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昨今、大量に製造・使用・廃棄されるプラスチックゴミが大きな問題となり、世界各国でレジ袋や使い捨てプラスチック製品に対する規制強化の動きが加速しています。
それに伴い、プラスチック製ストローに代わって、紙ストローを導入する飲食店が増えていますが、消費者からは「紙ストローはまずい」「不快」という不満の声も多く聞こえてきます。
そこで今回は、紙ストローの導入が進む理由と不人気な理由について、紙ストローのメリット・デメリットも交えて解説。紙ストローに代わる、今後大注目の素材もご紹介します。
目次
世界中に広がる「脱プラスチック」への動き
レジ袋や食品包装容器、ペットボトルのみならず、洋服、家電製品、医療機器、自動車に至るまで、私たちの生活のあらゆる場面で使用されているプラスチック。今や私たちの生活と切り離せない存在ですが、世界中に溢れるほど過剰に普及した結果、さまざまな問題が起こっています。
・大気汚染問題
プラスチックは容易に自然分解されず、製造過程やゴミとして焼却される過程で、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを発生させます。また、プラスチックの原料は採れる量に限りがある石油資源であり、プラスチック製品を製造・使用し続けることによって資源の枯渇にもつながります。
・海洋汚染問題
ポイ捨て等により屋外に放置されたプラスチックゴミは、雨や風によって水路、河川にいきつき、最終的に海に放流されます。その量は世界全体で年間800万トンを超えると推計され、海の中に溜まっているとされるプラスチックゴミの量はなんと約1億5,000万トン。2050年には海洋中のプラスチックゴミの量が魚の量を上回るとの予測もあります。
海に浮遊するプラスチックゴミは、魚類、海鳥、海洋哺乳動物などさまざまな海洋生物に危険を及ぼしており、エサと間違えて飲み込んでケガをしたり、命を落としてしまうことも。
さらに、海に流れ込んだプラスチックゴミの一部は、波や紫外線の影響を受けて徐々に小さな粒子となります。5mm以下の粒子になった「マイクロプラスチック」は海の汚れや有害な化学物質を吸着する性質を持ちます。有害な化学物質を含んだマイクロプラスチックを魚が食べ、その魚を人間が食べることで人体にも悪影響を及ぼすと懸念されています。
このような問題から、世界中で脱プラスチックに向けた取り組みが活発化。日本でも2020年7月から始まったスーパーやコンビニでのレジ袋有料化をきっかけに、脱プラスチックへの関心が年々高まってきています。
飲食店で紙ストローの導入が進む理由
2022年4月に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」により、飲食店でも使い捨てプラスチック製品の提供方法の見直しが求められました。カフェやファミリーレストラン、ファストフード店を中心に、プラスチック製カトラリーを木製に変えたり、カップのフタやストロー自体の提供を廃止したりする動きが見られます。
その中でも特に導入が進んでいるのが「紙ストロー」。大手のカフェチェーン店やファストフード店が先立って紙ストローを採用したことに倣い、まずは紙ストローからという風潮があるようです。紙ストローが選ばれる理由として、以下の2点が挙げられます。
・木は自然分解される
紙ストローの原料である木は、プラスチックとは違って自然分解されます。そのため、紙ストローがポイ捨てされたとしても、やがて土に還ります。
・木は循環型資源である
プラスチックの原料である石油とは違い、木は持続可能な循環型資源です。木を伐採して消費しても、同時に苗木を植えて育てることで、持続的に資源を生産し続けることができます。木は二酸化炭素を吸収して成長することから、地球温暖化の防止にも貢献します。紙ストローが不人気なのはなぜか?
しかし、多くの飲食店で紙ストローの導入が進む一方で、消費者からは「紙ストローはまずい」「不快」といった不満の声も多く聞こえてきます。日本マクドナルドが全店舗での紙製ストローの導入を発表した際には、Twitterで「紙ストロー」がトレンドワード入り。「紙ストローまずい問題」がネット上で大きな話題となりました。
紙ストローはなぜそんなにも不人気なのか?その理由として以下の2点が挙げられます。
使用感があまり良くない
紙ストローは「原紙+接着のり+コーティング」でできていることが多く、唇にくっつく感触や舌触りが苦手という人も。時間が経つと紙や接着のりの味が混ざり、ドリンクの味が半減してしまうという声も聞かれます。
耐久性が低い
プラスチックとは違い、紙製品は水に弱い性質を持ちます。紙ストローには耐水加工がなされているものの、長時間使用するとやわらかくなり、ふやけてしまいます。
上記の弱点を克服した紙ストローの開発も徐々に進んでいますが、それと同時に、紙以外の素材から作られたストローへの注目も高まってきています。
紙ストロー以外の代替品は?
竹製ストロー
細い竹を切り出してストロー状に加工したもので、使い始めは竹特有の匂いがあるものの、天日干しを数日間行うことで匂いが抑えられます。表面がなめらかに仕上がっていることから舌触りは気になりません。
竹の特徴は、耐久性、耐水性に優れていて軽量であること。紙ストローの多くが一度で使い捨てされるのに対して、竹製ストローは洗浄して繰り返し使用可能です。竹には抗菌作用があり、乾きも早いので衛生的ですが、湿度の高い場所で保管するとカビが生えるため注意が必要です。麦わらストロー
プラスチック製のストローが普及する以前、ストローは麦わら製が一般的でした。そもそもストローという呼び名の語源は、英語の「straw(麦わら)」なのです。
麦わらストローは、麦の収穫時に取れた茎を乾燥させて作られます。麦の節に合わせてカットしていくため、それぞれ長さや太さが異なります。竹製ストローのように何度も繰り返し使うことは難しいですが、飲み物に長時間浸けてもふやけることはありません。
草ストロー
ベトナムで栽培される生分解性の草(カヤツリグサ科レピロニア)の茎を利用して作られるストローです。プラスチック製ストローのように薄くて軽く、匂いもほとんどありません。
麦わらストローと同様に、飲み物に長時間浸してもふやけることがなく、逆に水がしみこむことで繊維に柔軟性が出て割れにくくなり、耐久性が増すメリットがあります。洗って再利用することも可能ですが、衛生面から基本的には使い捨てが推奨されています。さとうきびストロー
本来なら廃棄されるさとうきびの搾りかすをアップサイクルさせることで生まれたストローです。メーカーによっては、さとうきびの匂いや甘さをほんのり感じるものの、飲み物の香りや味に影響はありません。
熱い飲み物には使えませんが、紙ストローよりも強度があり耐水性も高いため、プラスチック製のストローと同じ感覚で使えます。使用後は堆肥化が可能です。
金属製ストロー
ステンレス、アルミ、チタン製などの金属ストローは、他の素材に比べて圧倒的に丈夫で長持ちします。洗浄して何度でも繰り返し使用でき、先が曲がった形状も製造可能です。金属の匂いは気にならず、飲み物の味や香りを邪魔しません。
金属アレルギーの方はご使用になれないため、提供時には注意が必要です。
食べられるストロー
大手菓子メーカーのブルボンは、クッキーで作られたストローを業務用として販売しています。ジュースやシェイク、スムージーなどのアイスドリンク専用で、長さは20cm、直径は12〜13mm(内径は8~9mm)。食用油脂コーティングをすることで、20分程度は耐水可能です。
また、パラチニット(砂糖を原料する低カロリー甘味料)を使ったキャンディーストローも存在します。こちらもアイスドリンク専用で、ストローとして使用した後は、飲み物に溶かして甘さをプラスしたり、ボリボリと噛んで食べたりすることも可能です。
食べられるストローの特徴は、脱プラスチックにつながる上に、ゴミ自体の排出量を減らせること。さらに、食べられるストローという目新しさが話題となって集客につながる可能性も期待できます。脱プラスチック実現に向けて、未来の地球のために一歩踏み出そう
今回は、脱プラスチックの実現に向けて導入が加速する、さまざまな素材のストローをご紹介しました。紙ストローも、紙以外のストローも、プラスチック製と比べると割高というコスト面での課題はあるものの、少しずつ着実に導入が進んできています。
プラスチックに代わる素材に切り替えることは、自店が脱プラをはじめとする社会問題の解決に向けて協力的であるという姿勢を消費者に示すこと。それは結果的に、自店のイメージや顧客ロイヤリティを高めることにもつながります。
まずはストローの素材を切り替えることから、脱プラスチック実現に向けて一歩踏み出しませんか?
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
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