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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
売れない商品が売れるようになった理由
最近、企業や業界団体からの研修の依頼が増えているが、そこでしばしばテーマとなっているのが「商品力の強化」だ。商品力はあった方がいいし、私もその強化を図ることには賛成だ。しかし、ワクワク系的にはその前に見直してほしいこと、私のこれまでの経験から多く見過ごされていることがある。そこで、もうずいぶん前の連載コラムでご紹介した、ある食品スーパーでのお話を再度題材にしよう。美味しいと自負しているが売れていなかった商品が、ある「強化」で売れる商品に変わったというものだ。
この食品スーパーの鮮魚売り場に「まぐろのカマ照り焼き」という商品があった。このチェーンでは各店で扱っているが、関係者には美味しいのに思ったように売れない商品とされていた。その理由をある店のチーフに尋ねてみると、「手間がかかっておいしいんだけど、価格がね」という返答。単価は400円。他の商品と比較して高価で売れないとの見解だ。そこで販促担当者が、その「手間がかかっている」点はどの点なのかと聞いたところ、「焼き上がるのに、業務用のオーブンで25分かかるんだよ」と言う。しかし商品のパックには、価格など最低限の表記しかない。そこで彼は、「焼き上がりまで25分!?」というキャッチに、「焼き上がりまでなんと25分かかります。じっくり焼き上げたこそのおいしさです」と記したPOP(店頭販促物)を作り、掲示してみた。
すると、そのPOPを立ち止まって眺める人が現れ、商品は面白いように棚からなくなり始め、あっと言う間に売り切れてしまった。次には、商品がなくなってもPOPは掲示してあることから、「このカマはないの?」と尋ねる人が現れ、「じっくり焼き上げるので25分かかります」と応えると、「後で来るわ」というお客さんが続出。こうしてこの商品はこの店で「売れる商品」となったのだった。大切なのは「伝える力」
さてここで話を「商品力の強化」に戻そう。この商品は商品力を強化したから売れるようになったのだろうか? 売れなかったときは、価格に対して商品力が弱かったのだろうか? そうではない。お気づきの方も多いと思うが、売れなかった理由は、この商品が持つ価値が伝わっていなかったから。売れる商品になった理由は伝わったから。つまりここで強化されたものは「商品力」ではなく、そもそも強かった商品力を「伝える力」である。このことは今もなお、大変多くの商売現場で見過ごされている。そこを見直す前に「商品力の強化」に走ることがないよう、わが読者には伝えておきたい。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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