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【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第18回 お店でやってほしい仕事をA3用紙一枚にまとめる③行動方針をはっきりとさせる

【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第18回 お店でやってほしい仕事をA3用紙一枚にまとめる③行動方針をはっきりとさせる

社会保険労務士で(株)リーガル・リテラシー代表取締役社長の黒部得善氏がお届けする、飲食店経営にフォーカスした労務コラム連載。

スタッフを雇用する店舗経営に欠かせない業務のひとつである労務管理。特にコロナ禍以降の外食業界は深刻な人材不足に悩まされ、「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」「そもそも応募が来ない」といった悩みのほかに、アルバイトがSNSを使ったトラブルを起こす事例もたびたび耳にするようになり、安定経営とリスク回避という二つの側面で労務管理の重要性が高まっています。

第18回は、『お店でやってほしい仕事をA3用紙1枚にまとめる』シリーズの第3弾。「行動方針をはっきりとさせる」をテーマにお届けします。

前回の振り返り

第16回から連続で、マトリクス労務についてお話しています。お店でやってほしい仕事をA3用紙一枚に5項目に沿って整理していく手法ですが、今回は5項目のうちの一つである「理念と一体化した方針をつくる」ことについての内容です。

前回は、役職別の果たすべき責任について話をしました。指揮命令する権利を買って「責任の重さに見合った給与を払う」ことで、なんでも店長の業務にならないようにしようという話でした。

会社を主語にすることの大切さと難しさ

連載の序盤、第3回で「理念を日常の労務に活かす」というテーマを扱いました。飲食業に勤める人は前職も飲食店であった人が多いことが特徴の業界であり、特に労務で「前のお店はこうだった」などと、前職の経験を軸に物事を判断してしまう傾向が多くあります。それを回避するために理念を活用して「うちの会社orお店は」と、会社を主語にして労務をおこなうことの重要性についてお話をしました。

しかし、理念というのはかなり抽象的であり、日常的な細かい判断には使いづらいことが多いでしょう。そこで今回やるべきは、理念に基づいて行動方針を明確に日常の指揮命令と理念をつなげることです。会社の理念に合わない仕事の進め方はダメと示すために行動方針を明確にするのです。

なぜ行動方針が必要なのか

それでは、なぜ行動方針が必要なのかを簡単に説明します。例えば売上につながる行動について思いつくままにあげてみます。

✔割引券を駅前で配る
✔割引券をポスティングする
✔SNSで映える商品を作りアップし続ける
✔駅前でキャッチをする
✔うちのお店でしか食べられないキラーコンテンツを育てる
✔お客様を会員に勧誘し宣伝LINEを送り続ける
✔また来たいと思える接客をする
✔とにかく安く売る

売上につながる方法は多くありますが、あなたのお店にあった売上の作り方はどのようなものでしょうか。お店のスタッフみんながお店のために良かれと思い、バラバラな行動をとったらどうなるでしょう。自店にあった売上作りをしないと、どんなお店なのかわからなくなります。

方針づくりの前提

理念に沿った会社の年度方針、それをふまえた店舗方針など、年に1回方針を立てている会社も多いと思います。それと同じように、指揮命令の根拠となる行動方針をつくるだけです。そしてつくる際に絶対に守らなくてはならないルールが3つあります。

✔理念に反していないこと
✔年度経営(店舗)方針に反していないこと
✔店舗コンセプトに反していないこと

これらに反した行動方針を立ててしまうとすべての労務が矛盾し、お店が混乱します。

方針づくりの前提

行動方針はスキルにあわせて作る

行動方針をつくる際は、第15回「お店でやってほしい仕事の整理④お店で必要なスキルとは」で述べた、お店で必要なスキルをベースにしてつくりましょう。手順は以下の通りです。

1. スキルを「マネジメントスキル」と「作業スキル」に分ける
2. マネジメントスキルを、A:売上づくり B:数値管理 C:人材育成 の3つに分ける
3. 作業スキルを D:接客 E:調理 のふたつに分ける
4. A~Eに、それぞれ3~5個の行動方針を自店らしい言葉でつくる

以下に、250社を超えるマトリクス労務で定義された「売上づくり」を傾向分析し抽出された「売上づくり」の例を挙げます。参考にしてください。
✔売上の追求よりもお客様の数を追求
✔お客様に満足してもらうことが売上につながるから満足度を追求
✔常にお客様の立場に立って考え価格以上の価値(商品、サービス)を提供し報酬を得る。
✔各スタッフが独自にお客様と信頼関係を作り上げる
✔コンセプトを理解し、適正なサービス、価値ある商品開発、ブレない雰囲気をつくり続ける。

スキルを分類したうえで行動方針をつくることで、それぞれの役職の責任の重さにあった業務を書き出すことが可能になります。

頑張り間違いを生まないように

飲食店は、人が動き続けるとても忙しい職場です。そして、その忙しさの中で大量の指揮命令が飛び交っています。そんな時、行動方針が明確になっていると次のようなメリットが生まれます。

スタッフによる「頑張り間違い」が生まれない
店長による「頑張らせ間違い」を生ませない

一生懸命良かれと思って頑張るスタッフが行動方針と異なる頑張り方をしていたら、行動方針に沿うように指導をしていく。そうすると店長も、ただ”がんばれがんばれ“の指示ではなく、具体的な指示ができるため頑張らせ方を間違えないようになります。

これらは、こんなに頑張っているのになぜ褒めてもらえないのか、という不満を生まないことにつながります。みんな頑張って仕事をしているからこそ、頑張り方を間違えさせないために行動方針をはっきりしておくことが重要なのです。

今回のキーワード:スキルの行動方針をたてよう

この記事の執筆

㈱リーガル・リテラシー 代表取締役社長_黒部 得善

㈱リーガル・リテラシー 代表取締役社長

黒部 得善

1974年名古屋市生まれ。1997年明治学院大学法学部法律学科卒業。同年社会保険労務士合格。
大野実(現:全国社会保険労務士会連合会会長)事務所で修業後、㈱日立国際ビジネスにてSAP・R3のHRモジュールのコンサルを経て、2002年9月㈱リーガル・リテラシー創業。
飲食店の「長時間労働だから人が辞めるのか、人が辞めるから長時間労働なのか」を解決すべく、労務を“見える化”するためのフレームワーク手法”労務マトリクス“開発や、労務AI技術の開発をおこない、労務環境改善に奮闘。

<主な著書・論文>
「お店のバイトはなぜ1週間で辞めるのか」(日経BP社)
「就業規則がお店を滅ぼす」(日経BP社)
「勤怠データのデータマイニングを通じた労働集約性の高い飲食業の労働環境の改善」(日本マネジメント学会誌経営教育研究vol.25no.1)

<公式サイト>
(株)リーガル・リテラシー

<労務AI 公式サイト>
労務AI

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