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日本人が大好きなコンテンツといえば「グルメ」。テレビや雑誌、SNSなどでグルメに関する発信を見ない日はなく、グルメ番組の多さは世界から見ると異質なほど。そんな「食」にかける想いが一際アツい日本では、1970年代頃からグルメ漫画がブームとなり、食文化が多様化するとともにグルメ漫画もさまざまなテーマを扱うようになりました。
そこで今回は、数多くあるグルメ漫画の中から、飲食店経営者が読むべきグルメ漫画をピックアップ!グルメ漫画を通じて、食のトレンドや飲食店経営に関するヒントを探っていきましょう。
目次
- グルメ漫画もコンセプトが際立つ時代に
- グルメ漫画が飲食業界にもたらす影響とは
- ひとりめしを楽しむ心情がわかる3作品
- ■「ひとりで飲めるもん!」(コナリミサト)
- ■「ワカコ酒」(新久千映)
- ■「野原ひろし 昼メシの流儀」(塚原洋一)
- 実在の店舗が登場!人気の秘密を探る6作品
- ■「ラーメン大好き小泉さん」(鳴見なる)
- ■「いつかティファニーで朝食を」(マキヒロチ)
- ■「おしゃべりは、朝ごはんのあとで」(秀良子)
- ■「そうだ、食べ放題いこう。」(西つるみ)
- ■「忘却のサチコ」(阿部潤)
- ■「めしばな刑事タチバナ」(原作:坂戸佐兵衛/作画:旅井とり)
- 販売のヒントに!お取り寄せ人気に火をつけた3作品
- ■「おとりよせ王子 飯田好実」(高瀬志帆)
- ■「先生のおとりよせ」(漫画:中村明日美子/小説:榎田ユウリ)
- ■【番外編】「おもたせしました」(うめ[小沢高広・妹尾朝子])
- 街に溶け込む飲食店のヒューマンストーリーを描く2作品
- ■「たまこ定食 注文のいらないお店」(野崎ふみこ)
- ■「29時の朝ごはん」(佐倉イサミ)
- レシピ付き!ほのぼのグルメ漫画4作品
- ■「きのう何食べた?」(よしながふみ)
- ■「舞妓さんちのまかないさん」(小山愛子)
- ■「甘々と稲妻」(雨隠ギド)
- ■「花のズボラ飯」(原作:久住昌之/作画:水沢悦子)
- 個性が際立つ、ニッチなグルメ漫画3作品
- ■「山と食欲と私」(信濃川日出雄)
- ■「サチのお寺ごはん」(作画:かねもりあやみ/原案協力:久住昌之 /監修:青江覚峰)
- ■「まどろみバーメイド」(早川パオ)
- 番外編!王道グルメバトル漫画&異世界系グルメ漫画4作品
- ■「食戟のソーマ」(原作:附田祐斗/作画:佐伯俊/協力:森崎友紀)
- ■「トリコ」(島袋光年)
- ■「ダンジョン飯」(九井諒子)
- ■「とんでもスキルで異世界放浪メシ」(原作:江口連/漫画:赤岸K/キャラクター原案:雅)
- グルメ漫画で多彩な食のニーズを学ぼう
グルメ漫画もコンセプトが際立つ時代に
グルメ漫画が台頭してきたのは1970年代。『包丁人味平』(原作:牛次郎/作画:ビッグ錠)で料理を競うストーリーが描かれるようになると、外食が根付いた80年代にはグルメを批評する『美味しんぼ』(原作:雁屋哲/作画:花咲アキラ)、男性が家庭料理を作る様を描いた『クッキングパパ』(うえやまとち)がヒットし、グルメ漫画が一大ジャンルとして確立しました。
90年代に入るとグルメバラエティ「料理の鉄人」の放送や、世界各国の料理店が街中に溢れるようになり、漫画も『将太の寿司』(寺沢大介)や『中華一番!』(小川悦司)などさまざまな料理人にスポットライトが当たるように。さらに、グルメを楽しむ人の視点に立った『孤独のグルメ』(原作:久住昌之/作画:谷口ジロー)『ラーメン発見伝』(原作:久部緑郎/作画:河合単 )の連載もスタートし、おいしそうな料理を頬張る姿を描くストーリーは現在まで続くグルメ漫画ブームの中心となっています。
そして、飲食店にもコンセプトが求められるようになった昨今では、グルメ漫画が扱うテーマもよりニッチさを増してきました。実在する飲食店を作中に描いたり、スイーツ、ワインなど一つのカテゴリーをフォーカスしたもの、「ひとりめし」「おうちごはん」ブームに乗った作品、さらにはグルメを「バトル」や「異世界」と掛け合わせてみたりと細分化と多様化が進むグルメ漫画は、読者を飽きさせることなくさまざまな話題を提供しています。グルメ漫画が飲食業界にもたらす影響とは
実在の飲食店を描いたグルメ漫画は、紹介された店舗に客が殺到するなどのわかりやすい影響を与えますが、それだけではありません。さまざまな切り口で「食」を魅力的に描くグルメ漫画は、新たな「食」との出会いの宝庫です。
特定の食べ物との出会いをはじめ、飲食店の楽しみ方、食事をする多彩なシチュエーション、テイクアウトやお取り寄せの良さなどをグルメ漫画は教えてくれます。内容が魅力的であればあるほど、物語の中の食体験を実際に味わってみたいと思う人が増え、新たな飲食トレンドにつながっています。
さらに、グルメを楽しむ人だけではなく、料理人や飲食店のオーナー、生産者などさまざまな視点から描くグルメ漫画には、飲食店を繁盛させるヒントが満載です。人はどんなグルメに惹きつけられるのかを読み解くことで、顧客のニーズを汲み取ることができるでしょう。
下記の記事でご紹介した王道グルメ漫画とあわせて、チェックしてみてください。
関連記事 グルメ漫画が与える飲食店への影響を考えてみた
ひとりめしを楽しむ心情がわかる3作品
コロナ禍の影響もあり、「おひとりさま」や「ひとり飲み」「黙食」が定番となった今こそ、ひとりめしを楽しむ心情を探るのにぴったりな作品を紹介します。
■「ひとりで飲めるもん!」(コナリミサト)
大ヒットドラマ『凪のお暇』の原作者として知られるコナリミサトの、チェーン店を舞台にした“ひとり飲み”漫画です。才色兼備で仕事もデキる女・紅河メイは、チェーン店で食事をとりながらサクッと飲むことが密かな楽しみ。天丼屋、立ち食いソバ、駅ナカのカフェなど、どこにでもあるチェーン店で、ひとり飲みを楽しむ姿をコミカルに描いています。ミニサイズのどんぶりや、ワインのハーフボトル、多彩な小鉢など、女性が好むひとり飲みのおともに関する情報が満載です。
■「ワカコ酒」(新久千映)
酒飲みの舌を持って生まれた26歳のOL・村崎ワカコが、うまい肴と酒を求めてさすらう“ひとり飲み”漫画。初めての店でも迷わず暖簾をくぐる様子が“女性版『孤独のグルメ』”とも呼ばれ、日本でのアニメ&ドラマ化だけでなく、韓国でもドラマ化された人気作品です。シンプルなメニューから凝った料理まで、酒を片手に饒舌に味を語るストーリーに、消費者は料理のどこに惹かれるのかを探れる内容になっています。おいしすぎて「ぷしゅ~」っと脱力させる体験をぜひ提供したいものです。
■「野原ひろし 昼メシの流儀」(塚原洋一)
国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』(臼井儀人)でおなじみの「野原ひろし」を主人公にしたスピンオフ作品。限られたお小遣いをやりくりしながら、午後の仕事のために1食1,000円以内の旨い昼メシを求める野原ひろしを描いています。忙しいサラリーマンが魅了される昼メシのラインナップのほかに、世代で異なる食事の価値観や、昼メシどきの飲食店スタッフとの関わり方など、サラリーマンのランチ事情を知れるグルメ漫画です。
実在の店舗が登場!人気の秘密を探る6作品
実在する店舗が登場する漫画はグルメのガイドブックの役割も果たし、実際に多くの読者が店舗を訪れます。漫画で描きたい!と思われるほど、愛される秘密を紐解いていきましょう。
■「ラーメン大好き小泉さん」(鳴見なる)
ラーメン通は必携とも呼ばれる、アニメ&ドラマ化したヒット作。クールで無口、他人と慣れ合わないミステリアスな転校生・小泉さんが、ひたすらラーメンをすすってラーメン愛を語る物語。実在するラーメン店を舞台にしており、おいしそうに描かれるラーメンはもちろん、小泉さんお気に入りの食べ方やサイドメニューの紹介もあり、食べなれたチェーン店のラーメンであっても食べ方をマネしに再訪したくなる魅力があります。ラーメンのうんちくは、勉強になると“通”からもお墨付き。
■「いつかティファニーで朝食を」(マキヒロチ)
映画『ティファニーで朝食を』の冒頭シーンが大好きな主人公が、彼氏と別れて朝食に人生の再生を求める物語。登場する実在の店舗は、朝食で有名な店からチェーン店などさまざまで、仕事や恋愛に悩みながらもおいしいごはんとともに気持ちを飲み込む姿がアラサー女性からの支持を集めています。友人たちと店を訪れ、頼んだメニューの感想を伝え合うシーンは女性の多角的な視点を得られます。「目がおいしいと嬉しい」という主人公が、心惹かれる料理の盛り付けも参考になるでしょう。
■「おしゃべりは、朝ごはんのあとで」(秀良子)
締め切りに追われ、まともな食事がとれない作者自身が、自腹をきっておいしい朝ごはん探しをする旅エッセイ。日本全国のみならず、フランスやハワイにも出向いて、一日の活力になるようなおいしい朝ごはんに舌鼓を打つストーリーです。登場するお店は、有名な高級店からホテルのビュッフェ、地方の名物や街中のパン屋までさまざま。朝からわざわざお店に出向きたくなるメニューづくりのヒントや、朝ごはんを求める消費者のニーズを汲み取れる作品です。
■「そうだ、食べ放題いこう。」(西つるみ)
「本当に旨い店、教えます!」をコンセプトに、甘党OL漫画家&しょっぱ党大食い編集が東京近郊の食べ放題店をレポートしている作品。料理の盛り方、注文の仕方、最強の食べ合わせなど食べ放題の極意を密度高く紹介しています。女性2人の食べっぷりの良さが気持ちよく、おいしそうに頬張る姿に触発されて実際に訪問したという読者が多数。女性が食べ放題でテンションの上がるポイントや、感銘を受けたスタッフのホスピタリティなど、食べ放題店には参考になる点が多いでしょう。
■「忘却のサチコ」(阿部潤)
高畑充希主演でドラマ化され、2023年3月現在も連載中の大ヒットグルメ漫画。仕事は順風満帆、結婚も決まって完璧な人生を歩んできた文芸誌の編集者・佐々木幸子が、結婚式当日彼に逃げられたことをきっかけに失恋のショックを忘却できる瞬間を求め、美食に走る物語。出向く飲食店は全国津々浦々、実在する店舗の名前をもじった形や無名で登場していますがどの店を訪れたのか考察するのが楽しいという意見も。とにかく“味”を追求する主人公の姿に、飲食店の原点を思い出せる作品です。
■「めしばな刑事タチバナ」(原作:坂戸佐兵衛/作画:旅井とり)
警視庁城西署刑事課に転属してきた立花刑事が“身近めし”を語りまくるストーリーで、2023年3月現在も『週刊アサヒ芸能』で連載中のロングヒット作。取り上げるのは全国展開しているチェーン店や食卓にのぼる頻度の高い食材などで、店の変遷やグルメの歴史などのうんちくは原作者の知識の深さを感じるものばかり。グルメ情報だけでなく、食の造詣を深める満腹感を味わえる作品です。飲食店のオーナーであっても「知らなかった!」情報が満載であろう、一読すべきグルメ漫画です。
販売のヒントに!お取り寄せ人気に火をつけた3作品
自宅で簡単に全国の名店や名物を味わえると、日本人の食文化に定着した「お取り寄せ」。ブームの火付け役となった作品などから、お取り寄せ人気の秘密や売れる商品のヒントを探ってみましょう。
■「おとりよせ王子 飯田好実」(高瀬志帆)
毎日残業続きの平凡なシステムエンジニア・飯田くんの密かな楽しみは、ノー残業デーに全国から取り寄せるおいしいお取り寄せグルメを堪能すること。お取り寄せブームの火付け役とも呼ばれる作品で、連載が終了してもなお漫画に登場した商品の人気が続くほど。飯田くんがお取り寄せするグルメはお酒のおつまみからご飯のおとも、スイーツ、調味料までバラエティ豊かで、“おとりよせ王子”によるアレンジ料理も好評です。お取り寄せのブランディングを学ぶのにおすすめの一作。
■「先生のおとりよせ」(漫画:中村明日美子/小説:榎田ユウリ)
2022年に向井理、北村有起哉主演でドラマ化された話題作。漫画と小説が一体になった新感覚グルメ作品で、登場するお取り寄せグルメは作者2人が実際にお取り寄せしたものの中から編集部が試食会を行って選出された逸品ばかり。官能小説家の榎村と、美少女漫画家の中田という男性2人がお取り寄せグルメを持ち寄り、熱くプレゼンしあう内容になっています。味もさることながら、開封するときのワクワク感、洗練されたパッケージに心躍る描写はお取り寄せならではです。
■【番外編】「おもたせしました」(うめ[小沢高広・妹尾朝子])
取引先や知人を訪ねる際に「手土産」を持参することを生きがいにしている轟寅子が、「自分が食べたい」ものを選び、ついつい“おもたせ”いただく物語です。持参する手土産は実在する商品で、老舗の逸品から知る人ぞ知るグルメまでバラエティ豊か。寅子が語るグルメにまつわるうんちくも読み応えがあり、手土産とともにグルメの情報も持参したくなる作品です。土産物、テイクアウトならではの魅力やノウハウが詰まった作品なので、販売に力を入れる飲食店はぜひ読んでみてください。
街に溶け込む飲食店のヒューマンストーリーを描く2作品
地域で愛される飲食店を舞台に、その街に暮らす人々と店主のヒューマンストーリーを描いた作品を紹介します。親しみやすく、お店とお客様の距離が近い店づくりを目指す飲食店におすすめです。
■「たまこ定食 注文のいらないお店」(野崎ふみこ)
幼い頃に離別した亡き父の店を継いだ三浦珠子が、ごはんと味噌汁をメインにした飲み屋「たまこ定食」を開店。握手をすると、その人の体が喜ぶごはんがわかるという珠子の不思議な能力とやさしい人柄が織りなす、常連客との人間ドラマを描いた作品。その日の仕入れ状況と、お客さんの体調に合わせて“おまかせ”で料理を提供するスタイルは、作中に登場する同業者に“理想的”と評されるほど。心温まるストーリーとともに、その経営スタイルにも注目してください。
■「29時の朝ごはん」(佐倉イサミ)
眠らない街・歌舞伎町で、若い姉妹が切り盛りする小さな定食屋「あさげ」。朝5時に開店する店のメニューは味噌汁(握り飯付き)の一品だけ。場所柄、訪れる客は仕事終わりのホストやホステスが多く、夜の街ならではの悩みを抱えながらも味噌汁でホッと一息つく姿を描いています。客層の潜在ニーズを汲み取ったコンセプトづくりと、さまざまな具材を掛け合わせた味噌汁の数々、そしてお客さんの事情を察してお椀にもこだわるおもてなしの心は飲食店の基本の姿かもしれません。
レシピ付き!ほのぼのグルメ漫画4作品
「ごはんを作って、おいしく食べる」に特化したグルメ漫画を4作品紹介します。心温まる家族愛や友情が紡ぐドラマと、おいしそうな家庭料理の数々に「食」の醍醐味を感じてみましょう。
■「きのう何食べた?」(よしながふみ)
西島秀俊&内野聖陽主演のテレビドラマが大ヒット、映画化もされたヒューマングルメ漫画です。主人公のシロさんとケンジは、長年2人暮らしをしている男性カップル。淡々と描かれる日々の営みと、年齢を重ねていく2人の食の好みが変化していく様子もリアリティを感じます。健康を意識するシロさんの副菜レパートリーは、定食屋の小鉢や居酒屋の突き出しの参考になりそうなものばかり。時に高が外れてジャンクな料理をこっそり食べるケンジの姿にも共感を覚えます。
■「舞妓さんちのまかないさん」(小山愛子)
是枝裕和監督初のNetflix作品として、2023年に実写ドラマ化されたことでも話題のグルメ漫画。京都の花街にある屋形を舞台に、舞妓たちの食生活とほのぼのとした日常を描いています。舞妓を目指し青森から上京してきたキヨは、早々に舞妓からは落第したものの、「まかないさん」として幼馴染のすみれをはじめとした舞妓を支えることに。意外なほど“普通のごはん”を食べる舞妓の食生活に触れられるとともに、大好きな人たちを「食」で応援するキヨの姿に心を打たれること間違いなしです。
■「甘々と稲妻」(雨隠ギド)
妻を亡くし、5歳の娘・つむぎを一人で育てることとなった高校教師・犬塚公平が、教え子の小鳥とともに苦手な料理に奮戦する物語。作る料理は豚汁やハンバーグ、煮物などの家庭料理そのもので、料理初心者の犬塚に合わせて詳しい解説を挟みながら料理の工程が進んでいくため、調理に不慣れでも親しみやすくなっています。5歳のつむぎのために喜ぶメニューを考えたり、大人用と子ども用で味付けをわける様子は、キッズメニューを提供する飲食店の参考になるでしょう。
■「花のズボラ飯」(原作:久住昌之/作画:水沢悦子)
「ズボラ飯」ブームを巻き起こし、「このマンガがすごい!2012年版 オンナ編」で1位を獲得した大ヒット作。夫が単身赴任中の主婦・駒沢花は、手間要らずでおいしいズボラ飯が大好き。豊富な語彙力から繰り出されるギャグを交えながら、簡単・愉快にササッとおいしいごはんを作って堪能しています。原作は『孤独のグルメ』の原作者として知られる久住昌之。「結局、こういうのでいいんだよ」と言いたくなる、手軽でおいしいレシピの数々はメニューづくりのヒントになるはずです。
個性が際立つ、ニッチなグルメ漫画3作品
多様化が進んだグルメ漫画の中には、特殊なシチュエーションで楽しむグルメや、一風変わったジャンルにフォーカスしたものなど多彩な作品が登場しています。その中からおすすめの3作をご紹介。
■「山と食欲と私」(信濃川日出雄)
「山ガール」とは呼ばれたくない、自称「単独登山女子」の日々野鮎美は、山で食べるごはんが大好き。おいしい食材をリュックに詰めて、ガスバーナーとコッヘルで調理した熱々ごはんをはふはふと食べる姿に羨望を抱く読者が続出。この作品をきっかけに登山をはじめた方も多く、登山のルールや注意点にも触れている本著は登山のスタートガイドとしても愛されています。自炊のほかに、山小屋ごはんや麓の飲食店も登場しており、山間地域の飲食店はぜひ読んでおきたい作品です。
■「サチのお寺ごはん」(作画:かねもりあやみ/原案協力:久住昌之 /監修:青江覚峰)
『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』の原作者・久住昌之が、「料理僧」として知られる青江覚峰のレシピ本を漫画化した作品。お寺ごはんの名の通り、精進料理をテーマにしたグルメ漫画です。幸の薄い人生を送っていた臼井幸は、声を掛けてきた僧侶たちに振る舞われた精進料理がきっかけで自身の幸せを考えるように。五臓六腑に染みわたる、滋味深い精進料理のレシピと仏教の教えは、読者にもさまざまな気づきを与えてくれます。健康志向のメニューを提供している飲食店におすすめの作品。
■「まどろみバーメイド」(早川パオ)
女性バーテンダー=バーメイドが紡ぐ、奥深いカクテルの世界を描いた物語。屋台バーを営む天才バーテンダーの雪、老舗ホテルのセカンドチーフバーテンダーを務める騎帆、派手なパフォーマンスを得意とする日代子の3人を主人公とし、創意工夫がなされたカクテルの数々とお酒に関する情報量の多さが読み応えのある作品です。手順一つとわずかな隠し味で味わいが変わるというカクテルはぜひ味わってみたいもの。お酒にこだわりを持つ飲食店経営者は、一読しておくとよいでしょう。
番外編!王道グルメバトル漫画&異世界系グルメ漫画4作品
「料理バトル」をテーマにした作品はグルメ漫画の王道とも言えますが、イマドキのグルメ漫画はどんな進化を遂げているのでしょうか。新たに生まれた「料理×異世界」作品と併せてご紹介します。
■「食戟のソーマ」(原作:附田祐斗/作画:佐伯俊/協力:森崎友紀)
定食屋を実家に持つ幸平創真は、目標としている料理人の父を超えるため、卒業到達率10%以下の日本屈指の料理学校で腕を磨くことに。登場するグルメは、簡単なものから手の込んだ料理まで多彩なアイデアに溢れており、シヅル感たっぷりの料理の絵の迫力に圧倒されます。「食戟」とは、作中の用語で料理対決を意味しており、時折挿入されるセクシーな描写も王道の少年漫画ならでは。料理を通して人生を語るシーンは、飲食店を経営するオーナーなら共感することも多いはずです。
■「トリコ」(島袋光年)
世はグルメ時代。レアな食材や未知の味に大金が動く世界で、カリスマ“美食家”トリコが捕獲難易度の高い食材の獲得に挑むグルメ×冒険×バトルストーリー。登場する食材は架空のものですが、さまざまな肉の旨味を兼ね備えた“ジュエルミート”や、殻が宝石としての価値を持つ蟹“ルビークラブ”など、実在したら一度は賞味したいものばかり。作中に登場する食材は読者からのアイデアによるものもあり、どんな食材が実在したら嬉しいか考えるのも楽しい作品です。
■「ダンジョン飯」(九井諒子)
ダンジョンの奥深くでドラゴンに襲われ、金と食料を失ってしまった冒険者・ライオス一行。飢え死にを防ぐために思いついた秘策が、「そうだ、モンスターを食べよう!」。スライム、ドラゴン、ゴーレムといったロールプレイングゲームなどでおなじみのモンスターたちをおいしく頂きながらダンジョンを踏破していく物語。再現性はないものの、レシピが掲載されているのがおもしろく、現実世界でも先人たちはこのように未知の食材を調理していったのかと想いを馳せることができます。
■「とんでもスキルで異世界放浪メシ」(原作:江口連/漫画:赤岸K/キャラクター原案:雅)
原作は“なろう系”ライトノベルで、コミカライズ、TVアニメ化と立て続けのメディアミックスが話題の異世界系グルメ漫画。異世界へと召喚された向田が持つ固有スキルは、“元いた世界のネット通販を利用できる”「ネットスーパー」というもの。そのスキルを使い、異世界の住人や魔獣に現代の料理を振る舞いながら冒険する物語です。異世界の人々が現代の料理を絶賛する姿に、なぜだか胸を張りたくなってしまう作品。今までに読んだことのないグルメ漫画を探している方にはぴったりです。
グルメ漫画で多彩な食のニーズを学ぼう
食文化が多様化するとともに、グルメ漫画の内容もバラエティ豊かになってきました。早いサイクルでトレンドが移り変わる飲食業界において、グルメ漫画を読むことは多様化する消費者のニーズをキャッチする手段にもなります。
店のコンセプトやメニューづくり、おもてなしの心など、グルメ漫画から学べるものはさまざま。グルメ漫画を通して消費者が求める食の体験を汲み取り、飲食店の経営に活かしてみてはいかがでしょうか。
ライター:鈴木あけみ
広告制作会社、音楽誌の編集者を経て、WEB制作会社に入社。企業のポータルサイトやSNS運用、アニメ・漫画、フィットネス関連メディアの執筆・制作・運用などを行うWEBディレクター兼ライター。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
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