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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
「モノ」から「人」への転換
昨年暮れ、一昨年に入会したワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)の会員さんから、この約1年半の実践と結果のとりまとめをご報告いただいた。業種は法人向けの卸売業だ。
この業界では2020年、社会がコロナ禍に覆われた際、買い手が殺到し特需があった。報告書には売上推移のグラフもあったが、2020年3月と4月は異常値となっていた。しかしそのとき、報告をくださった専務(跡継ぎで次期社長)はこう思っていた。「これは続かない。次は何を仕入れればいいのか?」。
この頃を彼は、完全に視点が「モノ」にいっていたと振り返る。「何を売れば売れるか」だけを見ていたということだ。その後、2021年に入ると市場は在庫過剰となり、同社では大口顧客の方針転換もあり、売上減。危機感もつのった。そんな折、彼は拙著『「顧客消滅」時代のマーケティング』に出合った。そこで、「ワクワク系と真逆の事をやっていたことが分かり」、この道を歩み始めたのだった。
同社が始めたのは、ワクワク系の実践の中でも「顧客との絆作り」。「モノ」から「人」への転換だ。その手段の一つには顧客へレターを送ることなどがあるが、それらを行っていると、「問屋の弊社にも手紙がきたり、リピートが増えたりとありがたい反応が増えてきて、起きている変化を見ると売上のベースが非常に安定し伸びてきました。これは将来へ向かって気が楽になりました」。
そうして1年半後となる今日、主な売上を見てみると、注文数は前年比で4割から5割増加。大口顧客に絞ってみると、前年比165%。売上が積み上がってきた実感はあったが、こうして数字で振り返るとより明白だった。視点を変えることで得た最高のフィードバック
そんな今、特に嬉しいことは2つある、と彼は言う。1つは売上が安定し、読めるようになって来たこと。「正解がないと言われている世の中でこれは非常にありがたい」と彼。そしてもう1つは、顧客から手紙やメールがたくさん来ること。これは働く者にとって最高のフィードバック。顧客からそれらが送られて来るたびに、「きたーー!」と社内が沸くとのことだ。
同社の1年半。現在の結果をもたらしたものはこの期間の数々の実践だが、その根本にあるものは「モノ」から「人」への視点の転換だ。今自分たちが行っている商売、その現場での出来事をどう見て、何をするか、何をしないか。その視点の先にこそ、結果が連なっているのである。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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