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【小阪裕司コラム】第243回:「ここに頼もう」は何で決まるのか②

【小阪裕司コラム】第243回:「ここに頼もう」は何で決まるのか②

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

現代社会は「低信頼社会」

 前回、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある住宅塗装専門店主によるチラシの話をした。それは店主の手書き文字による熱のこもったもの。それが今、続々と新規の見込み客を連れてきているのだが、それには理由がある。
 私たちはまず、現代社会は「低信頼社会」だと考えている。それは互いを信頼しにくい社会、もっと言えば誰を信頼していいかわからない社会であるということだが、これは単に肌感覚ではない。国内外の様々な調査・研究が示していることだ。
 その上でチラシというものを考えてみると、チラシとは基本的にまだ出会っていない「見知らぬ人」に向けたもので、今回の例もまさにそうだ。ただ、お客さんの側から見れば売り手こそ「見知らぬ人」。そこに低信頼社会という枠をはめて考えてみると、簡単には信頼できず、何をもって信頼できるのかを探ることになる。今回店主が求めたように「無料で見積もりを出させてほしい」なら、まずは「なぜ、あなたを信頼できるのか」の問いに答えなければならないのだ。
 店主も言う。チラシを作る時はどうしても「問い合わせが欲しい」「利益をあげたい」という気持ちが先行してしまうが、それはお客さんには関係ないこと。お客さんはそんなことより「大事な我が家をどこにお願いしようか」と悩んでいると。そこで、その目線に合わせることを考えながら作ったのが今回のチラシだ。

「低信頼社会」で信頼を得ることの価値

 だからこそ、その内容がヒントになる。彼がチラシに書いたことは「自分のこと」だ。「塗装や見積もりのこと」ではない。しかも、「近くだから悪いことはできない」以下のくだりはまさに自分をさらけ出したものだ。こんなことをチラシに書いていいのだろうか、効果があるのだろうかと疑問に思う方もいるだろう。しかし、その「自分のこと」が偽りのないものなら、実は、こうした自己開示こそが人の心を動かす。「信頼できる人物なのではないか」と人は感じ、「問い合わせる」「見積もりを依頼する」などの行動が生まれるのである。
 現代は信用資本主義の時代である―とも言われており、私もその見方に賛成だ。AIの時代になり、世の中は一層低信頼になっており、「信頼できるかどうか」が極めて重要で、「ここに頼もう」の決め手になっていく。そしてその信頼を裏切らない限り、その関係は良好に長く続き、口コミ・紹介などを経てさらに多くの新規客を生んでいく。今やそういう時代なのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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