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【小阪裕司コラム】第12回:20年ぶりに割引制度をやめてみると…

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

ポイント制度の変更は、サービスの低下を招くのか?

 先日、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の化粧品店からご報告をいただいた。約20年続いてきたポイントの仕組みを変更したというものだ。
 同店には巷によくあるポイント制度がある。ポイントがたまると商品券と交換するものだが、その中に、年間一定金額以上購入の優良客を「ゴールド会員」とし、通常千円購入ごとに1ポイントのところ2ポイントとする、店主の言う「百貨店を真似た仕組み」がある。これが今回課題となった。
 ワクワク系では、私が常に「優良客はお店に割引のアップを求めているのではない」と言うので、店主も気にはなっていた。ただ、ずっと続けている制度で自店の顧客には浸透している。全顧客一律のポイント付与では高額購入客から文句が出るのではないか、その点が不安だった。
 そこでスタッフに聞いてみると、やはり不安気。しかし、と店主は考えた。「ワクワク系の先生が長年多くの会社の実績を集めた結果、『優良客は値引きサービスよりも心のこもったサービスを求める』という結論が出ている」し、コスト削減の意味もある。変更により年間100万近いコスト削減が見込め、その分は、社員研修や新たなサービスに使える。そこでついに、20年ぶりに、変更に踏み切ることにしたのである。
 とはいえ、今回の変更をサービスの低下と思われたくはない。代替として、有料のメイクアップやエステのサービスを数回無料にしたり、優良客専用のLINEアカウントを作るなど、色々考え、実施した。そうして現在、変更から二か月が経つが、来店される当該顧客からは一切文句はなし。このこと自体が話題にならないと店主は言う。

人は金銭的な報酬のみを好むのではない

 非金銭的報酬――これは私がよく実践会員に話す概念だ。人は金銭的な報酬のみを好むのではない。ワクワク系では特に、顧客とは絆作りを行うが、絆のある顧客はとりわけ非金銭的報酬を好む。もっとも、割り引かれて不快になるお客さんもまたいないゆえに、これは見過ごされがちなことだ。しかし今回の店主のように、たとえ長年浸透していても、見直すことに意義がある。そうして、より非金銭的報酬で顧客を喜ばせられる店にレベルアップしていくことが肝要だ。店主も言う。「今のうちに積極的にスタッフ一人ひとりのレベルアップを図り、今までより何だか良くなったね、と言っていただけるようにしていきたいと思っています」。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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