計算上、給料はたくさん上げられないようになっている

――社会保険が完備されていないヘアサロン業界において、社会保険はもちろん、「お金持ちになる仕組み」を提供するのは、画期的ですね。

森田:飲食やヘアサロンなどのいわゆる労働集約の業態では、スタッフの給料の手取りって、限界があるので、新たな仕組みを導入できるかは、社長の責任だと思っています。僕は、本当に、社内メンバーのことを考えて、この仕組みを作っているんです。
よく飲食店のオーナーが「お前ら、頑張ったら給料上げてやる」って言いますよね。でも、あれは全部無理な話なんです。僕の知り合いのIT系企業の社長で、社員数100人、経常利益3,000万円が出ている会社があります。僕が前にいた会社は経常利益6,000万円で上場していますから、3,000万出ていれば素晴らしい会社です。でもその社長が僕と飲んでいるときに、「社員の給料を月3万円も上げることができない」と言っていました。3万×100人で月に300万、年間3,600万円消える。つまり、それだけ優良な企業でも、スタッフひとりに3万円の昇給が出来ない。それが日本の経営の実態なんです。ある大手美容チェーンを調べたことがありますが、すごく儲かっていても、スタッフの給料は上げられて月1万7,000円。社員は1,500人以上で、お店は180店舗、伸びているランキングでも1位を取っているようなところですよ。それでもたかだか月1万7,000円です。ところが、世の飲食店オーナーは「どんどんお店を出して、お前たちが店長になって偉くなれば、給料を上げてやる」と言います。でもそれは、現実的に考えるとなかなか難しい。例えば、1店舗に10人のスタッフがいたとします。2店舗目を出すときに店長になれるのは、その10人のうちのひとりですので、10分の1の確率です。3店舗目になると20分の1です。多店舗になればなるほど、偉くなる道は閉ざされるんです。ある一定のスタッフが辞めるお店ならチャンスはありますが、ほとんどスタッフが辞めないお店だと、出店すればするほどえらくなれない。そして、人件費も上げられなくなる。それが現実です。スタッフは本当のことを知るべきです。だいたい店長になったとしても、給料が1万円とか1万5,000円とか増えるくらいだろうと。源泉徴収引かれたら、一体いくら残るんだよ、という話ですよ(笑)。社長は辞めさせないために言っているだけですから、そういう嘘の情報に惑わされてはいけません。本当のことは、お店を出せば出すほど偉くはなれない。社長自ら、ある程度でスタッフが辞めていかざるをえない仕組みを作っているんですよ。

給料が上がるよりも、現実的で画期的な雇用を維持する制度とは?

――外食産業の人手不足の理由は、こういうところにあるんですね。

だから、僕が目指しているのは、月1万円とかの給料が上がる仕組みではありません。ひとつは、説明した300万円貯めたら投資に相乗りできる制度。それから、もしお金が貯まらないのなら75歳まで雇用を維持する制度。この雇用を維持する制度は、まだ未知数でできるかどうかはわかりませんが成功させたい制度です。シャープもパナソニックも、絶対リストラしないと言いつつ、結局しちゃったわけですから。最初は僕も、美容師は55歳、60歳になると髪も切れないし、続けられないと思ったんですよ。どんなに頑張ってもね。それでね、バーテンだったらできるんじゃないかと思ったんです。バーテンなら、年をとっていても様になるでしょ。だからカンボジアにバーを出したの。そうやって、僕の場合、すべてがつながっているんですよ(笑)。

――なるほど。ヘアサロンのスタッフのセカンドライフのために開業したんですね。

ひとりね、腱鞘炎で髪が切れなくなって辞めたいというスタッフがいたんです。今年52歳になるスタッフで、「針治療して何しても駄目なんです」と。それで、僕は、「わかった。カンボジア行って来い!」と言いました(笑)。そして、1ヵ月、カンボジアに行かせて、バーテンさせてみたわけですよ。そしたらね、腱鞘炎が治りました(笑)。で、今でも髪を切っています(笑)。最初、彼は「社長、嫌です。行きたくないです…」って言っていたんです。でも、僕は、「いいから、行ってこい!」と(笑)。そしたら1ヵ月間働いて、送別会とかやってもらって、離れるの寂しくて帰国前日、感動して泣いてたって(笑)。もうね、目いっぱい楽しんだみたい(笑)。そういう環境を提供してあげるのは、社長の役目だと思ってるし。

――「働く選択肢」。こういう選択肢もありですね。

それが、うちのヘアサロンのよさです。今、不動産をたくさん買おうとしているのは、マンションの管理人のポジションもできるからですよ(笑)。事業を拡大していくと、外注せざるを得ない部分ってありますよね。でも僕は、そこを自分たちの社内メンバーであてがおうとしているわけです。そうするとコスト削減にもなる。外注のほうが高いですからね。そういう風な形にビジネスを展開して、シナジーを産もうとしています。

儲かりすぎてやばい(笑) 年度末にやるのは「節税パーティ」

――シナジーというと、異業種間での買収や連携を思わせますが、森田さんの話を聞いていると人が中心ですよね。

僕、買収してどうのこうのとか興味がないんです。今のうちのメンバーが、働けるかどうかだけを考えているので。本『小さくても儲かる会社をつくれる4つの秘訣』を出したころは絶頂期ですけど、そういうのは考えなかった。だってこのころ、やばかったんですよ、儲かりすぎて(笑)。

――無理やり売上を下げると本には書かかれていましたよね。今でも税金対策で、年度末に社内のメンバー全員でふかひれのコースを食べるとか(笑)。

こういうのが、わかりやすいんですよね。それをやったからって大きく節税できるというわけでない。ただネーミングは「節税パーティ」。ネーミングにはこだわっているんですよ。みんなのための「節税パーティ」。そういうのが大事です(笑)。

本気の「スタッフへの想い」が働きがいを生み出す

――今、社会に「働き方改革」の流れがあって、さまざまな会社が社内のアメニティを働く人の目線で充実させていく方向にありますよね。

アメニティがあるからやめないか、といったら、そうでもないですけどね。最近、育休から復帰したスタッフがいて、今育休しているスタッフも「死んでも復帰する」って頑張っている(笑)。彼女はなんとしてでも子どもを保育園に入れるんだ、って言っています。それはアメニティどうのという問題ではない。みんなうちの会社でずっと働きたいと思ってくれている。

――森田社長の「スタッフへの想い」が多大なるオプションになっている?

雇用の維持については取り組んでいるものの、本当に75歳まで雇用が継続できるかわからないですよ。 でも、僕が起業して、今年で12年目。最初の5年はがむしゃらですし、朝昼晩なにもないってくらい死にものぐるいでやっていました。それで、6年目に美容院をオープンしましたよね。今またそれから5、6年たったわけですよ。もうね、カンボジアにバーもあるし、農業もあるし、不動産もあるし、5年ですごく大きくなっている。たぶんあと5年で、会社はもっと大きくなっているはずです。

――日本で飲食店を展開することは考えていないんですか?

やらないですねぇ。そりゃよく飲んでいますから、視野に入ったことはありますよ(笑)。うちの会社は定時の18時には帰れるので、長い時間飲めますしね。ただね、自分のお店を作っても、僕は飽きちゃうと思う。それに飲食店は、すごく細かい数字でチューニングをしなくちゃいけない。カンボジアでバーをやっている関係で、飲食店の社長の方々ともお話をさせていただくのですが、飲食店の利益率はすごくいいところでも5%。普通は2、3%だというんです。まあ、原価があるからだと思うのですが。

――飲食店の経営には不向き?

僕は結構、スタッフに好きにやってよいぞ、という経営をしているので、細かい数字を追うというか、そういうのが性に合わないんです。例えば、ついこの前、美容院のトップが「社長、ニューヨークに行っていいですか?」と言ってきました。「いくら?」と聞いたら「50万円ぐらいです」。まあそれで簡単にOKを出しました。ほかには、スタッフが好き勝手に椅子を買ってきても、「あれ、なんか新しいものが増えたね」みたいな。要するに決済がないんです。これは絶対に飲食店ではありえません。うちは、お店のメンバーとの飲み代だって、ある程度経費が許されている。それでもきちんと利益を出していますしね。そのかわり通常の仕事は大変ですよ(笑)

――飲食事業とヘアサロン事業、お店経営ってそんなに違うように見えないのですが、やはり違いますか?

そりゃ、粗利が違いますから。うちの会社のヘアサロン事業部門は粗利93%です。美容院はカラー剤ぐらいしか原材料費がかかりません。原価計算が難しくなくていいんです。

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■プロフィール

森田健太郎
1967年広島県生まれ。日本大学大学院理工学研究科物理学専攻博士前期課程修了後、KDDI株式会社に入社。1年間システムエンジニアを経験し、営業部門に異動。2年後、実績が新聞、雑誌などに多数取り上げられ、注文が殺到。東京支店達成率ナンバーワンに躍進。
1998年、ヘッドハンティングによって外資系ソフトウェア会社であるマカフィー株式会社に転職。1999年に日本でナンバーワンセールスとなり、2000年8月には世界ナンバーワンセールスアワードをハワイで表彰。同年11月、最年少部長に昇進。9四半期連続で目標達成という偉業を成し遂げる。
2001年、独立系ソフトウェアベンチャー企業にヘッドハンター経由で役員として転職。入社してわずか4年で売上を13倍にする。
2006年3月、株式会社グリーンツリーを設立。初年度からホームページを容易に制作できるソフトウェア販売(CMS業界)でトップレベルの会社に躍進させる。設立から現在までずっと黒字経営を続けており、2012年11月にはホームページ累計導入社数が1,000社を超える。
2011年11月、コンビニの5倍もある美容事業に参入し、一号店を3カ月で黒字化させる。
2017年11月現在、ホームページ導入社数は約2,000社、美容室は4店舗、一般社団法人 日本優良品協会 監事なども務める。

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