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ミシュランガイドの「ビブグルマン」に連続掲載、ラーメン専門誌の新人賞を総なめ等。激戦区・高田馬場に挑んだラーメンの名店「やまぐち」
二番煎じのラーメンは、かっこ悪いと思う。「自分しか作れないラーメン」で、かっこよくラーメンを作っていきたい。
- 山口裕史(やまぐち ひろし)/らぁ麺 やまぐち
東京でも屈指のラーメン激戦区である高田馬場。特に高田馬場駅から早稲田大学にかけてのエリアには有名店が群雄割拠している。この地に2013年1月にオープンした「らぁ麺 やまぐち」は、学生向けのジャンクなラーメンとは真逆を張る、澄んだスープに鶏の香りを満たした上品な一杯。同年にはラーメン専門誌の新人賞を総なめにし、2015年以降はミシュランガイドの「ビブグルマン」に連続掲載されるなど、名店としての評価も定着している。店主はもともと東北の地方都市でサラリーマンをしていたラーメンマニア。なぜ東京で店を持ち、数年の間にここまで名を馳せたのか。その理由と成功の秘訣を聞いた。
人気ラーメン店「やまぐち」が誕生のきっかけはコンテスト?
――山口さんがラーメン屋さんを目指したきっかけを教えてください。
もともと私は福島県の会津若松出身で、化学薬品の製造の仕事をしていたんですが、当時から根っからの趣味人間だったんです。オーディオ、写真、日本蕎麦など、いろいろやっていましたが、たまたまラーメン作りにハマっていた時に、自分のホームページに自作ラーメンのレシピを公開していて。それがたまたま立川の「ラーメンスクエア」という集合施設の方の目に留まって、そこが主催する「ラーメントライアウト」という新人発掘コンテストに出場することになったんです。
そのコンテストの優勝特典が、「1年間ラーメンスクエアに出店する権利」でしたから、優勝したらサラリーマンを辞めて、ラーメン店を開業しないといけないわけで、自分にとっては”冒険”だったんですが、出場することにして、第1回目の時は準決勝で敗退しました。それでも、翌年また挑戦して、この時には未経験者部門で優勝しました。――コンテストで優勝して、「初めての上京」と「初めての開業」がダブルで訪れたわけですね。不安はありませんでしたか?
不安しかなかったですよ(笑)。それまでまったく飲食店の経験がなかったし、資金もなかったですから、最初はラーメンスクエアの社員にしていただいてスタートしました。開業に必要な資金は会社が出してくれたわけですが、それはそれで大変でしたね。「原価が高すぎる」って、よく呼び出されていました(笑)。
未経験なのに最初から大きな店で、営業時間も長くて、無休ですからね。スタッフも未経験のアルバイト。これで回るはずがないじゃないですか。この1年でずいぶん揉まれました。「始めればなんとかなる」みたいな甘い考えは、見事に打ち砕かれましたね。――開業当初、いちばん大変だった点は何でしたか?
やっぱり、「人」です。自分もやったことがないのに、人に伝えてやってもらうのは大変なことでした。自分とアルバイトでは、当然モチベーションが全然違うわけで、それをどうやって上げるか、ということにいちばん苦労しましたね。
それでも仕事が終わった後にスタッフと飲みにいって、お酒を飲んで本音で話すと、やっぱり絆も深まります。「コミュニケーション」を大切することで、だんだん僕寄りに立ってくれるアルバイトが増えてきて、店もうまく回るようになりました。開業場所にラーメン激戦区・高田馬場を選択した理由は?
――初開業の地として、高田馬場という地を選んだのはなぜですか?
最初は慣れ親しんだ立川周辺や多摩地区を探していたんですが、いろいろと物件を見ているうちに、「東京23区内でもあまり家賃が変わらないのかも」ということに気がついたんです。それから23区内も探して、渋谷、九段下、神保町辺りにいい物件が見つかったので、申し込んだのですが、審査に通らなかったんです。いよいよ候補がなくなった時に、(その時まで次点候補に考えていた)今の物件に申し込んでみたら、審査に通ったんですね。激戦区だとは知っていましたが、「ここでやろう」と決めました。――激戦区ならではのメリット、激戦区で成功するための秘訣を教えてください!
激戦区でやるということは、相乗効果も大きいと思うんです。自分もそうだったように、フリークさんはその地区のお店をいくつも回っていますから、美味しいものを提供できればその分話題にも上りやすいし、ラーメン好きのリピーターさんもつきやすいと思います。
この物件が決まってから、まず、この辺りのお店を全部食べました。その時の印象が「学生さん向けのこってりしたラーメンが多い」だったんです。それなら逆に、「ここにないものを出そう」と思って、あっさりしたラーメンで行くことに決めました。ただ、本当にあっさりしたラーメンだと印象に残らないので、「あっさりしていながらも、食べたら忘れないラーメン」を目指しました。――その土地のラーメンの定番を作らないというところに、不安はありませんでしたか?
「誰にでも好かれるラーメン」を作ろうと思うと、どうしてもなにかを抑えがちになると思うんですが、どんなに美味しいものを作っても、「嫌い」という人はゼロにはならないんです。だったら、「好き」って人を増やしたほうが効率的ですよね。
自分のカラーを強く出せば、「嫌い」だという人も増えますが、それ以上に「大好き」という人が増えると思うんです。それが、お店の「ファン」を作るということだと思います。
何かが流行ると、それを真似したラーメンで店を開く人がいますが、私は、二番煎じのラーメンって「かっこ悪い」と思っています。これから始めるという方には、「自分しか作れないラーメン」で、かっこよくラーメンを作って、お客さんを喜ばせてほしいですね。もちろん、自分もそういう店でありたいと思っています。メインの鶏そば!そのラーメン誕生秘話とは?
――オープン時、味作りはどうやってされましたか?
実は、最初は「鶏そば」と「追い鰹中華そば」のふたつのメニューを作りまして、それぞれ、ひと口食べれば「鶏だ」「魚だ」ってはっきり分かるような、個性的な味に仕上げていたんですが、その後、メディアの取材で鶏そばを取り上げていただくことが多くて、販売数が10対1ぐらいになっちゃったので、今は、鰹はお休みして、鶏そばに集中しています。
鶏の香りは繊細で隠れやすいので、鶏以外の食材をほとんど排除しています。魚、豚骨はもちろん、野菜も一切入れていません。ただ、鶏だけだとどうしても弱くなってしまうので、仕上がったスープにさらに手羽先を入れて、鶏の風味を加えています。――山口さんは支店もやられていますが、2号店の「辣式」では辛いラーメンを主力商品にしていますね。その理由、出店の経緯を教えてください。
私自身、辛いものが大好きなんですよ。麻婆豆腐を使った麺料理はずっと前から試作していて、これを本店の限定ラーメンとして出してみたら、すごく好評だったんですね。その時に、「これはいける」と思って、辛いラーメンの専門店を出すことに決めました。
ただ、ここの本店は鶏の香りがお店の空気を作っているので、ほかの強い香りを入れたくなくて、「やるならもう1店舗」ということは最初から考えていました。――今後のビジョンを教えてください
当面はいまある店を「より高めていく」ということに注力したいです。まずは、厨房をカウンターの前まで広げて、今よりもっと、「かっこよくラーメンを作りたい」ですね。実は厨房がカウンターの奥にあるので、お客様からすると作ってる姿も見えづらいし、何より声も聞こえづらいんですよ。でも、カウンターの目の前に厨房があれば声もよく聞こえるようになるし、帰る時にこちらから声をかけたりもできますから。山口裕史(やまぐち ひろし)
1969年生まれ、福島県会津若松市出身。30代半ばまで会津若松で化学薬品メーカーに勤務。当時からラーメンを食べ歩き、自宅でもラーメンを自作。05年に東京・立川市の商業施設「アレアレア」主催の「ラーメントライアウト」第1回大会に出場し準決勝戦で敗退。翌年の第2回大会では未経験者部門優勝に輝く。07年「アレアレア」内の「ラーメンスクエア」に「麺屋にゃみ」を開店。契約満了後は府中のラーメン店に店長として勤務。2013年1月に「らぁ麺 やまぐち」を開店。2015年には支店「らぁ麺やまぐち 辣式」を東陽町に開店。
らぁ麺 やまぐちhttp://www.ramen-yamaguchi.com/
東京都新宿区西早稲田3-13-4 1F早稲田通り沿い南側、高田馬場駅と早稲田大学本キャンパスの中間辺りにあるラーメン専門店。13年の開業当初は「鶏そば」と「追い鰹中華そば」の二本立てだったが、より多くのお客さんに高いクオリティの一杯を提供すべく、現在は「鶏そば」に絞っている。スープは野菜も豚系素材も一切加えていない純鶏仕立て。そこに独自の"追い手羽"で旨味と濃度をプラスしている。表面の油は鶏由来の鶏油(ちーゆ)。唯一の豚素材であるチャーシューも、豚肉と鶏肉の両方をトッピングするなど、鶏素材を徹底演出した一杯となっている。
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