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【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第12回 お店でやってほしい仕事の整理①間違った整理の仕方

【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第12回 お店でやってほしい仕事の整理①間違った整理の仕方

社会保険労務士で(株)リーガル・リテラシー代表取締役社長の黒部得善氏がお届けする、飲食店経営にフォーカスした労務コラム連載。

スタッフを雇用する店舗経営に欠かせない業務のひとつである労務管理。
特にコロナ禍以降の外食業界は深刻な人材不足に悩まされ、「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」「そもそも応募が来ない」といった悩みのほかに、アルバイトがSNSを使ったトラブルを起こす事例もたびたび耳にするようになり、安定経営とリスク回避という二つの側面で労務管理の重要性が高まっています。

第12回は、『お店でやってほしい仕事の整理』シリーズ第1弾として、「間違った整理の仕方」についてお届けします。

前回の振り返り

前回までは人手不足への取り組み、具体的には入社して3か月以内に人を辞めさせないためにやるべきことについて話をしてきましたが、そもそも人がいなければお店を開けることすらできません。そこで今回は、「人を活かす、成長させる環境をどのように作っていくか」について話をしていきます。

労務とは指揮命令があってはじめて人が動く

労務とは「会社が指揮命令する権利を買って対価として給与を支払う」ということだと第1回でお話しました。(1回リンク)とはいえ、雇用契約書を交わした直後から他スタッフと同じように仕事をこなしてもらえるケースは少なく、店長さんからの「まずはこの仕事を覚えて」などの指示が必要です。特に飲食店の仕事は指揮命令の頻度が一番多い職種といっても過言ではないほど、指示が飛び交います。

しかし、その指揮命令を行う店長や先輩の指示内容がブレていたらどうでしょうか。教えてもらう仕事の内容が人それぞれで異なる、というようなことでもあれば、言われた通りにやったのに新人スタッフが理不尽に怒られるケースも出てくるでしょう。場合によっては、退職に繋がってしまう可能性もあります。

第1回でも話しましたが、労務は

お店でやってほしい仕事をしてもらう(指揮命令)
 ↓
できなければできるように教えてできるようになってもらう(教育)
 ↓
できるようになったらそれに見合った給与を支払う(評価)

というサイクルで回っています。

それでは、お店でやってほしい仕事とはどういう考えのものでしょうか。評価の視点で考えていきましょう。

お店でやってほしい仕事

「うちのお店はチェーン店ではないからそんなマニュアル的なことは必要ない」、「言われた通りにやればいいんだよ」

という声も聞こえてきそうですが、場当たり的な指示をし、場当たり的な教えをした結果、できるようになったかどうかすらわからない…という状況が生まれていませんか?すべての仕事を言葉に直すのは、指揮命令の頻度の多い飲食店においては完全な仕組みをつくらない限り難しい作業です。ましてや、人間味をウリにしているお店ではなおさら難しいでしょう。とはいえ、うちのお店らしい仕事の仕方をしてほしい、と思っている人が多いのではないでしょうか。

以下でお伝えすることは、マニュアル的な整理をするわけではなく、人の成長と評価につながる“してほしい仕事”という見せ方にすることで、マンネリやストレスを生まずに、そのお店らしい仕事をしてもらうための整理です。

やってほしい仕事がうまく整理できない理由を知ろう

仕事を整理するために仕事を大量に書き出して何ページにもわたる書類を作成しても誰も見てくれない。また、その時々の思いで作った書類は整合性がうまくとれていない、というシーンを目にしてきました。そのため、私は「A3一枚で整理する」ということをすすめています(この具体的な方法は後日お伝えします)。というのも、2ページ目以降は誰も見てくれないから。だから端的な整理が必要なのです。

それでは、整理する具体的な方法をお伝えします。次のチェックリストにチェックを入れてみてください。

□ A)『作業』 と 『マネジメント』 がグチャグチャになっている 
□ B)『人間力(マインド)』 と 『スキル』 がグチャグチャになっている
□ 会社の 『成長』 と 『評価』 がバラバラになっている
□  『評価』 と 『教育』 を別物と考えている
□  『全ての社員が出世したい』 と決めつけている
□  『給与の決め方』 を決めていない
□  人の 『円滑な異動』 ができない

いかがでしたか?一つもチェックが入らないお店はすでに整理ができています。書面に起こしていなくても頭の中では整理ができている状況なので問題はありません。

また、チェックリスト内のAとBについて、簡単に解説します。

A)を具体例で示すと「料理を上手に作ってほしいけど原価率もきちんとコントロールしてほしい」など、料理という作業と原価率をコントロールするという「マネジメント」を同じものとして考えてしまっている状態です。

B)を具体例で示すと「料理は上手だけど人としてうちのお店には合わない。けど辞められたら困る」など、料理のスキルは十分あるけど、お店の一員としては人間力が低くてチームの輪を乱す元凶でありなんとかしたい、といった感じでしょうか。

「作業」も「マネジメント」も「人間力(マインド)」も全く性質の異なるものであって、これらをグチャグチャにしてしまうと、指揮命令の仕方がわからず、結果、スタッフの仕事ぶりに不満を持ってしまう原因となってしまいます。

次回以降、これらの整理の仕方を解説していきます。

今回のキーワード:してほしい仕事はわかりやすく整理しよう

この記事の執筆

㈱リーガル・リテラシー 代表取締役社長_黒部 得善

㈱リーガル・リテラシー 代表取締役社長

黒部 得善

1974年名古屋市生まれ。1997年明治学院大学法学部法律学科卒業。同年社会保険労務士合格。
大野実(現:全国社会保険労務士会連合会会長)事務所で修業後、㈱日立国際ビジネスにてSAP・R3のHRモジュールのコンサルを経て、2002年9月㈱リーガル・リテラシー創業。
飲食店の「長時間労働だから人が辞めるのか、人が辞めるから長時間労働なのか」を解決すべく、労務を“見える化”するためのフレームワーク手法”労務マトリクス“開発や、労務AI技術の開発をおこない、労務環境改善に奮闘。

<主な著書・論文>
「お店のバイトはなぜ1週間で辞めるのか」(日経BP社)
「就業規則がお店を滅ぼす」(日経BP社)
「勤怠データのデータマイニングを通じた労働集約性の高い飲食業の労働環境の改善」(日本マネジメント学会誌経営教育研究vol.25no.1)

<公式サイト>
(株)リーガル・リテラシー

<労務AI 公式サイト>
労務AI

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