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【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第15回 お店でやってほしい仕事の整理④お店で必要なスキルとは

【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第15回 お店でやってほしい仕事の整理④お店で必要なスキルとは

社会保険労務士で(株)リーガル・リテラシー代表取締役社長の黒部得善氏がお届けする、飲食店経営にフォーカスした労務コラム連載。

スタッフを雇用する店舗経営に欠かせない業務のひとつである労務管理。特にコロナ禍以降の外食業界は深刻な人材不足に悩まされ、「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」「そもそも応募が来ない」といった悩みのほかに、アルバイトがSNSを使ったトラブルを起こす事例もたびたび耳にするようになり、安定経営とリスク回避という二つの側面で労務管理の重要性が高まっています。

第15回は、『お店でやってほしい仕事の整理』シリーズ第4弾として、「お店で必要なスキルとは」についてお届けします。

前回の振り返り

前回、お店で大事な能力はマインドであるという話をしました。お店にいることも仕事であるからこそ、一緒に働きたいと思い合える人間性がスキルよりも重要であると。そうはいっても、どれだけいい人でもお店の仕事が全くできなければ、遅かれ早かれ、一緒に働きたいと思える人にはならないでしょう。そこで、今回は飲食店で働く人に求められる“スキル“についてお話をします。

スキルは大きく分けて2種類ある

第13回の「飲食店で求められる能力」で、「能力(スキル)は大きく分けて2つあります」とお伝えしました。その2つとは

作業スキル……接客や調理などの能力
マネジメントスキル……売上計画、数値管理、人材育成などの計画立案遂行などの売上を作りお金を残すための能力

を指します。それぞれ端的に説明すると、
作業スキル:その日の営業を乗り切る力
マネジメントスキル:お店を儲けさせる力

となります。どちらも飲食店において大切であり、まったく違う能力です。お店でやってほしい仕事を整理するにあたって、この2つをぐちゃぐちゃに考えてしまうことで整理を困難にさせてしまっています。

名プレイヤー名監督にあらず

スポーツの世界でよく言われる「名プレイヤー名監督にあらず」という言葉。これは飲食店にも大きくあてはまります。それは、「プレイヤー」として求められる能力と「監督」として求められる能力は全く違うからです。前段でも書きましたが、作業スキルはその日の営業を乗り切る力であって、その力があるからメニュー開発能力や人を育てる能力、マネジメント能力が高いとは言い切れません。作業スキルとマネジメントスキルは使う目的も身に着け方も全く違うものなのです。

スキルの特性にあった身に着け方を知る

みなさんは作業スキルとマネジメントスキル、(どちらも大切ですが)どちらが大切と考えているでしょうか。正解があるわけではありませんが、私は作業スキルだと考えています。作業スキルがあれば最低限お金を生み出すことはできます。極論ですが、作業スキルが0点、マネジメントスキルは満点の人が今日のシフトの5人中5人だったらお店の営業はどうなるか想像がつくでしょうか。

マネジメントスキルのほうが大切、と考えている方は多店舗展開に悩んでいる方に多い傾向があります。「いい店長がいないから出店できない」と。それはスキルの身に着ける方法の違いを理解すれば解決する問題です。

作業スキル:時間が解決する能力
マネジメントスキル:知識の習得→実践→成果の順で段階的に身に着ける能力

作業スキルの「時間が解決する」とはつまり、包丁を握ったこともないような飲食未経験者が、1年後には一通りのレシピを再現し提供できるようになっている、というようなケース。仕事を通じて繰り返し教えられながら実践をしていたら知らぬ間に身についていく能力です。

一方のマネジメントスキルは、きちんとお店が考えるマネジメントスキルを教え、理解したかどうかテストし、店長のサポートを通じて実践しながら身に着ける。そして、身につけたらその能力を活かしながら成果をあげていく、という流れになります。飲食業界は「前職も飲食でした」という方も多い業界です。呪文のように「FL60」と言っていても、今のお店では違うかもしれません。まずは自店の考えるマネジメントスキルの考え方を理解させることが大切です。

スキルの特性にあった身に着け方を知る

業態によって全く違うスキルのバランス

前段で示したスキルのバランスは一般的な居酒屋をイメージしています。しかし業態によって求めるスキルの内訳は全く異なります。

当然ながら一般的な居酒屋、高級料亭、ファストフードでは求められる能力が異なります。主に作業スキルとマネジメントスキルのバランスが異なるのです。ここで一つ問題が生じます。それは、異なる業態の店舗間で人の異動が困難である、ということです。知らず知らずのうちに多業態展開をしていったとき、それぞれのお店で求められる作業スキルもマネジメントスキルも違うので異動させづらくなります。もしくは、異動をさせた際に発揮するスキルが今までの給与と見合ったものとならなくなるので注意が必要です。

今回のキーワード:お店が求める作業スキルとマネジメントスキルの違いを理解する

業態によって全く違うスキルのバランス

この記事の執筆

㈱リーガル・リテラシー 代表取締役社長_黒部 得善

㈱リーガル・リテラシー 代表取締役社長

黒部 得善

1974年名古屋市生まれ。1997年明治学院大学法学部法律学科卒業。同年社会保険労務士合格。
大野実(現:全国社会保険労務士会連合会会長)事務所で修業後、㈱日立国際ビジネスにてSAP・R3のHRモジュールのコンサルを経て、2002年9月㈱リーガル・リテラシー創業。
飲食店の「長時間労働だから人が辞めるのか、人が辞めるから長時間労働なのか」を解決すべく、労務を“見える化”するためのフレームワーク手法”労務マトリクス“開発や、労務AI技術の開発をおこない、労務環境改善に奮闘。

<主な著書・論文>
「お店のバイトはなぜ1週間で辞めるのか」(日経BP社)
「就業規則がお店を滅ぼす」(日経BP社)
「勤怠データのデータマイニングを通じた労働集約性の高い飲食業の労働環境の改善」(日本マネジメント学会誌経営教育研究vol.25no.1)

<公式サイト>
(株)リーガル・リテラシー

<労務AI 公式サイト>
労務AI

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