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飲酒運転は、交通違反ではなくれっきとした犯罪です。長年に渡って飲酒運転の厳罰化や行政処分の強化、飲酒運転根絶に向けた取り組みが続いているものの、残念ながら飲酒運転による悲惨な交通事故は後を絶たない状況にあります。最近では、電動キックボードによる飲酒運転とそれに伴う事故も多発し、大きな問題となっています。
この記事では、飲酒運転による交通事故の現状や飲酒運転が危険な理由、お酒を提供する飲食店にも関わる罰則などについて解説。飲食店に求められる飲酒運転防止対策も詳しくご紹介します。
目次
電動キックボードの飲酒運転が急増中
近年、公道の走行が可能な電動キックボードの利用増加に伴って、電動キックボードによる飲酒運転が急増し、問題となっています。現行法では電動キックボードにも運転免許が必要であり、車やバイク、自転車と同様に、電動キックボードの飲酒運転は重大な犯罪です。
そうした状況を受けて、電動キックボードのシェアリングサービス「LUUP」を運営する株式会社Luupでは、飲酒運転防止のため、週末24時〜5時の夜間利用制限を開始。新宿・渋谷・六本木にある10か所のポート(電動キックボードの乗り場)で電動キックボードを遠隔操作し、利用できなくしています。
その一方、2022年4月には、最高速度が時速20キロ以下の電動キックボードであれば、16歳から運転免許がなくても乗れるとする改正道路交通法が成立。 今後2年以内に施行される予定となっています。
この改正道路交通法が施行されるタイミングでは、個人所有の電動キックボード利用が増えることも予想されており、LUUPのような夜間利用制限を行うのが難しい可能性も。法の施行を見据え、電動キックボードによる飲酒運転が重大な犯罪であることの周知拡大や、飲酒運転を防ぐための対策が求められています。
飲酒運転による交通事故の現状
2021年の飲酒運転による交通事故件数は2,198件(前年比-324件、-12.8%)。飲酒運転による死亡事故件数は152件(前年比-7件、-4.4%)で、どちらも前年と比べて減少しています。
2002年以降、飲酒運転の厳罰化や飲酒運転根絶に対する社会的気運の高まりで年々減少傾向にあるものの、依然として飲酒運転による悲惨な交通事故は後を絶たないのが現状です。
飲酒有無別の死亡事故率(※)では、飲酒運転による死亡事故率は、飲酒なしの約9.2倍となっており、飲酒運転の危険性の高さがうかがえます。
※死亡事故率=死亡事故件数÷交通事故件数×100%
飲酒運転はなぜ危険なの?
飲酒運転とは飲酒後にアルコールの影響のある状態で運転をすることを意味し、事故を起こしたか否かにかかわらず、道路交通法で禁じられています。
アルコールは、たとえ少量であっても脳の機能を麻痺させ、安全運転に必要な情報処理能力、注意力、判断力を鈍らせます。その結果として、スピードを出し過ぎる、車間距離の判断を誤る、危険を察知してもブレーキをすぐに踏めないといった正しい運転操作や判断ができない状況になり、事故につながるのです。
一般的に、ビール中瓶500mlを飲むと、アルコールが体内で分解されるまでに3〜4時間かかるといわれています。チューハイ350ml、日本酒1合(180ml)の場合も、それぞれ同様の時間を要します。アルコールを抜くためにサウナに入る方もいるようですが、アルコールを分解するのは9割が肝臓の役割であり、呼吸や汗、尿などで代謝できるのは1割にすぎません。
また、お酒に強い人であっても、少量・低濃度のアルコールで運転操作や判断力に影響を及ぼすことが調査研究により明らかになっています。お酒に弱い・強いに関わらず、飲酒運転は絶対にしてはいけません。飲酒運転に対する行政処分と罰則
飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2種類があり、行政処分や罰則もそれぞれ異なります。
酒酔い運転
飲酒量や呼気中アルコール濃度の検知値にかかわらず、アルコールの影響により車両等の運転に支障をきたしている状況を指します。まっすぐ歩けない、警官とのやり取りがうまくできない状態であれば、酒酔い運転として検挙されます。
酒気帯び運転
呼気中アルコール濃度が0.15mg/L以上ある状態で運転することを指します。
行政処分
酒酔い運転の場合
無条件で、基礎点数35点が付き免許取消
欠格期間は3年(前歴及びその他の累積点数がない場合)
酒気帯び運転の場合
呼気中アルコール濃度0.15mg/L以上 0.25mg/L未満なら、基礎点数13点が付き免許停止
免許停止期間は90日(前歴及びその他の累積点数がない場合)
呼気中アルコール濃度0.25mg/L以上なら、基礎点数25点が付き免許取消
欠格期間は2年(前歴及びその他の累積点数がない場合)
※欠格期間の上限は10年。酒酔い運転の場合は3年ですが、さらに死亡事故を起こした場合は7年、ひき逃げをした場合は10年と定められています。
罰則
運転者
酒酔い運転の場合、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
酒気帯び運転の場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
車両の提供者
(運転者が)酒酔い運転をした場合、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(運転者が)酒気帯び運転をした場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
酒類の提供者 または 車両の同乗者
(運転者が)酒酔い運転をした場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
(運転者が)酒気帯び運転をした場合、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
以上のように、飲酒運転を行った本人はもちろん、車両や酒類の提供者、同乗者にも厳しい罰則が科せられます。
そうしたことから、飲食店においても飲酒運転の防止対策は必須です。お客様が飲酒運転をする可能性があるとわかっていながらお酒を提供した場合、飲食店側も罪に問われることになります。
上記の罰則のみならず、もしメディアで報道されてしまうと、飲食店自体のイメージも悪化します。客足が遠のき、売上が激減するなど、大きな打撃を受ける可能性があるのです。飲食店に求められる飲酒運転防止対策は?
来店時に運転の有無や帰宅方法を確認する
飲酒運転の防止策として、まずは来店時にお客様が車やバイクなどの車両で来店されているかどうかを確認します。
お客様がおひとりの場合、車両の運転者は当然本人になりますので、お酒を提供してはいけません。それでもお酒を注文される際には、運転代行を利用するのか、家族や友人が迎えに来てくれるのかなど、帰宅方法をうかがってください。運転代行業者を呼ぶ際には、お客様任せにせず、飲食店側で対応するのが好ましいです。
グループ来店の場合、ハンドルキーパー(お酒を飲まない人)が誰なのかを確認し、その方にはお酒を提供しないように徹底します。ハンドルキーパーの方にリボンやバッジを着用していただくことで、お酒を誤って提供する事態を避けられます。
ハンドルキーパーへのサービス提供
飲酒運転防止のため、ハンドルキーパーになってくれる方に対してサービス提供を行うのも有効です。具体的にはソフトドリンクや料理、デザートを一品無料としたり、ソフトドリンクを飲み放題としたりするのも大変喜ばれます。
みんなが楽しくお酒を楽しんでいる中、ハンドルキーパーである自分だけがソフトドリンクで我慢…という状況の場合、辛抱しきれずにお酒を飲んでしまう可能性も。一品無料やソフトドリンク飲み放題のサービスを行うことでより強い抑止になりますし、ハンドルキーパーに優しい店というイメージアップにもつながります。
注意喚起のポスターを掲示する
冒頭で言及した電動キックボードに関しては、飲酒運転が禁止されていること自体を知らない人がまだまだ多い状況です。たとえ来店時に運転の有無を確認していたとしても、電動キックボードに関しては飲酒運転を防ぎきれない可能性も。
お酒を飲んだら、 自動車やバイクはもちろん、 自転車も電動キックボードも運転してはいけません!というような、注意喚起のポスターを店内に掲示することも重要です。
お客様や従業員を守るためにも、飲酒運転防止対策の徹底を
飲酒運転は本人の責任と思われがちですが、自店で飲食されたお客様が飲酒運転を行い、事故が発生した場合、お酒を提供した飲食店側にも責任が問われることになります。事態の大きさによっては飲食店の経営を脅かす場合も。
店はもちろん、大事なお客様や従業員を守るためにも、今一度気を引き締めて、飲酒運転の防止対策に取り組んでいきましょう。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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