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仕入れに仕込み、ランチタイムの片付けからのディナータイムの準備など、息つく間もない飲食店の仕事。そんな忙しない仕事の合間に訪れる“まかない”の時間は、仕事の効率をアップさせるためにも大切な時間。実は、そんな“まかない”から、今では通常商品の定番となっている人気メニューが数多く誕生しているのです。“まかない”から生まれたメニューには、どのようなものがあるのでしょうか?
おさらい “まかない”とは?
飲食店に従事している人ならば知らない人はいない“まかない”という言葉。“まかない”とは、言うまでもなく、飲食店などにおいて、従業員のために作られる食事のメニューのこと。“まかない”は従来、調理は若手従業員が担当し、店長や料理長が味見をして評価をするという、いわば修業の場という意味合いも兼ねていましたが、最近では若手とベテランの区別なく順番制や担当制をとっている店や、メニューの味を覚えさせるという教育的な観念から、料理長が自ら作って提供する店などもあり、そのスタイルは店によってさまざまです。
オムライス
洋食屋さんの定番メニューである“オムライス”も、実は“まかない”から生まれたメニュー。オムライスの発祥については諸説ありますが、東京のある洋食店が1900年(明治33年)頃、忙しい厨房でも従業員が片手で食べられるように考案された「オムレツライス」が“オムライス”の原型と言われています。この「オムレツライス」は、溶き卵に白飯やピーマン、マッシュルームなどの具を混ぜて焼いたものであり、現在に見られる一般的な薄焼き卵でチキンライス包んだオムライスとは味付けや見た目は異なるものではありますが、洋食店の従業員が食べている姿を見たお客様が「自分も食べたい!」と希望したため、店のメニューのひとつとして提供されるようになり、一躍人気メニューとなったそうです。
天むす
“天むす”は、海老の天ぷらを具としたおにぎり。名古屋名物としての印象が強い“天むす”ですが、実は三重県津市の天ぷら定食店が発祥と言われています。昭和30年代のはじめ頃、忙しくて昼食を作る暇もなかった定食店の妻は、夫にはせめて栄養のあるものを食べてもらいたいと願い、車海老の天ぷらを切っておにぎりの中に入れたところ、夫に大いに喜ばれた、というのが誕生時のエピソードなのだとか。冷めても美味しく食べられる“天むす”は、お土産品としても親しまれ、今では全国的にその美味しさが知られるようになりました。この“天むす”発祥の店はもちろんのこと、暖簾分けした店などでも、今も変わらず人気メニューとして提供され続けています。
ハントンライス
“ハントンライス”とは、“ハントン風ライス”とも呼ばれる石川県金沢市のご当地グルメのこと。テレビや雑誌などで紹介され、全国的にも知名度が徐々に上がっているそう。一般に、“ハントンライス”の“ハン”は、「ハンガリー風」のハン、“トン”はフランス語でマグロを意味する「thon」(トン)をあわせた造語であるとされています。1960年代後半、金沢市内の中心部にあるレストランで、生まれたという“ハントンライス”は、ご飯をパプリカとバターで味付けをし、余ったマグロや魚のフライを乗せた“まかない料理”でした。この“まかない料理”をヒントに、ケチャップなどを使って若者ウケする味に改良したものが “ハントンライス”なのだそう。今となっては、どこがハンガリー風なの??といった声も聞かれますが、この新しいスタイルの洋食メニューは若者を中心にヒットし、店を代表するメニューのひとつにまで成長しました。その後、独立した料理人たちが、自分の店のメニューにもオリジナルの“ハントンライス”を加えていったことから、金沢市内の洋食店に広まっていったのだそう。発祥となった店はすでに閉店となったものの、今も金沢の“ご当地グルメ”として多くの人々に愛されているメニューとなっています。
コブサラダ
今では、ファミリーレストランの定番メニューにもなっている“コブサラダ”も実は、“まかない料理”から生まれたメニュー。“コブサラダ”の“コブ”とは、食材ではなく、レストランのオーナーの名前に由来します。1937年、ハリウッドのあるレストランで、オーナーの“コブ”が空腹のあまり、厨房の冷蔵庫の食材をかき集めて、手早く簡単に作れるサラダはないか?と知恵を絞って生まれたのが“コブサラダ”です。“コブサラダ”は、レタス、アボカド、鶏ムネ肉(七面鳥)、固茹で卵、ブルーチーズ、カリカリに焼いたベーコンを、フレンチドレッシグやヴィネグレットソースなどで味付けしたサラダ。この“コブサラダ”が誕生したその夜にたまたま訪れた有名なハリウッド映画館の経営者が味見したところ、その美味しさに魅了され、次の日も来店。再び“コブサラダ”を注文したのだそう。これを機に“コブ”のレストランに、正式なメニューとして加わり、店の人気メニューとなりました。カリフォルニアの食材をふんだん使用した、具沢山で栄養たっぷりの“コブサラダ”は、瞬く間にアメリカ全土に知れ渡り、ニューヨークでも人気のサラダに。今では日本でもお馴染みのサラダとなりました。
チキン南蛮
宮崎名物の“チキン南蛮”も“まかない料理”が発祥と言われるメニューです。“チキン南蛮”は、鶏のから揚げに甘酢だれを絡め、その上にタルタルソースをたっぷりかけた料理。宮崎県内では飲食店はもちろんのこと、総菜店や弁当店でも定番のメニューとなっており、スーパーでもタルタルソースや甘酢だれの素が多数販売されています。その美味しさは全国に広まり、今では名産品のマンゴーや郷土料理の冷汁と並ぶ、宮崎県の“ご当地グルメ”として浸透しています。
目丼(目玉焼き丼)
北海道北見市の焼肉店をはじめとする飲食店で提供される“目丼”。この“目丼”とは、いわゆる“目玉焼き”を白いご飯にのせた丼メニュー。北見市内の焼肉店で“まかない料理”として従業員が食べていた際、居合わせたお客様が「自分にも作ってほしい」と注文したのが、“目丼”誕生のきっかけなのだそう。この“目丼”は単なる目玉焼きをのせた丼飯ではなく、焼肉のたれや青のりを使って味つけしたもので、今では、北見市内の多くの飲食店で定番化しているメニューとなっています。
台湾ラーメン
名古屋のご当地グルメ“台湾ラーメン”。そのラーメンの発祥が台湾ではないことは有名な話かもしれません。しかし、この“台湾ラーメン”が“まかない料理”から始まったということは、あまり知られていないようです。“台湾ラーメン”は、名古屋市にある台湾料理店の台湾人店主が、台南名物の担仔(タンツー)麺をもとに“まかない料理”として従業員に出したのが起源とされています。豚ひき肉に、ニラ、ネギ、モヤシなどの野菜をあわせ、ニンニクや唐辛子で味付けして炒め、しょうゆベースのスープとともに麺にかけた “台湾ラーメン”は、唐辛子の辛さとニンニクの強い風味が特徴。激辛ブームが巻き起こった1980年代後半に、テレビや雑誌で紹介され、一躍、全国的にその名を知られるメニューとなりました。
つけ麺
つけ麺の元祖とされているのが、大勝軒でもおなじみの「特製もりそば」。東池袋大勝軒の創業者、故・山岸一雄が湯飲み茶わんに醤油とスープを入れ、残っていた麺をまかない飯として食していたことがつけ麺の始まりだそう。
その後、特製もりそばに改良し、お客様に提供したところ大盛況。連日東池袋大勝軒には長蛇の列が並んでいました。
はじめて「特製もりそば」を提供したのが1955年の話。実に60年前からつけ麺が存在していたことになります。“まかない”から人気メニューを考えよう!
普段、何気なく作っている“まかない”の料理。とある居酒屋では“本日のまかない”として、いわゆる“店主の気まぐれメニュー”を日替わりで出しています。飲食店で働いていない一般のお客様にとって、思いのほか魅力的に映る“まかない”の料理をもう一度見直して、新メニューの開発に生かしてみるのも一案です。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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