- Tweet
飲食店を開業する際に作成する事業計画書は、事業のコンセプトやビジョンを明確にし、健全な経営、資金調達のために欠かせない文書です。
本記事では、飲食店向けの事業計画書の書き方を8つの項目に分けて詳しく解説。「どのような内容を記載するのか?」「いつ事業計画書を準備すればいいのか?」といった疑問に答えながら、飲食店経営を成功に導く事業計画書の作成方法を紹介します。
目次
飲食店の事業計画書とは
飲食店の事業計画書とは、これから開業しようとする飲食店の経営計画を具体的にまとめた文書です。開業の目的やビジョン、市場分析、競合他社の分析、マーケティング戦略、財務計画、人材計画など、店舗の開業と運営に必要な情報を記載します。
作成が義務付けられているわけではありませんが、飲食店を開業・運営する行動指針となるほか、潜在的な経営リスクや課題を洗い出せたり、資金調達の際に必要になったりします。
公的機関や金融機関では、事業計画書のテンプレートを用意しています。canaeruでも日本政策金融公庫の事業計画書(創業計画書)をご紹介しているので、下記の記事を参考にダウンロードしてみることをおすすめします。
関連記事 事業計画書とは?書き方やメリット、記入例などを解説!無料のテンプレート付き飲食店の開業において事業計画書が必要な理由
事業計画書の作成には、たくさんの時間と手間がかかります。慣れていないと、何度も作り直すことになるかもしれません。しかし、それほど大変な作業でも、作成すべき理由がいくつかあります。ここでは、飲食店開業の際に事業計画書が必要な理由を3つ紹介します。
自分のビジョンを明確にするため
飲食店を成功させるには、まず「どのようなお店にしたいのか」というビジョンを固める必要があります。例えば、誰をターゲットにしてどのような価値を提供するのか、競合とどう差別化するのかといったビジョンが定まっていれば、開業準備もブレずに進められます。
また、事業計画書を書くことで自分の頭の中にあるアイデアを整理できます。そのアイデアを実現するためにはどんな立地が最適で、どのくらい資金が必要で、提供すべきメニューは何なのかなどの方向性が定まりやすくなるでしょう。
資金調達をスムーズにするため
飲食店を開業する際には、物件取得費や内外装工事費、運転資金など多くの初期費用がかかります。多額の初期費用を自己資金だけで賄うのが難しい場合、最も現実的な資金調達方法は銀行からの融資です。
銀行は事業の将来性や返済能力で融資の可否を判断するため、具体的で根拠のある事業計画書を要求します。例えば、コンセプトや市場調査、売上のシミュレーション、返済スケジュールなどが明確に事業計画書に記されていれば、「安心してお金を貸せる」と判断されます。銀行融資を必要としている方は、綿密な事業計画書の作成が大きな鍵です。開業後の経営を円滑にするため
事業計画書は開業後も経営の指針となります。食材費や人件費、家賃などの経費を計画通りにコントロールしつつ、利益予測と黒字化の見通しを立てることで経営の安定につながります。
また、日々の売上目標やコスト管理の基準を事前に設定しておけば、「今月は売上が足りない」と気づいたときにすぐ対策を打つことが可能です。事業計画書があれば目標達成への道筋が見えるため、冷静に状況を把握し、必要な判断がしやすくなるでしょう。
事業計画書の作成方法
事業計画書は、資金調達や開業準備をスムーズに進めるためだけでなく、自分自身のビジョンや経営方針を整理し、具体化するための重要なツールです。ここでは事業計画書を作成するにあたって、主な8つの項目を解説するとともに、具体的な記載例を紹介します。
関連記事 飲食店の事業計画とは1:創業の動機
創業の動機は事業計画書の冒頭に記載する部分です。なぜ飲食店を開業するのか、その熱意や背景を伝えます。単なる思いつきではなく、具体的な経験や理由を明確にすることが大切です。
例えば、「10年間飲食業界に携わっており、自分の店を持ちたいという夢を抱き続けていた」「地域に健康志向のカフェが少ないことから、無農薬野菜を使った飲食店を開きたい」といった内容です。ここでは、開業のきっかけや動機を述べるだけでなく、お店を通じて達成したいことも一緒に書くと説得力が増します。自分の強い想いや開業の目的がしっかり伝わるように意識しましょう。
2:経営者の経歴
飲食業界での経験や経営に関するスキルを示すことで、計画の実現可能性を裏付ける効果が得られます。例えば、「有名レストランで5年間シェフを務めていた」「飲食店の店長として売上管理やスタッフ教育を担当した」といった具体的な職歴やスキルを時系列に記載しましょう。
特に、飲食業界での経験や資格があれば強みとしてアピールできます。また、「お客様に喜ばれる接客が得意」や「メニュー開発で売上を向上させた実績がある」など、自分の強みや実績を数字や具体例を交えて書くことで、信頼感が高まります。
3:取り扱い商品・サービス内容
料理のジャンルや特徴、価格帯などを詳しく書くことで、どのようなメニューやサービスを提供するお店なのかが明確になります。
例えば、「地元野菜を使った生パスタ専門店」「手作りデザートとスペシャルティコーヒーが楽しめるカフェ」など、主な取り扱い商品を具体的に記載します。次に、メニュー構成や価格設定についてですが、ランチは1,000円台、ディナーはコース料理で3,000円からなど、ターゲット層に合わせた価格を提示することが重要です。
取り扱い商品の強みを明確にし、他店にはない独自性と価値をアピールする必要があります。
4:市場調査とターゲット
市場調査とターゲットの設定は、お店の立地選定や顧客層を絞り込むために欠かせない項目です。まず、出店予定のエリアを調査し、周辺の環境や競合店の状況を把握します。
例えば、出店予定のエリアについて「駅近のオフィス街でランチ需要が高い」「住宅街でファミリー層が多い」といった情報をまとめましょう。その上で、ターゲット層を明確にします。「30代の健康志向の女性」「週末に家族で訪れるファミリー層」など、具体的に書くと戦略が立てやすくなります。
ターゲットに合わせて、メニュー内容や価格帯、営業時間などの方針も考えるとよいでしょう。
5:競合との差別化
競合との差別化は、お客様に「なぜ自分のお店を選ぶべきなのか」をアピールできるポイントです。周辺の競合店を調査し、どのような点で自店舗が優れているのかを具体的に示しましょう。
例えば、「競合店は多いが、地元野菜を使った生パスタの専門店は他にない」「競合店はコーヒーのみだが、当店では特製デザートも提供し、長時間の滞在も可能」といった内容です。
また、価格や品質、サービス、雰囲気など、自店ならではの強みを明確に記載しましょう。差別化がはっきりすれば、競争が激しい市場でも存在感を示せます。6:営業計画
営業計画では、店舗運営の具体的な方針を記載します。営業時間や定休日、席数、1日の来客数の見込み、客単価など、運営の基本的な情報を整理しましょう。
例えば、「ランチは11時から15時まで、ディナーは17時から22時まで営業し、定休日は月曜日」など、具体的に書くことが大切です。さらに、集客方法についても触れていきます。SNSでの情報発信、チラシ配布、口コミの促進など、お客様を呼び込むための戦略を考えましょう。
また、リピーターを増やす施策も重要です。ポイントカードや限定メニューの提供など、具体的な計画を示すと説得力が増します。7:必要資金と資金調達計画
必要資金と資金調達計画は、開業準備において具体性が求められる重要な項目です。まず、必要資金を「初期費用」と「運転資金」に分けて整理します。初期費用には物件取得費、内装工事費、厨房設備費、家具・食器類の購入費が含まれ、運転資金には仕入れ費、人件費、家賃、光熱費など営業開始後にかかる経費が含まれます。
次に、資金調達方法として自己資金、銀行融資、補助金を組み合わせて計画を立てましょう。例えば、自己資金300万円、銀行融資500万円、補助金100万円と具体的に示すことで、信頼性が高まります。
また、融資の返済計画も明記し、月々の利益から○万円を返済するなど、現実的な計画を示すことが事業の信頼性を強化します。8:収支計画
収支計画は事業の採算性を示し、経営の指針となる重要な項目です。まず、売上予測を具体的に立てます。例えば以下のようなシミュレーションを行います。
✔1か月の営業日数は25日
✔1日50人の来店
✔客単価1,200円
✔1日の売上6万円
✔月売上150万円
次に、経費の内訳を計算し、食材費(売上の30%)、人件費(25%)、家賃(10%)を基準に光熱費や広告費を含めた総経費を算出します。その結果、月売上150万円、経費110万円、利益40万円と利益予測を立て、損益分岐点を明確にしましょう。
具体的な数字を示すことで、金融機関からの信頼を得るとともに、自分自身の経営の軌道修正にも役立ちます。
事業計画書を作成するために押さえるポイント
事業計画書を作成する際には、客観的な視点と根拠のある数字、独自の強みを明確にすることが大切です。ここでは、事業計画書を作成する際のポイントを解説します。
客観視する姿勢を持つ
事業計画書を作成する過程では、自分のアイデアや計画を具体的な形に落とし込む必要があります。その結果、自分では見えていなかった課題や不足している部分に気づくことが多々あるはずです。
例えば、売上目標や必要経費を数値化することで「本当に利益は出るのか」「無理のない運営計画か」を冷静に判断できます。計画書は単なる希望や理想を書くだけではなく、数字やデータを基に論理的に考え、自らの事業を客観視するためのツールとして捉えることが重要です。
資金計画は明確かつ根拠を持たせる
必要な資金を明確にし、調達方法を示すことが事業計画書の大きな役割です。開業にかかる費用を具体的に区分し、それぞれの費用項目を明確に記載しましょう。例えば、内外装費300万円、厨房設備費200万円、運転資金100万円のように、詳細な見積もりを出すことが大切です。
できれば予算には余裕をもたせ、想定外の出費にも対応できるようにしましょう。また、当面の生活費を含ませておくと、生活費の心配をせずに事業に集中できます。
自己資金や銀行融資、補助金などの調達方法についても、具体的な金額とスケジュールを記載することで現実性が高まります。未来の収支計画を正確に予測する
事業計画書の収支計画は、開業後の経営の道筋を示す部分です。ここでは、単なる売上予測ではなく、収益構造を具体的に記載することが重要です。
例えば、「1日50人来店、客単価1,200円で1日6万円の売上。月150万円の売上に対して、経費は食材費30%、人件費25%、家賃10%を設定し、月利益40万円を見込む」といった詳細な計画が求められます。
さらに、黒字化までの期間や損益分岐点も明記し、具体的な根拠を示しましょう。現実的な数値とともにシミュレーションを行うことで、経営の信頼性が高まります。
独自の強みや差別化ポイントを明確にする
競合店が多いなかで、自店舗が選ばれる理由を明確に示すことが成功のポイントです。例えば、「地元のレア食材を使った料理を提供」や、「カジュアルかつ健康志向に特化した料理」といった具体的な特徴やコンセプトを打ち出しましょう。
また、他店との差別化を数字やデータで裏付けると説得力が増します。「エリア内に同業態が少ない」「SNSを活用しリピーター率を高める戦略がある」といった独自性を示すことが重要です。独自の強みを明確にすることで、ターゲット層に響く戦略を構築しやすくなります。
いつから事業計画書を作成するべきか
事業計画書は開業準備の初期段階から作成を始めるべきです。具体的には、飲食店のコンセプトやビジョンが固まり始めた時点で作成を進めましょう。
早い段階で取り組むことで、開業に必要な資金の試算、立地の選定、ターゲット層の設定ができ、現実的な課題や不足点を洗い出せます。また、資金調達のために融資や補助金を検討する場合、計画書の提出が必須になります。
後回しにせず、準備の進捗に合わせて適宜改善していくことが重要です。
飲食店の開業サポートはcanaeruへ
『canaeru』では、事業計画書の作成を専門の開業プランナーに無料で相談することができます。
canaeruは、国から経営革新等支援機関(認定支援機関)と認定されている株式会社USENが運営する開業支援サービスです。開業経験者や金融機関出身者など、多彩な開業プランナーが飲食店経営・開業をサポートします。
事業計画書の作成だけでなく、資金調達や物件探しなど、開業に関するあらゆるサポートを無料で提供いたします。ぜひ、お気軽にご相談ください。
無料開業相談まとめ
事業計画書は飲食店開業において、ビジョンの明確化から資金調達、経営の安定化まで多くの役割を果たします。
作成には時間と手間がかかりますが、その過程で自分のアイデアを整理し、課題や不足点を発見できるため、開業後の経営にも大きな助けとなります。特に、根拠のある数字や具体的な戦略を盛り込むことで、信頼性が高まり、融資や支援が受けやすくなるはずです。
本記事で紹介した8つの項目を参考にしながら、独自の強みや差別化ポイントを具体的に示し、事業計画書をブラッシュアップしていきましょう。しっかりと計画を立てることが、飲食店成功の第一歩となります。
この記事の執筆
ライター・飲食店経営
大杉元則
調理師学校卒業後、大手老舗ホテルの西洋料理部門に勤務。フレンチレストランやベーカリー、給食会社を経て2010年、無農薬野菜にこだわったイタリアンを開業。現在は店舗のオーナーシェフを務めながら飲食関連を中心としたライターとして活動中。
ポートフォリオ- NEW最新記事
-
-
2024/12/25
-
2024/12/23
-
2024/12/23
-
- 人気記事
-
-
2022/01/28
-
2024/07/23
-
2024/12/23
-
- canaeru編集部おすすめセミナー
- お役立ちコンテンツ
-
-
開業・経営に関する記事
飲食店を開業するには?必要な準備の4ステップをわかりやすく解…
-
先輩開業者の声
シェアキッチン型飲食店『shitagoya』がオープン!新た…
-
セミナー情報
【第11回】月刊食堂・通山編集長の外食経営塾|メニュー設計②…
-
セミナー動画
開業までの課題を解決する無料セミナーを動画で配信中!
-
店舗物件検索(首都圏)
ただいまの登録件数8,429件
-
店舗物件検索(大阪)
ただいまの登録件数654件
-
店舗物件検索(北海道)
ただいまの登録件数114件
-
店舗物件検索(東海)
ただいまの登録件数547件
-